台湾反発、大陸側担当官発言「台湾の前途は中国人全体が決める」


 中国政府の台湾窓口部門である国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官が11日の記者会見で、「台湾の前途は「台湾同胞を含む中国人民が共同で決める」と発言したことで、台湾で反発の声が高まった。  11日の記者会見で、新華社の記者が「(民進党所属の)賴清徳台南市長が上海市を訪問した際に台湾独立の問題に触れ、「台湾の前途は(台湾人である)2300万人の人民が共同で決める」と発言したことが台湾の世論の関心を集めています。このことについて、どのようにコメントされますか」と質問。  范報道官は開口一番、「われわれの民進党に対する政策は明確であり、一貫している。われわれの『台湾独立』の分裂の策謀に反対する立場は確固たるもので揺らぐことはない」と主張。続けて、過去の言動にとらわれることはしないと述べ、「今現在、(大陸と台湾の)両岸関係の平和的発展を賛成・支持しさえすれば、大陸に来て交流することを願うならば、成果を上げられるだろう」と説明した。  さらに「このことは強調しておく」と前置きした上で「大陸と台湾は今のところ統一されていないが、中国の主権と領土の完全性は分裂していない。両岸がひとつの中国に属すると言う事実は変化していない。両岸は国と国の関係ではない。中国の主権と領土の完全性についての問題は必ずや、台湾同胞を含む中国人民が共同で決める」と述べた。  台湾の総督府の馬〓国報道官は、大陸側の范報道官の発言を受け、「国家の前途と台湾の未来について「馬英九総統の態度は終始一貫している」として、2008年に中華民国憲法学会年会に出席した際にも、2011年にドイツ誌シュピーゲルの取材に応じた際にも「中華民国は主権を持ち独立した国家であり、台湾の前途は台湾の2300万人が、中華民国憲法にもとづいて決めるべきだ」と発言したと紹介した。(〓は王へんに「韋」)  台湾では、馬英九総統の「大陸寄り路線」に対する批判の声も多い。民進党の主要人物の1人で、陳水扁政権時に台湾における大陸側との窓口機関である行政院大陸委員会の主任委員を務めたこともある呉剣燮氏は、総統府として過去の発言を紹介するだけでなく、馬英九総統が自ら改めて「過去の発言と現在の立場に、どのような違いがあるのか、はっきりと説明すべきだ」と述べた。  馬英九総統については、強引に進めていた大陸側とのサービス貿易協定の締結に反対する学生らが3月から4月にかけて、日本の国会に相当する立法院を占拠した際にも、学生らとの対話をなかなか行わなかったことで、批判が高まった。それ以外にも「肝心な時に、みずからの考えをはっきりと表明しない」と、問題視する声が高い。今回も、考えの表明を「報道官まかせ」にしたことで、改めて批判の声が高まる可能性がある。  台湾紙・アップルデーリーの民意調査によると、范報道官の発言について、台湾人の54.3%が「恫喝だ」と見なし、中国との統一を望んでいない考えを示した。「台湾の前途は、大陸側と共同で決定すべきだ」と考える人は26.96%だったという。 ********** ◆解説◆  国務院台湾事務弁公室(国台弁)は、中国中央政府(国務院)における台湾との窓口機関。設立は1988年。事実上は中国共産党中央台湾工作弁公室(中台弁)と同一の組織。中国大陸側と台湾側は、互いに相手側政府を認めていない。ただし、中国共産党は、政党としての国民党や民進党は認め、国民党、民進党も政党としての中国共産党は認めている。そのため、大陸側は国台弁と中台弁の名称を必要に応じて使い分けている。  台湾側の大陸との交渉窓口機関は、行政院(台湾政府)の大陸委員会(陸委会)。前身が1988年に設立され1991年に正式発足した。台湾では他にモンゴル民族やチベット民族との交流や関連作業を行う蒙藏委員会があったが、2010年には陸委会に吸収された。(編集担当:如月隼人)