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 アルツハイマー病研究の国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)2」で、厚生労働省が製薬会社などの関与で研究がゆがめられないかを調べる「利益相反委員会」の審査を経ずに、補助金2億円を出していたことが朝日新聞の調べで分かった。大学研究者と製薬会社の癒着が指摘される問題が相次ぐ中で行政への不信も招くもので、厚労省は「不適切だった」としている。

 ADNI2はアルツハイマー病の兆候を発見し治療薬の開発・投与につなげるため、2007年に始まったADNI1の後続研究。代表者は認知症治療薬を開発・販売するエーザイの内藤晴夫社長が理事長の「バイオテクノロジー開発技術研究組合」。製薬会社を中心に29社で構成され、技術部長など主要職にはエーザイの出向社員が就く。

 利害関係者の関与による不正を防ぐため、厚労省は補助金を出す要件として弁護士らを含む利益相反委員会の設置と審査結果の公開を求めている。厚労省によると、同組合が昨年6月に出した補助金申請書に「審査予定」とあり、厚労省担当者は「すぐ審査するだろう」と考え、確認しないまま10月に補助金2億円を支給。朝日新聞が今年1月にADNI1のデータ改ざん疑惑を報じた後に審査の未実施に気付き、審査するよう指導したという。