「歯科助手泣かした」の裏にある違法な状況
「歯科助手泣かした」の書き込み
インターネットの掲示板に「歯医者で歯科助手泣かしたった」との書き込みから始まるやり取りがあった。書き込んだ人は、歯科医院へ定期検診に訪れ、作業に取り掛かろうとした人に「歯科衛生士ですか?」と聞いたとのこと。ところが3軒とも歯科助手だったそうだ。
最初の2件のやり取りが書き込まれているが、歯科医院側の対応をまとめると次の通りだ。
●1軒目
院長が「作業をしようとした女性は歯科衛生士学校の実習生」と説明するも、学校名などは答えられず
院長に「お金はいらないのでお引き取り下さい」と言われる
●2軒目
歯科助手が「務めて20年」「新人歯科衛生士よりは仕事できます」と主張
平謝りでお金はいらないからと追い出される
3軒目の詳細は不明だが、最初に「これで3件目」と書いていることから、同様の状況らしい。最後に「歯科衛生士しゃんにキレイにしてもらったお口で寝る」ともあるため、4軒目で歯科衛生士に作業してもらったのだろう。
「そんなに気になるなら電話で聞けばいいだけの話」などの書き込みもあれば、こうした掲示板ではよく見かける「マスクしてると可愛く見えるから全てを許そう」「可愛ければ良いという意見が少ないんだが?」などの意見もあるが、「歯科助手なんか出来る事は殆ど無いからな、実際」「いや腕がどうであろうと資格ない人が資格のいる仕事やっちゃ駄目だろ」のような書き込みもある。
歯科衛生士は国家資格
両者の一番大きな違いは、歯科衛生士が国家資格である点だ。歯科助手も認定資格を出しているところはあるが、国家資格とは全く異なるものだ。なので未経験でも歯科医院の「歯科助手募集」に応募して採用されれば歯科助手になれる。
具体的に歯科衛生士にはできて歯科助手にできないことを挙げると、歯磨きの指導、歯にフッ素を塗る、歯石を取る、(歯科医師が開けた)穴への充填、被せものの調整などだ。つまり書き込みにあったように、定期検診の対応を歯科助手が行ってはならない。
しかしながら歯科助手が患者に作業を行ったことは少なからずあり、過去には処罰されたり、不正請求を取り消されたりしたこともある。
歯科医師が原因
大きな原因は、雇う歯科医師が順法精神に欠けることだろう。先の掲示板には「歯科衛生士と歯科助手をごっちゃにしてんのはアンタら歯科医師っちゅーわけですな?」と聞いたところ、院長に「帰りやがれ」と言われたとあった。
人手不足も一因だが
厚生労働省などの調査を見ると、歯科衛生士の離職率の高さが分かる。
「仕事・資格の本音を語るなら honne.biz」の「この職業のここが悪い」によると、収入が低い、業務が多忙、福利厚生が悪い、セクハラ、医師との相性、感染の危険性などの他に、違法行為や違法行為を挙げている人もいる。
平成25年の歯科衛生士国家試験合格者数は5832人。毎年コンスタントに5000前後が有資格者になっているが、これでは歯科衛生士の離職率が高いのも当然だ。だからと言って、歯科助手に歯科衛生士の仕事をさせてはいけない。
歯科助手と歯科衛生士の時給差
もう1つ気になる点がある。インターネットで歯科衛生士や歯科助手の求人を見ると、都内では歯科衛生士の時給は1200円から1500円程度が多く。一方、歯科助手は900円から1000円程度とコンビニやファーストフード並だ。
時給の低い歯科助手に歯科衛生士の仕事をさせ、診療報酬は歯科衛生士としての額を得ているとすれば、当然、利益が大きくなる。人手不足ならまだしも(と言ってはいけないが)、利益目的で歯科助手に歯科衛生士の仕事をさせているとすれば、悪質の度合いが高い。
ネットの笑い話に留めることなく、状況の改善が急務だろう。関係者の尽力を願いたい。
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