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【社会】

魅惑のインド映画発掘 府中の男性 脱サラし個人買い付け

インド映画の日本上映権を買い付けた大向敦さんと妻貴子さん=東京都千代田区で

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 映画を仕事にしたいという子どものころからの夢をかなえ、個人で洋画を買い付けた人がいる。東京都府中市の大向(おおむかい)敦さん(52)で、海外赴任中に飛行機の中で見たインド映画に魅了され、今月28日の公開にこぎつけた。現地ヒット作を個人が買い付けるのは極めて異例だ。 (浜口武司)

 公開されるのは、インド映画史百周年・国民投票(二〇一二年)で女優部門一位を獲得したシュリデヴィさん(50)主演の「マダム・イン・ニューヨーク」。

 ありふれたインドの主婦が米ニューヨークを訪れ、英会話学校に通うさまざまな国の友人との触れ合いなどを通じて、一人の女性としての自信を取り戻していくストーリー。一二年にインドで公開され大ヒットし、すでに欧米など十数カ国で上映されている。

 大向さんは大手オーディオ機器メーカー・パイオニアの営業マンとして〇六年から二年半、ニューデリーに赴任。それ以前はインド映画に「歌って踊るだけという固定観念があった」が、毎週のようにインド映画を見ているうちに引き込まれたという。「脚本もカメラワークもレベルが高く、エンターテインメントとしても一級品」

 奈良市出身。近くにあった母親の実家が映画館だったこともあり、物心ついたときには映画を見ていた。子どものときから「いつか映画の仕事をする」と思い、十八歳のとき、おじが映画館を閉めると知り「つぶさないでくれと泣いて頼んだ」ほどだったという。

 インドから帰国後、国際的な総合機器メーカーGEに転職し、〇九年に香港に赴任。世界各国の映画を見る中、インド映画があまり日本に入ってこないのはなぜかと思い、ムンバイの映画会社にメールを出した。担当者から返事が来て、インド出張に合わせて面会を約束。大向さんが日本の映画市場の状況を説明すると重役にも関心を持たれ、その後「日本での上映権を買わないか」と打診されるようになったという。

 洋画の日本での上映権は、テレビ放映やDVD化の権利がセットになるのが通例で、大手映画会社や配給会社が買い付けるのが一般的。通常、個人が買い付けるのは珍しいという。

 製作会社との契約料やその後の宣伝費を含めると、事業費は一本数千万円。GEも退社した大向さんは、このために会社を設立し、借金もして、「マダム−」と、登場人物が歌って踊る本格的なインド映画「ダバング」(七月二十六日公開)の二本を購入。ヒットさせ、あくまでビジネスとして成功させる考え。妻貴子さん(49)も「好きなことを納得できるまでやってもらいたい」と応援する。

 大向さんは「日本のシネコンは同じような映画ばかり上映しているが、世界にはいい映画がたくさんあると知ってほしい」と話す。

 二十八日からシネスイッチ銀座(東京)、シネマイクスピアリ(千葉)、名演小劇場(愛知)で公開。

 

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