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「IS インフィニット・ストラトス ~黒衣の侍~」
IS学園入学編

三斬 漢は黙って前へ進むものだ

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 セシリアと翔の決闘話が決定した日の放課後、教室にいるのは翔と一夏だけ、会話の内容は必然と言うか、一週間後の月曜に行われる決闘へ話がシフトしていく。

「本当に大丈夫かよ? あのセシリアって奴教官に勝ったんだろ?」
「まぁ、問題無いんじゃないかと思っている」

 一夏の心配をよそに、飄々と心配ないと言ってくる。何時もと変わりない翔の態度に本当に大丈夫かよ、とため息一つ。思えば、翔の事について心配するのは今に始まった事じゃない、大事な所では折れる事のない信念を貫く時、翔は周りに心配させる、そして何事もなかったように終わる。

「もし俺が実力的に下だとしても、今回だけは負けてやるわけにはいかん」

 確固とした強い意志を秘めた翔のその言葉に、一夏は安堵を覚える。

「まぁ、お前がそう言うなら大丈夫なんだろ」
「当たり前だ、何を心配している、馬鹿者」

 一夏の意見に肯定する意見が飛んでくるが、それは翔本人から発せられたわけではない、翔本人の視線は教室のドア付近に居る千冬に向けられている。ドアの縁に背を預け、腕を組みながら発する言葉はある意味翔自身よりも翔の事を信頼している自信が感じとれる強さの声。

「お、織斑先生~、速いですよ~ってあぁ、よかった、織斑君も柏木君もまだ教室に残ってくれてたんですね」

 千冬に軽い非難を言いつつ教室に翔と一夏が居ると認識し、教室に入ってきたのは、一年一組の副担任、山田真耶である。その表情は安堵に彩られ、へにゃ、やら、ほにゃと言ったような擬音が似合う表情になっている。見ていて実に微笑ましい限りだが、良かったと言う事は何か翔と一夏に用があるのだろう。

「千冬姉に山田先生……」
「織斑先生、だ」

 すかさず千冬からの訂正が入った事に一夏は多少げんなりしながらも、真耶の用事の方が気になるので、気にしない事にする。

「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」

 真耶の用事の内容に、一夏と翔は顔を見合わせる。どちらも顔に浮かぶのは疑問。

「山田教諭、一週間は自宅から通学すると聞きましたが?」
「事情が事情なので無理やりねじ込んだみたいですよ」
「でも荷物とかあるんで一度家に……「それなら私が手配しておいた」……は?」
「携帯の充電器と着替えがあれば十分だろう、ありがたく思え」

 何時もと同じ声の調子でそう言う千冬に、あ、ありがとうございます……と苦しそうに返すしかない一夏。真耶はその姉弟のやり取りに苦笑を浮かべている。

「俺の荷物も送ってあるのか?」

 千冬と同じように何時もの調子で問いかける翔に、千冬は是と答える。その答えに得心がいったと一つ頷く。

「どういう事だ?」

 翔が納得している事について純粋な疑問を浮かべる一夏に、千冬はため息を一つ、真耶は仕方ありませんよ、と苦笑、翔は一夏に向き直り頭を使え、と言い簡潔に説明を始める。

「俺たちは今現在世界で二人しかいない男でISを扱える特異なケースだ、そう言う存在は大抵サンプルやモルモットと呼ばれる場合が多い、そんな存在がふらふらと出歩いてみろ、どうなると思う?」

 翔のその発言に一夏もようやく納得の表情を浮かべ、同時に冷や汗を浮かべる。

「俺達はギリギリの所に居るって事か」
「そう言う事だ、その事実から考えて後々専用のISも与えられるだろうな、具体的には自由にIS学園の外と行き来出来るようになる時期までには、な」

 つまりは、世界のあらゆる国からしてみても、男がISを扱えるケースというのは特異で、そのメカニズムを解明すれば男でもISが扱える時代が来るかもしれない。その為に二人が危険な状況に陥らないという保証は無い、専用機の時期や与えられる根拠についてはそれについての防衛手段としての意味合いで与えられるだろうという翔の推察だ。
 翔の世界の状況を含めた自分達の立場とそれによって取られるであろう防衛策の推測を披露された三人の反応は三者三様、自分の立場が思っているより危うい状況に冷や汗を浮かべる者、推察の仕方とその結果に素直に驚く者、これぐらい考えられて当然と言う様に一つ頷く者、誰が誰かは推して量るべし。

