社説:児童ポルノ規制 子どもを守る一歩に

毎日新聞 2014年06月26日 02時30分

 18歳未満の少年少女のわいせつな写真など「児童ポルノ」の単純所持を禁止する改正児童買春・ポルノ禁止法が、先の国会で成立した。

 児童の意思に反して作られる児童ポルノは、性的虐待の記録そのものだ。児童の人権を著しく侵害する。インターネット上に流出すれば、世界中にばらまかれて半永久的に消えないおそれがある。児童の苦しみは将来も続く。決して許されない。

 摘発件数、被害者数とも増加が続く中で、製造や販売の処罰だけでは限界があるのは確かだ。法改正を児童ポルノ根絶の一歩としたい。

 近年、世界的にも子どもの性的虐待や児童ポルノへの目は厳しい。主要7カ国(G7)で所持を罰則の対象としていないのは、これまで日本だけだった。また、国際的な会議などで、日本は児童ポルノの一大供給国と批判されてきた。ネットを中心に広がる児童ポルノをなくすためには、国際社会と連携して対策に当たる姿勢が欠かせないだろう。

 単純所持を処罰の対象とすることについて規制が進まなかったのは、どのようなケースで罰則を科すのか線引きが難しかったからだ。

 「メールに添付されて送られ、知らない間にパソコンに保存していたらどうか」「子どもの入浴姿を成長の記録として保存することもできないのか」といった疑問だ。

 改正法では「性欲を興奮させ、または刺激するもの」との従来の定義に「殊更に性的な部位が露出、または強調されているもの」と加え、性的な部位も「性器等もしくはその周辺部、臀部(でんぶ)または胸部」と明示した。また、罰則を科すのは「自己の性的好奇心を満たす目的での所持」と、一定の条件を付けた。

 それでも、児童ポルノに当たるか否か、解釈によって判断が割れる場合はあり得る。罰則の対象となれば、一義的に捜査当局の判断次第になる。「児童保護という本来の目的から大きく逸脱し、表現規制につながる危険性がある」と日本雑誌協会は抗議声明を出した。

 参院の付帯決議には「法の適用に当たっては、捜査権の乱用を防止する趣旨も含まれている」と盛り込まれた。法の運用状況を検証し続ける必要がある。

 一方、漫画やアニメ、コンピューターグラフィックス(CG)の描写も規制すべきか調査研究するという付則が当初案にはあったが、表現規制への懸念を受け、削除した。

 日本製アニメなどの性表現の過激さが海外で強く批判されているのは確かだ。たとえアニメでも、子どもを性表現の対象とした作品が大手を振ってまかり通っては、日本が世界から信用を失う。業界は本気で自主規制に取り組むべきだ。

最新写真特集