中央アフリカに生息する野生のチンパンジーとゴリラで、柔軟な行動が京都大学大学院理学研究科の山際寿一教授らによって新たに見つかった。いずれも類人猿や人類の進化を考えるのに示唆に富む発見として注目される。
まずガボンのムカラバ国立公園でチンパンジーは、蜂蜜の採集とマングースの狩りという違う目的のために、こん棒や細い木の枝などの道具を使っていることを見つけた。道具の使い方も異なっていた。大きな倒木の洞に隠れているマングースを追い出して捕獲するために、ハリナシバチの蜂蜜を採集する際に使うのと似た道具を用いていた。同じような道具を二つの異なる目的と方法で用いたのはこれまで報告されていない。現地のガボンの学生との共同研究で、6月12日付の霊長類学の国際科学誌PRIMATESオンライン版に発表した。
山際教授は「チンパンジーが二つの異なる目的で、同じような道具を作り、使い方を変えているという柔軟な思考能力を持つことがわかった。250万年前に最初の石器を作った人類の祖先も、同じ道具を別の目的で用いる思考能力を持っていたに違いない。人類の知性の進化に新しい証拠を付け加える発見だ」と指摘している。
一方、ガボンの同じ国立公園で、研究グループは、野生ゴリラがフットボール大のクワ科の果物を分配しているのを18例観察した。おとな同士の間にも、果物の一部をちぎって地面に置き、別のゴリラに拾わせるように、分配行動が見られた。オランウータンやチンパンジーでは食物の分配が、ゴリラでも親子間で食物を分け合うことは知られているが、ゴリラのおとな同士の食物や果物の分配は新発見という。京都大学の井上英治助教と大学院生の坪川桂子さんらとの共同研究で、6月25日付のPRIMATESオンライン版に発表した。
研究グループは「食物の分配は群れの社会関係の維持に役立っているだろう。チンパンジーのように口や手から直接、食物を取るのではなく、ゴリラはいったん食物を地面に置いて相手に取らせる。こういった違いは両種の社会の特徴が反映されている。人類の食物をめぐる社会進化を考えるのに意義がある」とみている。
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