「す、すごいですね、柏木君、ホントに15歳ですか?」

 生徒の年齢を疑うIS学園女教師、山田真耶。これが普通の反応であるが、いかんせん状況が悪かった、翔の事を昔から知る姉弟に挟まれてはこれが当然というような反応しか返ってこないのは必然だ。

「俺、平和ボケしすぎたかな?」
「何時もお前の頭の中は平和だろう、柏木を見習え」
「見習うも何も、柏木君の推察、教師陣の会議を見てきたんじゃないかと思う位当たってるんですけど……」

 頭を捻り悩む一夏、中々難しい要求を出す千冬、それに苦笑する真耶、三人を見ながら思考はセシリアとの対決へと思考を傾ける翔。
 結局先程の翔による推察は物事を長い目で見た時のもので、とりあえず今考えねばならない事は、セシリアとの対決にどう勝つか、その一つに尽きる。

「ふむ……」

 と、意味の無い一言を合図に思考を加速させようとするが、何か思い出したかのような一夏の声にそれは遮られる。

「あ、そうだ」
「何だ?」

 一夏の声に千冬が聞く態勢に入ったのを見て、再度思考へダイブしようとするが、一夏の口から飛び出てきた疑問は自らも関係ある話だったので、またしても阻止される。

「聞いてからずっと気になってたんだけど、翔を倒した教官って誰なんだ? 未だに信じられないんだけどさ」
「私としては何故柏木君が負けないと思っているのかが謎なんですけど……」

 その二人の疑問に、千冬は本当に珍しい事に不機嫌そうな表情で舌打ちまで打つ。不機嫌そうな千冬に気に障るような事を言ったのかと一夏と真耶は冷や汗を浮かべるが、どうやら見当違いだったようで、千冬は行き場の無い怒りを表に出しているだけのような不機嫌さ。

「あんなもの、勝った内に入らん……」

 不機嫌そうに、それで居て納得のいかなさそうに呟く千冬に、一夏と真耶は誰が翔の相手をしたのか悟り、互いに翔へ言葉を掛ける。

「仕方ないですよ、織斑先生が相手じゃ……」
「ますます不思議だ、何で勝ってないんだ?」
「「え?」」

 同時に口をついた言葉はタイミングが同時でも、内容的には真逆の内容。互いに自らの常識の中で埋まっていない溝があるようだ。それに対して試合内容にますます納得がいかないような表情で溝を埋めるための説明を始める。

「まず私と柏木では地力に差がある、生身では私が柏木に勝つ事は出来ん、ISを使えば勝つ事は可能だが、条件が同じになれば勝つ事は不可能。ISの動きは基本的には操っている本人の動きだ、イメージが重要な飛行などはどけておくとしても剣の扱いと言う点において特に変わることは無い」

 そこまで話して苛立たしげに組んだ腕の指が忙しなく動き、眉間にも皺が寄る。試合内容が頭の中でリピートされているのか喋らなくなってしまった千冬の後を翔が引き継ぐ。

「剣の扱いと言う点において千冬は俺に勝った事が無い。そしてそれは現在まで変わっていない、あの日もどれほど上達したか見るつもりだったんだが……まさかISの武器があんなに脆いとは俺も思わなかった、一撃で剣が折れてそれは千冬が武器を破壊したと言う判定で千冬の勝ちになった」

 事の真相を把握した二人の反応は当然の事ながら分かれる、一夏はそう言うからくりか……と納得し、真耶は今までの自分が信じていた常識を覆され、しばし呆然。
 実際の話、真耶の反応も仕方ない事ではある、ISは女性しか扱えないとされてきた、その中で千冬はモンド・グロッソの総合優勝者で、実質世界最強の座についていた。それはつまり表向きには千冬が世界最強というのが常識であるわけで、その常識が実は間違いで世界最強の女性は普通に負け続きでしたなんて、もはや理解不能の御伽噺のようなものである。

