対馬丸:生存の仲田さん「同世代の両陛下にお伝えしたい」

毎日新聞 2014年06月25日 15時00分(最終更新 06月25日 15時27分)

 26日から沖縄県を訪問する天皇、皇后両陛下は、対馬(つしま)丸記念館(那覇市)を初めて訪れ、学童疎開船「対馬丸」の遺族や生存者らと懇談する。両陛下が懇談する生存者の中には、救助までの体験をインターネットのブログで公開している人もいる。埼玉県在住の仲田清一郎さん(78)。「高齢になった今、体験を後世に残したい」との思いで今年4月から書き始めたという。 

 あの日。仲田さんは8歳で国民学校の3年生だった。船倉で寝ていると、強い衝撃が走った。「ごう音で耳が聞こえなくなり、しばらくは静寂の世界にいた」。その後は夢中で甲板に出て海に飛び込んだ。

 救命胴衣を着けていたのが幸いし、流れてきた丸太にしがみついた。闇夜のあちこちから「おかあさーん」「おにいさーん」と叫ぶ声が聞こえたが、次第に静かになったという。

 翌朝。大波に翻弄(ほんろう)され、意識がもうろうとしていたとき、「あそこにもいるぞ」という漁船の乗組員の声が聞こえた。「喉がカラカラで。『水、水』と訴えた記憶がある」。後日談によれば、救助した漁師は仲田さんを死体だと勘違いし、海に放り投げた。「ところが体が動いた。それでまた救ってくれたと聞いた」。相手も分からず、お礼のしようもないという。

 仲田さんは「両陛下は同じ世代。私の体験や気持ちを少しでもお伝えすることができれば」と話している。

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