イスラエル:各地で衝突、市民に犠牲 ユダヤ3少年不明で
毎日新聞 2014年06月25日 21時16分(最終更新 06月25日 21時40分)
ヨルダン川西岸パレスチナ自治区へブロン近郊でユダヤ人の少年3人が行方不明となってから、26日で2週間になる。イスラエルはイスラム原理主義組織ハマスの犯行だとして大規模な摘発作戦を展開し、これまでに2000カ所近くを捜索したが、3人の安否は不明のままだ。パレスチナ市民は各地で軍と衝突。捜査に協力するパレスチナ当局にも怒りの矛先を向けている。【へブロン(パレスチナ自治区)で大治朋子】
3人はユダヤ教の宗教学校に通う16〜19歳で、12日夜以降、行方不明に。ハマスは関与を否定している。イスラエル軍は捜索範囲をヨルダン川西岸ナブルスやジェニンにも拡大し、これまでに371人を逮捕した。うち、282人はハマス関係者という。
一方、イスラエル軍とパレスチナ市民との衝突で、少なくともパレスチナ人の少年ら5人が死亡。ハマスが拠点とするパレスチナ自治区ガザからは事件後、ロケット弾26発が発射され、イスラエルは空爆で対抗している。
ハマスは今月2日、穏健派ファタハとともに暫定統一政府を樹立したばかり。米欧が統一政府を歓迎したのに対し、ハマスを「テロ組織」とみなすイスラエルは統一政府との和平交渉を拒み、孤立感を深めてきた。このため、パレスチナ・メディアは「イスラエルは事件をハマス弾圧に利用している」と批判している。
一方、ファタハを率いるアッバス議長が18日に捜査協力を約束すると、パレスチナ市民はこれに反発。各地でイスラエルやパレスチナの治安当局と衝突した。イスラエルは治安の悪化を懸念し、23日にはハマスの摘発作戦を縮小し、3人の捜索に集中する方針を決定した。
記者は18日、行方不明のエヤル・イフラーさん(19)が通っていたへブロンの宗教学校を訪ねた。寮で同室のオルト・ジャマンさん(19)は「週末に父親が誕生日を迎えるので自宅に帰ると楽しみにしていた。無事を祈るだけ」と言葉少なに語った。