これは…かわいい九相図なのか…『かわいい闇』
posted by Book News 編集:ナガタ / Category: 新刊情報 / Tags: マンガ,
今回は、『かわいい闇
』をご紹介します。
きゃりーぱみゅぱみゅの成功が象徴的ですが、その前後から、可愛いものとグロテスクだったり残酷なものの親和性の高さというのは、わかる人にはわかる当たり前のものという認識があったと思います。今回紹介する『かわいい闇』は書名からしてこの「当たり前」に正面から向き合う作品。絵本とコミックスの中間というか、絵も物語も楽しめる1冊です。とにかく可愛くて、静かに残酷。

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きゃりーぱみゅぱみゅの成功が象徴的ですが、その前後から、可愛いものとグロテスクだったり残酷なものの親和性の高さというのは、わかる人にはわかる当たり前のものという認識があったと思います。今回紹介する『かわいい闇』は書名からしてこの「当たり前」に正面から向き合う作品。絵本とコミックスの中間というか、絵も物語も楽しめる1冊です。とにかく可愛くて、静かに残酷。
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非常に美麗な作画が印象的なので、英語版の表紙も貼っておきましょう。こちらでは「美しい闇」というタイトルに翻訳されています。
英語版だと手だけ、日本語版では横顔が、それぞれ表紙に描かれている少女は、作中では死体としてのみ登場します。どこかの森で少女が死んでいて、なぜかその周りで何人もの小人の子供たちが暮らし始める、という謎設定の物語なのですが、子供たちはこれ以上ないくらいに短絡的な自分勝手な思考で残酷きわまりないし、森に去来する季節の雰囲気が非常に美しく、諸行無常な感じを濃厚に味わえます。
この記事のタイトルにも挙げていますが、仏教絵画には「九相図」というものがあります。死体が朽ち果てていく様子を描いたもので、「九相」というのは死体が白骨化するまでの様子を9段階に分けたものを指します。『かわいい闇』は、写実的に描かれた少女の死体が朽ち果てていく傍らで、戯画化された別の子供たちが遊び、そのさらに周囲でやはり写実的に描かれた森の季節が移り変わっていく様子が描かれています。実は、本作には写実的に描かれ、子供たちから「巨人」と呼ばれ、殺人犯のようにも変質者のようにも見える成人男性も登場するのですが、少女の死体との関係は明らかにされません。
本作を読んで真っ先に思い出したのは、『エコール』という作品。エコールというのは、フランス語で「学校」という意味なのですが、この映画の原題は「Innocence」(無垢)で、やはり森のなかにある謎の「学校」を舞台に、少女たちの無垢な姿がロリコン的な視線で凝視されるという作品です。美しい自然と、美しい少女たちの姿が描かれているのですが、同時に彼女たちはその「学校」でバレエを学び、やがてオークションにかけられ売られていきます。隠喩に満ちていて、どのように解釈するのかは鑑賞者に委ねられているのですが、作中で「死」が重要なモチーフになっていることに気付く人も多いでしょう。
それはさておき、上掲の予告編の後半でかかってる音楽と同じプロコフィエフ作のメロディを使ったこんな曲がありまして、これを再生しながら『かわいい闇』を読むと味わいが倍増して素晴らしいんじゃないかと思います。
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