謎の超高速計算機、「量子コンピュータ」を巡る議論が混迷の度合いを深めている。
ここ数年、「世界初の量子コンピュータを実現した」と主張してきたカナダのベンチャー企業、D-Wave Systems(以下、D-Wave)は先月、同社製コンピュータ「D-Wave 2」の内部に、量子計算の証拠となる「量子絡み合い」と呼ばれる現象を確認したとする論文(https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.4.021041)を発表。これをもって同社の製品が本物の量子コンピュータである証拠が得られた、と主張している。
一方、今月下旬には米国やスイスの科学者らが、「D-Wave 2には量子コンピュータならではの高速性を示す証拠は見いだせなかった」とする論文(http://www.sciencemag.org/content/early/2014/06/18/science.1252319#aff-1)を発表し、D-Wave側の主張に冷水を浴びせた。
グーグル社内でも見解は割れている模様
興味深いのは、2本目の論文の共著者にグーグルの社員が含まれていること。グーグルは昨年、NASA(米航空宇宙局)と共にD-Wave 2を購入して以来、これが本物の量子コンピュータであるとするD-Waveの主張を強力にサポートしてきた。そうした中、グーグルの社員が今度はD-Wave 2の量子性に疑問を投げかける論文を発表するのは、周囲に奇妙な印象を与えかねない。
もちろん、これはグーグルが社内に相反する2つの見方を許容することを示した点で、同社の自由な企業文化を反映していると、半ばポジティブに捉えることもできる。が、一方で、この"量子コンピュータ"の正当性に関しては、いかに優秀な社員が揃っているグーグルと言えども、一枚岩で通すことはできないことを示している。それほど真贋の判定が難しい問題なのではないか。
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