「この私の師匠が高が15年かそこらしか生きていない小娘に侮られている事実が何よりも私を苛立たせる……よし、柏木、放課後は必ず私の所へ来い、ISを動かす上で何が大事かしっかり教えてやる」
「承知」

 寮の部屋が決まったので翔と一夏に伝えにきただけだったはずが、自らの常識を壊され、最後には師弟の関係がISにおいては逆になった所を見せられ終了した。

「なんだかなぁ、少し同情します、山田先生」

 幼い頃、二人に振り回されてきたであろう一夏の哀れみが篭った声が真耶にとっては慰めにもなり、少し痛かった……。


 月曜日、放課後、第三アリーナピット内。
 翔、一夏、千冬、真耶の四人は翔の専用機が届くと言う事でピット内に待機していたが、未だその兆しは無い。
 その事実に若干の苛立ちを感じている千冬、おろおろと焦っている真耶、自分の事ではないのにまだかな? と定期的に翔に問いかけている一夏、壁に背を預け、目を瞑り腕を組んで静かに待機しつつ、時折話しかけてくる一夏に反応する翔。遠巻きに見てみれば何となくシュールな光景だが、その光景を楽しんでいる暇は無い、時間は迫っているのだ。
 一夏のまだかな? の問いかけが26回目に達した時、ピット内の扉が開き、そこに目を向けた時、一番目に入るのが、うさみみ、そうUSAMIMIである。その後に、造形の整っているであろう顔や大きく突き出た胸などが目に入り、そこでようやく立っているのが女性だと分かる。
 その姿を目にした時千冬は思わず、遅い、と叫びそうになるが、そのUSAMIMIはそれよりも早く翔の下へ駆け寄る。

「しょーくん! あなたの愛しの束さんがお届けものだよ♪」

 そう言いながら翔に抱きつく女性。

「束、落ち着け、お前が届け物ではなくお前の持っているISが俺への届け物だろう」

 冷静にそう言いながらぐいぐいと身体を押し付けてくる束を押し返す。その翔の行動にぶぅぶぅ、と声を上げる束だが、突然首根っこを掴まれ後ろに引っ張られる。

「およ?」
「およじゃない、遅いぞ、束」
「やぁ♪ちーちゃん、久しぶりだね♪」

 相変わらずの友人に頭が痛くなってきたのか、片手で頭を押さえる千冬。一夏は突然現れた消息不明の筈だった箒の姉が現れた事でしばし呆然。

「いっくんも久しぶりだねぇ♪」
「え? あ、はい、お久しぶりです、束さん」

 中々ショッキングな光景につい普通に再開の挨拶をしてしまう一夏、そうじゃないだろ、と自分で突っ込みながら頭を抱えてしまう。
 真耶は突然現れた見慣れない人物に警告を送りたいが、翔や織斑姉弟の知り合いっぽいので声をかけられず、おろおろとしている。

「束、山田先生が困っている、一応関係者以外は立ち入り禁止と言う事になってるから自己紹介をしろ」

 翔のたしなめるような声に、束の顔は不満げな形を作る。

「えー、知らない人はいいよ、しょーくんやちーちゃん達が分かってればそれで……「束」……わかったよぅ、するよぅ自己紹介、篠ノ之束だよ……これでいい? しょーくん」

 まぁ、名前だけで十分だろう、と翔は苦笑し、千冬はますます頭が痛くなったのか米神を指で揉んでいる。真耶はその名前に何処か引っ掛かる所があったのか考え込んでいる。
 千冬が米神を揉んでいる隙に千冬の手から脱走した束は、組んでいた腕を解いている翔の右腕にしがみつく。その光景を見た千冬は口元と眉尻が一瞬だけだがひくりと動く。

「束、何をしている……」
「おややぁ~ん? ちーちゃんてば自分がこーんな事出来ないから束さんにジェラシー感じちゃってるのかなぁ?♪」
「べ、別に……っく、それはいい、さっさと柏木から離れてISを……」
「柏木!? ちーちゃんどうしちゃったの? 何か余所余所しくなってないかい?♪」

