81年間続いたトンカツの老舗「三好弥」を今月末で閉店する神谷清信さん、澄子さん夫妻=安城市御幸本町で
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安城市御幸本町で八十一年間、トンカツの老舗として親しまれてきた食堂「三好弥(みよしや)」が今月末に店じまいする。手ごろな価格と庶民的な雰囲気で地元に愛されてきたが、従業員十人と店を営んできた神谷清信さん(75)、澄子さん(67)夫妻は、後継者がいないことから閉店を決めた。ランチや飲み会で利用した常連客から、惜しむ声が広がっている。
店はJR安城駅前から徒歩数分。名物は、店特製のソースで食べるトンカツと、濃厚なみそトンカツ。九百三十円からトンカツ定食があり、手ごろな価格でボリュームもある。ほかに、トンカツに刺し身や煮物を組み合わせた定食も人気だ。
JAあいち中央本店や安城市役所から近く、昼はランチ、夜は宴会と、足しげく通った人たちも多い。
「三好弥」という屋号のトンカツ店は現在、東京を中心に五十店舗ほどある。清信さんの伯父で高浜市出身の故長谷川好弥(よしや)さんが、一九一九(大正八)年に東京都文京区で洋食店を開業したのが始まりだ。清信さんは「三河出身の好弥さんの店だから『三好弥』の屋号になった」と説明する。
安城の三好弥は、好弥さんの義弟で清信さんの父神谷理一さんが三三(昭和八)年に開業。清信さんは東京の三好弥で修業を積んだ後、六五年に後を継いだ。二年後に澄子さんが嫁いできた。
清信さん、澄子さん夫妻には二人の娘がいるが、店を継ぐのは難しく、閉店を決断。昨年十二月に店の前に閉店を知らせる張り紙を出すと、常連客からは「なじみの店が消えるのは寂しい」との声が多数寄せられた。
夫妻は「体が動くうちにきれいに終わらせたい。常連客から『長年ありがとう』と声をかけてもらうのが、うれしい。のれんを下ろすまで心を込めてトンカツを揚げ、恩返ししたい」と話している。
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