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2014年06月24日 前へ 前へ次へ 次へ

自動車部材 飛躍の好機4 「軽量化を究める」 CFRPの3

多様なビジネスモデル
根強い成形時間短縮要求

GHクラフト(舟久保工場)[1].JPG 炭素繊維大手が競い合う日本ではビジネスモデルもさまざま。将来性の高い自動車用途を開拓するために特定自動車メーカーと提携するのが帝人、幅広く炭素繊維原糸(プレカーサー)を供給するのが三菱レイヨン。いずれも自動車メーカーの要請に応えて成形時間の短縮を目指している。コストに直結する生産効率を従来材料並みに引き上げなければならない。ただ、炭素繊維は万能ではない。自動車の軽量化には適材適所で、さまざまな材料が使い分けられている。

*「1分成形」目標
 帝人は米GMと製品開発で連携し、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)を1分という短時間で成形する技術を開発している。日本の自動車各社は量産車にCFRPを適用する条件としてコスト上昇を抑えられる「1分成形」を目標におく。GMとの協業は、「これまでの研究チームとの作業から、量産化を前提とした開発段階へフェーズが変わってきた」(吉野隆・帝人グループ常務執行役員兼東邦テナックス社長)ところだ。実現すれば、米国内で炭素繊維から成形品までの一貫生産体制を構築することになる。
 ただ量産車向けに供給能力を確保しなければならず、成形品工場への膨大な投資が必須。そこで、「一部は共同出資のようなやり方も選択肢としては否定しない」(同)という。
*広範企業に供給
 一方、三菱レイヨンはさまざまな自動車メーカーに原糸や中間材料、成形技術を合わせて売り込もうとしている。成形は10分以内に抑える技術を実用化ずみで、PCM(プリプレグ・コンプレッション・モールディング)法を訴求している。これはプリプレグを用いる連続繊維タイプの複合材料であり、高い繊維含有率による高強度を実現しながら、速硬化性のエポキシ樹脂の活用などにより成形時間を短縮するもの。日産自動車の「GT-R」向けトランクリッドに採用実績がある。
 金属をインサートした一括成形などプレスを軸に技術向上を図っている同社は最近、伊ランボルギーニ研究所との関係も深め、シミュレーション技術などを取り入れて解析技術の向上につなげている。2012年に買収したカーボンコンポジットの開発製造のチャレンヂ(狭山市)や、今年に入って出資した中国のアクション・コンポジッツ・インターナショナルなど、国内外のCFRP成形メーカーとのグループ化を進めている。
ロータスCIMG5778[2].JPG カーボン素材は車体の大幅な軽量化を図れる新素材として注目度が高まるばかり。課題のコストも需要が増えれば解決できそうだ。中国などの新興国が未だキャッチアップできない新素材だけに日本の優位性を発揮できる。
 ただCFRPは万能ではない。競技車を手掛ける英ロータスエンジニアリングは、「クラッシュ時に急激に変形する」(ピーター スチュダー プロダクトマネジャー)と問題を指摘する。常に最高性能を追究する競技車にとって軽量化は生命線といえるが、安全性には替えられない。同社は数カ月前、チタン材を接着剤とリベットで接合する新技術を共同開発したばかり。接着剤は100度C以上で剥離しやすくなることから、リベットで補強する。この技術を適用したチタンサブフレームは従来の高強度スチールサブフレームに比べて30%以上の軽量化を実現している。
 CFRPについて、「一般の市販車に使うのなら問題ないが、低コストの生産技術が鍵になろう」と、見方は同じだ。
(続く)

【写真説明】
上・炭素繊維複合材料を使って自動車や航空機の設計・製造を手掛ける帝人子会社のジーエイチクラフト(静岡県御殿場市)
下・競技車のフレームにはCFRPよりもチタンの方が適するという。高価だが、それに見合う性能を発揮できる


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