June 13, 2014
約1万5000年前、3種のペンギンは温暖化をうまく切り抜けた。しかしそのうち2種は今、大きな困難にぶつかっている。
お腹の出た体型でよたよたと歩く南極のペンギンたちだが、地球上で最も過酷な気候の一つから受ける試練を数千年にわたって切り抜けてきた。中でもアデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの3種は、氷床が縮小し始めたときに起こった温暖化現象の中でも、繁栄はしないまでも持ちこたえられたことが新たな研究で明らかになった。
研究論文の著者らは、これらのペンギンは気候変動の「勝ち組」だったと位置付けた。約1万5000年から2万年前に氷が後退したことで、ペンギンが営巣できる露出した地面が広くなり、個体数の増加が可能になった。
こうした歴史的な観点は、西南極・・・
お腹の出た体型でよたよたと歩く南極のペンギンたちだが、地球上で最も過酷な気候の一つから受ける試練を数千年にわたって切り抜けてきた。中でもアデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの3種は、氷床が縮小し始めたときに起こった温暖化現象の中でも、繁栄はしないまでも持ちこたえられたことが新たな研究で明らかになった。
研究論文の著者らは、これらのペンギンは気候変動の「勝ち組」だったと位置付けた。約1万5000年から2万年前に氷が後退したことで、ペンギンが営巣できる露出した地面が広くなり、個体数の増加が可能になった。
こうした歴史的な観点は、西南極に暮らすペンギンの現状について科学者が理解する助けとなっている。
イギリス、サウサンプトン大学の博士課程学生で、今回の論文の筆頭著者ジェマ・クルーカス(Gemma Clucas)氏によると、科学者たちが現在南極半島で観測している温暖化は、これらのペンギンが過去に経験した限度に近付きつつあるという。「私たちは今、彼らが過去に見せたのとは大きく異なる反応を目にしている」とクルーカス氏は語る。
ジェンツーペンギン249羽、ヒゲペンギン166羽、アデリーペンギン122羽の遺伝子を分析したところ、3種とも氷床が最も大きくなった最終氷期極大期後に個体数が増えたことが分かった。しかし、現在の西南極でみられる温暖化傾向に対してはジェンツーペンギンだけが個体数を保っているようであり、他の2種は減少している。
◆氷の過剰も不足も問題
「氷はひどく不足することもあれば、過剰になることもあり、どちらも悪条件だ」と話すのは、カリフォルニア州ラホヤにある米国海洋大気庁(NOAA)南西漁業科学センターの生態学者ジェファーソン・ヒンケ(Jefferson Hinke)氏だ。
過去には、土地が不足するという問題が起こった。ペンギンは餌を海に頼っているが、最終氷期極大期の間は南極を取り囲む海に現在の2倍以上の氷があり、ペンギンが海に出るのを大きく妨げていた。また、ペンギンが産卵したりひなを育てたりする露出した地面も氷河に覆われてしまった。氷が解け始めてから、ペンギンの個体数はようやく改善し始めたのだ。
今回の研究には関わっていないヒンケ氏は、「今は氷が非常に不足している」と話す。「その生態学的結末は、アデリーペンギンやヒゲペンギンといった種にとって困難な状況になる」という。しかし、過去の試練とは違い、今のペンギンが抱えている問題は食料供給量の減少だ。
アデリーペンギンとヒゲペンギンは、エビに似た動物であるオキアミを主な餌としているが、その生育に必要な海氷が後退しているため、オキアミの数が減っているのだ。さらに、商業漁業によるオキアミの捕獲や、オキアミを捕食するクジラの数の回復もオキアミの個体数減少に拍車を掛けている。一方、ジェンツーペンギンの餌は比較的幅広く、オキアミだけでなく魚や一部のイカも食べるため、うまく対応できていると考えられる。
◆安泰の保証はない
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の個体群生態学者で、今回の研究にデータを提供したヘザー・リンチ(Heather Lynch)氏は、「これらの種は、私たちが折に触れ評価するよりもずっと逆境に強い」と話す。リンチ氏によれば、科学者たちはペンギンが生息地を移らざるを得ない事態を懸念しているが、今回の論文はこれら3種のペンギンが変化を切り抜けられることを示しているという。
しかし、「過去には運命の逆転が起こった」とリンチ氏は話す。アデリーペンギンとヒゲペンギンがその証拠だ。ジェンツーペンギンは今のところうまくやっているようだが、「いつまでも安泰だという保証はない」。
今回の研究論文は、6月12日付の「Scientific Reports」誌に掲載された。
PHOTOGRAPH BY BILL CURTSINGER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE