別所浩郎駐韓日本大使(左)を呼び出して抗議した韓国外交部の趙太庸(チョ・テヨン)第1次官(23日、ソウル) Associated Press
従軍慰安婦に関する1993年の河野洋平官房長官談話の検証結果を、安倍晋三政権が公表したことに対し、韓国側は強く反発している。
日本政府は20日に「河野談話」の検証結果に関する報告書を公表。韓国はこの報告書が事実をゆがめ、河野談話の信頼性を損なったと非難。韓国外交部は23日、日本の別所浩郎駐韓大使を呼んで抗議した。日本政府は謝罪を含む談話の内容を維持しているが、報告書では日韓両政府が文言をめぐって水面下の駆け引きを繰り返していたことが明らかになった。
この問題が日韓関係の一段の悪化につながれば、米国にとって悩みの種になる可能性がある。北朝鮮の脅威や中国の台頭に対抗するため、米国は東アジアで日本や韓国など同盟国との関係を強化しているからだ。
今回の問題が日韓関係にどれほどのダメージを与えるのか。ソウル大学の日本専門家、朴(パク)チョルヒ教授によると、韓国と日本が外交交渉を実質的にストップしてしまうことが最も懸念される結果の一つだという。
朴教授は「これは現在と将来の日本との交渉に影響を与えると思う」と指摘。韓国政府は、日本が政治目的のために別の水面下交渉の内容を公表することを心配していると語る。
この結果、日韓の協議が難しくなるうえ、両国の仲を取り持とうとする米国の取り組みがより困難になる可能性がある。
朴教授は「これは信頼の問題だ」と話す。
従軍慰安婦問題をめぐる日韓協議は最近になって再開されたが、朴教授は河野談話の検証報告のために協議が当面棚上げされる可能性があるとみている。ただ、協議はいずれ再開されるだろうともいう。
第2次世界大戦と日本の朝鮮支配が終わって70年目となる2015年を前に、関係を前に進めるよう日韓両政府には「大きなプレッシャー」がかかっていると朴教授は語る。来年は日本との国交正常化から50年の節目でもある。当時の両国政府は、日韓基本条約に全ての戦争賠償が含まれることに合意した。
朴教授は、向こう数カ月は「何とか乗り切る」時期になりそうだという。日本の政治家が河野談話の撤回を要求する可能性を含め、韓国政府が東京の動きを注視するとみている。8月15日の終戦記念日も重要で、安倍政権の閣僚が靖国神社を参拝し、韓国側をいら立たせることも考えられるという。
一方、これ以上関係が悪化しなければ、年内に安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談が実現する可能性も否定できないと朴教授は話す。両首脳は就任以来、一度も公式会談を開いていない。
11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など、安倍首相と朴大統領が多国間会議で顔を合わせる機会が年内に数回ある。朴教授によると、両首脳が会議の合間に言葉を交わせるかが前進のバロメーターになるという。