来春の新設を予定している「特定国立研究開発法人(仮称)」。安倍内閣は、理化学研究所(理研)を同法人に指定する法案の今国会成立を見送りました。菅義偉官房長官は、STAP細胞問題の一連の騒動が収束するまで「閣議決定はしない」との方針を示しています。
この特定国立研究開発法人とはどういう法人なのでしょうか。その目的と特徴について解説してみましょう。
「世界最高水準」の研究機関を
近年、欧米だけでなく中国やアジアの研究機関の台頭が著しく、日本は国際競争に勝ち抜くための力が求められています。ところが、現行の独立行政法人は業務の効率化に主軸が置かれ、革新的な研究結果が出づらいとの指摘があります。
特定国立研究開発法人は、こうした状況の中、日本にも世界トップレベルの研究機関を誕生させるために新設されます。国を代表する実績を持つ研究機関に対し、国家戦略に基いて中長期的に研究に専念できる環境を整え、優秀な研究者を集めることができるように支援するものです。2015年4月の創設が決まっています。
そもそも、宇宙開発や深海資源発掘、太陽光発電など、莫大な研究開発費を要する事業は民間だけで目に見える成果を出すのは難しいのが現状です。産業と大学と国立研究開発法人が三位一体となることで、国際競争力のある世界的な大型プロジェクトにつながることが期待されています。
何を基準に指定されるの?
特定国立研究開発法人に選ばれるかどうかは、論文の被引用数や特許の出願数、世界に対する影響力が大きい研究機関であるかなど、総合的に判断されます。新設に当たって指定候補に挙がったのは、理研と産業技術総合研究所(以下、産総研)の2法人。現在はどちらも独立行政法人で、世界に影響力の大きい機関として、研究成果の質や分野の多様さが評価されました。
特定国立研究開発法人に選ばれれば、人材を集めるために国家公務員を上回る給与が支給されるほか、数値目標ではなく課題解決型の目標設定が可能になるといったメリットがあります。もちろん、その活動状況や社会状況に応じて、対象法人を取り消される可能性もあります。
当初の予定では、4月中旬に特定国立法人を位置づける法案を閣議決定し、今国会に提出。法案成立の後、来年4月に新法人に移行するスケジュールでした。政府は理研と産総研を同時に指定する方針だったので、産総研の指定も先送りされる見通しです。菅義偉官房長官は「来年4月からのスタートで逆算すれば、スケジュールに支障は生じない」とも述べており、同法人の指定はSTAP細胞問題の検証結果を待つことになりそうです。
(南澤悠佳/ノオト)