神沢和敬
2014年6月26日10時43分
最近、日本の水田に「ITの波」が押し寄せ始めている。収穫したコメの量や成分をデータ化し、冬の間に課題を見つけ、翌年の稲作の計画を立てる。データを集めたり、計画を実行したりするのがIT農機だ。コメづくりは「経験と勘」まかせから脱しようとしている。
新潟市秋葉区の水田脇で5月中旬、平野潤一さん(39)がスマートフォンを操作していた。全地球測位システム(GPS)で、計画通りの水田に来ていることを確認。続けて作業開始の操作をする。
「ピー、ピピ」
水田に運び込んだ田植え機が指示を受信すると電子音が響き、設定が変わった。田植えを始めると、機械が水田に計画した量の肥料を一緒にまきはじめた。
平野さんは、高齢で引退した農家など約20軒から水田を借り、新潟市内の150カ所で稲作をする農業法人「新潟農園」の常務だ。5人の作業員で約30ヘクタールの水田を管理し、コメをつくる。
水田は、土の質や日照量などによってコメの収穫量や質に差が出る。これまでは農家ごとに「経験と勘」で、その年の気候などを見ながら肥料の量や作業時期を決めてきた。
ただ、管理する水田が増えると、経験を引き継ぐのは難しい。新潟農園は主に2種類のコメをつくっているが、これまでは種類ごとに肥料の量を変えるだけで、水田ごとの細かな管理まではできなかった。
今年からは違う。肥料の量は、昨年の収穫量を参考に冬の間に決め、水田ごとにパソコンに登録済みだ。現場ではスマホを操作するだけで、登録通りの量の肥料を間違いなくまいてくれる。平野さんは「これなら間違いもなく簡単。細かく管理して、収穫量も質も底上げしていきたい」と話す。
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