池袋事故:「脱法ハーブ吸った直後に運転した」供述
毎日新聞 2014年06月24日 23時54分(最終更新 06月25日 01時06分)
24日午後7時55分ごろ、東京都豊島区西池袋1のJR池袋駅西口近くの路上で、歩道にRV(レジャー用多目的車)が突っ込み歩行者を次々とはねた。警視庁池袋署によると、20〜30代の男女7人が巻き込まれ、うち20代の女性が死亡、男女3人が重傷を負い、残りの男女3人が軽傷を負った。同署は運転していた飲食店経営、名倉佳司(なぐら・けいじ)容疑者(37)=埼玉県吉川市高久1=を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で現行犯逮捕した。
同署によると、名倉容疑者は「脱法ハーブを吸った直後に運転し、人をはねてけがをさせたことに間違いない」と容疑を認めているという。「車内に脱法ハーブが置いてある」とも供述しており、車内を検証する。
脱法ドラッグは、麻薬のような幻覚や興奮作用があるのに法規制の対象になっていない薬物。過去にも脱法ドラッグが原因とみられる事故や事件が相次いでいる。
今回容疑者が「吸った」と供述している脱法ハーブもその一つ。乾燥させた香草に薬物を添加したもので、大麻に似た鎮静作用がある。このほか粉末状の「パウダー」や液状の「リキッド」もあり、これらは覚醒剤同様、興奮作用がある。ハーブと称しながら、パウダーなどのように覚醒剤に似た成分が混入しているものもある。
薬物依存症の原因物質について、国立精神・神経医療研究センター(東京都)が2012年に実施した調査では、脱法ドラッグが覚醒剤に次いで2位となり、乱用者の激増を裏づけた。統合失調症のような幻覚・妄想状態が続くケースは、脱法ドラッグ乱用者の半数近くに上り、覚醒剤患者を上回る。このため、一過性の問題行動にとどまらず、深刻な健康被害につながる危険性も指摘されている。
同センターの舩田正彦依存性薬物研究室長は「脱法ハーブを吸うと、意識がもうろうとする意識障害や、体に力が入らないなど、運動機能にも問題が生じる。各地で今回同様の事故が起きているが、吸引後の運転は非常に危険」と指摘。そのうえで「4月の改正薬事法施行で所持や使用も処罰されるようになったが、規制対象外の脱法ハーブでも、強力な効果を持つものがある。社会に危険性を認識してもらうことが重要」と話した。【江刺正嘉、林奈緒美】
◇脱法ドラッグが関係したとみられる最近の主な事件・事故
<2012年>