◇全米女子OP<最終日>
▽22日、米ノースカロライナ州パインハースト パインハースト・ナンバー2(6649ヤード、パー70)▽曇り後晴れ、気温33度、弱風▽賞金400万ドル、優勝72万ドル▽71選手
【パインハースト(米ノースカロライナ州)テッド・ムース】2日目から首位を走っていたミシェル・ウィー(24)=米国=が最終ラウンドを70で周り、メジャー初優勝を飾った。16番をダブルボギーにして2位のステーシー・ルイス(同)に1打差まで迫られたが、17番で6メートルのバーディーパットを決め、勝利を決定づけた。通算2アンダー、米女子ツアーでは通算4勝。横峯さくら(28)=エプソン=が通算4オーバーで7位タイ。アマチュアで16歳の橋本千里(愛知・ルネサンス豊田高)は22オーバーの68位だった。
最大のハイライトは17番でやってきた。16番で第2打を荒れ地に打ち込んでアンプレヤブルにし、ダブルボギー。ホールアウトしていたルイスとの差が1打になった。この状況で迎えた17番パー3。6メートルのバーディーパットを「これまでのキャリアで最高のパット」で真ん中から沈めた。大きなストライドでカップに近づきながら、気合を込めて右手で大きく2度ガッツポーズ。女子ゴルフ界で長く語り継がれそうな名シーンとなった。
「信じられないほどうれしい。トロフィーに名前が刻まれたことが一番大切なこと」
前週、同じ会場で行われた男子の全米オープン最終日、最終組のマルティン・カイマー(ドイツ)とリッキー・ファウラー(米国)のプレーをロープの内側で観戦した。ファウラーからは、コースの攻略メモをちゃっかり写させてもらった。その成果が、4日間通して3パットなしとなって表れた。
波乱に富んだゴルフ人生を歩んできた。幼いころから天才少女と呼ばれ、モデル並のスタイルのよさと男子顔負けの飛距離で「女性版タイガー・ウッズ」と人気に。アマチュア時代から男子のツアーに推薦出場し、15歳でプロ入りした直後には日本のカシオワールドオープンにも出た(予選落ち)。だが、世界中を引っ張り回された反動からか、プロでは伸び悩んだ。両手首の故障もあり、昨年までは米女子ツアーでわずか2勝だった。
転機は昨年。悩んでいたパッティングを、腰をほぼ直角に曲げるフォームに変えた。当初は「やりすぎだ」とコーチからも酷評されたが、「パットのうまい宮里藍は背が低いから目線が低い」という独自の理論で貫いた。2013年はツアー119位だった平均パット数は、現在3位まで上がった。
苦しんでいたウィーを支えたのは、ほぼ毎試合同行し、この日もコースで見守った両親だ。娘は最後まで感謝の気持ちを口にした。「不調に陥ったときは、周囲の人がもうだめだと言い、私も自分を信じられなくなった。でも両親だけは私が勝てると疑わなかった。私にとって一番のファンです」。殻を破ったウィーのプロ生活第2章が始まった。
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