最近、パワープレーについての議論をよく目にします。なかなか注目されることではないので、鹿島のときのパワープレーについて書いてみたいと思います。
ラスト数分は相手も集中を高めています。90分かけてもそんなにたくさんのゴールが生まれるわけではないサッカーにおいて、そもそもその時間でなかなか得点は取れるものではありません。パワープレーを選択してもしなくても、とても難しい時間帯です。
鹿島では、日本で1番ヘディングの強いユウゾウ(田代有三)がいたので、そう何度も上がることはありませんでしたが、僕も何度か負けているときに前線に上がったことがあります。数えたことはありませんが、300試合以上の公式戦のうち、20回くらいのものでしょうか。そこから点が取れたのは覚えている範囲で2回しかありません。その2回も僕が決めたわけでもアシストしたわけでもありません。
ではなぜ上がるかというと、もちろん手っ取り早くゴール前にボールを運べるからです。僕も数分で5回くらいゴール前に落とすことができたこともあります。しかし、それがゴールに結びつくことはありませんでした。
でも、パワープレーをして点が取れなかったからといって、選手の中に「パワープレーが失敗に終わった。」という意識はありません。あくまで選手は90分で負けたという意識しかないし、パワープレーもいろんなことにトライした中の一つにしかすぎないからです。
サッカーにはリズムがあります。僕はリズムを変えることを意識していました。敵も同じリズムの攻撃には慣れるものです。そのために交代でリズムを変えたり、戦い方に変化を加えたりします。
その上で、残り数分になったときにパワープレーが有効だとチームメイトと判断し、かつ僕のポジションをカバーしてくれる選手がいるときに限り、監督とコミュニケーションを取って上がっていました。そのため、相手に退場者がいて、あまり攻めてこないときにはパワープレーをしかけやすい状況でした。
いずれにしても、監督や選手は相手の選手、味方の選手、試合の流れ、残り時間を考えながら、90分の中でいろんなことを考えていろんなことを試しています。パワープレーもその一つに過ぎません。
負けるといろんなところに原因を探したり、戦犯を探したりしますが、サッカーはなかなか得点が入らないスポーツであり、何をしたら点が取れるなんていう特効薬はありません。あらゆることにトライしてやっとこじ開けたゴールだからこそ、選手は1点に感情を爆発させ、見てる人の感動を呼ぶのだと思います。