 ニヤニヤと言う音が似合いそうな笑顔を浮かべる束にますます眉間に皺を寄せる千冬。一食触発と言った雰囲気だが、その空気を断ち切ったのは誰が予想したであろう、先程まで頭を抱えていた一夏だった。

「そ、それより! 翔のISは!? もう時間迫ってるぞ!」
「む、そうだな、束、俺のISは何処だ?」

 一夏と翔の声に束はニヤリと笑うと自らの胸の谷間から、黒く小さなネクタイピンのようなアクセサリーを取り出す。ちなみにどうでも良い事だが、あまりに刺激的な光景に一夏は耳まで赤くして目線を無理やりに明後日の方向へ向けていた。
 翔は動揺する事無く、束からその黒いピンを受け取る。

「で? 束、きちんと柏木が使うに値する仕様に仕上げてきたんだろうな?」

 千冬が束に確認すると同時に考え込んでいた真耶から「篠ノ之束って、あの篠ノ之博士!?」などと言う実に今更な台詞が上がっていたがそんなものは全く聞こえていない様に束はISの説明を始める。

「勿論だよ♪ちーちゃん♪ISの名前は黒衣 零式、世代的には第三世代だけど、使い手によっては束さんが今箒ちゃんの為に作ってる第四世代ISをも凌ぐ性能を持ってるよ♪これと言った特殊兵装はないけど、しょーくんが使うならもう特殊兵装と言ってもいいほどの武器を一つ付けてるよ♪」

 束が言った衝撃的事実、第四世代ISと言う単語を特に気にする必要もないとスルーしつつ、ふむ、と千冬と翔は一つ頷く、この辺りは師弟である事を感じさせるタイミングの良さ、そして考えている事もほぼ同じ、鬼才天才の篠ノ之束がここまで言う限り、何の心配もないだろう、と言うのが師弟の出した答えだった。

「じゃー、目的の物も渡したし、束さんはそろそろ行くよ♪しょーくんなら初期設定のISでも十分だろうからね♪闘ってる内に初期化と最適化は終わると思うよ♪」

 じゃーねー、とピットを出て行こうとする束に翔は声をかける。

「束、感謝を、それと、たまには連絡して来い、心配するからな」
「じゃあ、また今度、専用の回線で連絡取れる端末を送るよー♪」

 首だけ翔に振り返り、笑顔で、今度こそじゃーねー、と言ってピットの扉を潜る束。もうしばらく会う事もないのだろうが、あの天才の事だ、特に心配はする必要もあるまい、と渡された自らの剣へと視線を送る。

「いけるか? 柏木」

 そう問いかけてくる千冬に対して翔の答えは一つしかない。

「愚問、進むべき道があるのなら進むのみ」

 そう答えた翔の身体が、光に包まれ、治まったとき、まず見えるのは装甲の黒、次いで目を引くのがスラスターの多さ、初期設定の機体にしては明らかに数が多い、そして、ISのデザインとしては珍しく、シャープさがなく、どちらかと言えばごつごつとした印象を与える。
ふむ、と黒い装甲に包まれた掌を握り、開く。

「特に問題はないか?」
「む、特に問題はありません」

 初期化と最適化が正常に進んでいる事を目の前に浮かぶモニターで確認し、千冬にその旨を伝えると、千冬は一つ頷く。ISを正常に起動させた翔に一夏と真耶も近づいていく。

「へぇ~、それが翔のISかぁ、何か、厳ついな」

 ごつごつとしていて厳ついデザインのISが翔に似合いすぎていると判断した一夏は思わず苦笑。真耶も同じような表情を浮かべている。

「よし、時間だろう、問題ないなら行って来い。大事なのはイメージだ忘れるな」
「承知」

 アリーナへと続くピットの先へと向き、移動を始める。

「一度折られなければ見えない道もある、今一度間違えた道を正し進ませる為にも、柏木翔、推して参る!」

 何時もクールなその瞳には普段からは考えられないほどの情熱が宿っている。ピット内から飛び出した翔を見送る三人はモニター室に向かいながら、燃えている翔など久しぶりに珍しいものを見たと騒いでいた。主に一夏が……無論騒ぎ過ぎて千冬に殴られたのは言うまでもない。
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