Financial Times

アルゼンチンをハゲタカから守れデフォルトリスクの対価を得た債権者がデフォルトに驚くのはおかしい

2014.06.26(木)  Financial Times

(2014年6月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ロンドンのフィナンシャル・タイムズのオフィスからさほど遠くないところに、かつて債務者が送り込まれていたマーシャルシー監獄があった。18世紀にはロンドンの囚人の半分以上が、借金の返済が滞ったことを理由に投獄された人だった。モラルハザードを許さない人々は当時、そういう厳しい罰が必要だと主張していた。

 そして1869年、債務を理由とする投獄が廃止され、破産という手続きが導入された。経済も社会も生き延びた。

企業に破産と有限責任が認められる理由

 物事がうまくいかないことは時折ある。不運に見舞われた場合もあれば、無責任さがたたった場合もあるだろう。しかし、社会には、そういう人たちがやり直せるようにする方法が必要だ。破産という手続きがあるのはそのためだ。

 実際、現代経済で最も重要な民間のアクター(行動主体)である企業には有限責任が認められている。これゆえに株主は、企業が抱える債務から無傷で逃れることができる。この有限責任の概念も、導入された当初は無責任を容認するものだと非難された。

 確かに、有限責任にも問題はある。レバレッジの高い事業(例えば銀行業)では特にそうだ。米国企業が債権者の手をいとも簡単に逃れていく様子には驚きを禁じ得ない。だが、無限責任よりはましだ。

 同様な理屈が国にも当てはまる。政府の借金が返済能力を上回る規模に達してしまうことがある。自国通貨建ての借金であれば、インフレを引き起こして債務を解消することができる。しかし、外貨建ての借金ではこの手が使えない。そして、外貨で借金をせざるを得ないのは、無責任な財政運営をした過去を持つ国であるのが普通だ。

 ユーロ圏では、加盟国がこれと同じ状況に置かれている。各国の政府にとって、ユーロは外貨に近い存在なのだ。そうした債務の元利返済のコストが大きくなりすぎると、債務再編、つまりデフォルト(債務不履行)は不可避となる。

 ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授が著書『This Time is Different(邦題: 国家は破綻する――金融危機の800年)』で示したように、これは昔からある話だ。

失政を重ねるアルゼンチンに同情するのは難しいが・・・

 筆者がその当時論じたように、アルゼンチンは21世紀に入ってから自国がこの状況に陥っていることに気づいた。この国に強く同情することは難しかった。何しろ同国は2001年12月のデフォルトの前に慢性的な失政に苦しみ、その後もさらなる失政に苦しんだ。

 だが、アルゼンチンは1320億ドルの公的債務の元利返済を我慢できる範囲内のコストで行うことが不可能になった。また、債権者は既にデフォルトの可能性から利益を得ていた。ドル建てのアルゼンチン国債と米国債との利回り格差は、最も小さかった時(1997年9月)でさえ3%近くあった。

 デフォルトのリスクの対価を得ていた債権者は、実際にデフォルトになっても驚いてはいけない。分散投資で対処すべきだ。

 ソブリン債務の再編の原理原則には説得力があるものの…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top