これほどわけのわからない文章はない。集団的自衛権の行使をめぐる与党協議で示された原案である。自公がそれぞれ都合よく説明できるよう表現を仕組んだせいか、普通の人には意味不明だろう。両党は大筋合意し、きのうは国会の日程まで相談したが、信じがたい乱暴さだ▼集団的自衛権の行使とは、武力攻撃を受けた他国を助けることをいう。日本は憲法9条があるので、日本が攻撃されれば個別的自衛権で反撃できるが、他国を助けることはしないという方針でやってきた。安倍政権はそれを転換しようとしている▼わけがわからない点は大きく二つある。第1。原案は、他国に対する攻撃であっても、そのせいで日本の存立が脅かされたりする「明白な危険」がある場合は、集団的自衛権を使って反撃していい、ということにしたいらしい▼そんなに危ない状況なら日本が攻撃されたのと同じではないかという疑問が浮かぶ。現に原案は、日本による反撃について「憲法上は、あくまでも我が国を防衛」する措置だと書いている。これは集団的ではなく個別的自衛権の話ではないのか▼第2。原案は、集団的自衛権の行使は憲法上許されないと結論する1972年の政府見解を引いて、この理屈は今後も維持すると書いている。歴代内閣の憲法解釈を変更するといっているのに、それを引き継ぐ。つじつまがあわない▼およそ理解しにくいこの文章を国民に読めというのだろうか。振り出しに戻ってもう一度議論し直すべきだ。