(2014年6月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
高級材のビルマチークやビャクダンを満載したトラックの隊列が、うねうねとした山道をミャンマーから中国に向けて進んでいく。ヒマラヤ山脈のふもとにある中国雲南省の丘陵地帯では、下手をすると渓谷に転げ落ちてしまいそうになる。
中国に運ばれるこれらの木材の原産地は、ミャンマーの無法地帯・カチン州だ。中国やインドと国境を接するこの州は天然資源が豊かで、事情に通じた第三者や法執行当局者の話によれば、鉱業や林業、麻薬の輸送などにより数十億ドル規模のヤミ経済の中心地になっている。
塹壕戦が繰り広げられる紛争地帯
また、戦闘で疲弊したこの州は、ミャンマーに進出する中国の事業者と、首都ネピドーの準文民政権と和平交渉を行っている百戦錬磨の民兵組織との一種の権力闘争の中心地でもある。
ミャンマー政府と17の少数民族武装組織は、六十数年ぶりの全国規模の停戦に向けた合意文書の草案を作るための話し合いに臨んでいる。アナリストらによれば、ジャングルでの戦闘が半世紀以上続いただけに、カチンを安定させることが優先課題の1つになっているという。
カチンの民兵組織とミャンマー政府の長期にわたる戦争は、17年間の停戦が破られた2012年に再燃。カチン独立機構(KIO)の軍事部門であるカチン独立軍(KIA)にミャンマー軍が大規模な攻撃を加えた。
かつて第2次世界大戦で英米軍と日本軍が戦った山々に、今日ではカチンの民兵8000人が潜んでいる。アナリストらによれば、ここでの紛争は塹壕戦になっており、敵から数百メートル離れた丘の上に陣取ることも多いらしい。
「ミャンマー政府は自分の領土すら支配できていない。だから、我々の地域を短期間で発展させたり改革したりできるなんていうのはおとぎ話だ」。KIOの幹部、ルバン・トーイ・ピ・サ氏はこう語る。
KIOが掌握している町、ライザの近くにある複数の難民キャンプの管理を担当する同氏は、目の前で起きている人道危機の悲惨な状況を描いてみせる。ここでは家を追われた人の数が7万人にも達しており、基本的な抗マラリア薬も不足している。KIOが支配する地域には人道支援もいくらか届きつつあるものの、地元の当局と外国の機関は、本格的な夏になるにつれてもっと支援が必要になるとの認識で一致している。
中国の資本と援助に依存しつつ、中国政府の真意に不信感
ルバン・トーイ・ピ・サ氏のオフィスから一歩足を踏み出せば、この貧しい州が中国の資本と援助に依存していることはすぐに分かる。商店や食堂では人民元が通用する。棚にある商品はほぼすべて中国製だ。また、中国の携帯電話ネットワークが唯一頼りになる通信手段となっている。ミャンマー国内のネットワークはミャンマー軍によって妨害されているからだ。
しかし、このところ急増している中国からの援助にKIOの幹部は懐疑的で、ミャンマーに関わる中国政府の真意に強い不信感を抱いていることを力説した。