大方の予想では、今年の夏、ソフトバンクが80%株式を支配しているスプリント(ティッカーシンボル:S)がT-モバイル(ティッカーシンボル:TMUS)に買収提案すると見られています。

米国の地場新聞、インベスターズ・ビジネス・デイリーは、この買収総額を320億ドルと見ています。買収資金の半分、160億ドルは借金になると見られています。

既にスプリントは330億ドルの借金を抱えており、一方、T-モバイルは230億ドルの借金をしています。さらに現在のT-モバイルの親会社であるドイチェテレコムのバランスシートに載っている借金のうち56億ドルはT-モバイルに支払い責任があります。

これらもろもろの借金を全部合計すると、格付け機関、ムーディーズは「スプリント/T-モバイルの合併後新会社は75億ドルの借金を背負うことになるだろう」と見ています。

いま、金融機関を除いた、いわゆる高利回り債の発行体で世界最大の企業はソフトバンクであり860億ドルの負債があります。第二位は東京電力です。スプリント/T-モバイルは若し買収が成立すれば第三位になるのだそうです。

ムーディーズの試算ではスプリント/T-モバイルの負債対EBITDA比率は5から5.5倍程度になるとしています。EBITDAとは利払い前・税前・償却前利益を指します。

これに対してAT&T(ティッカーシンボル:T)は2.5倍、ベライゾン(ティッカーシンボル:VZ)は2.6倍です。

スプリント/T-モバイルは4Gインフラ構築が遅れているので、合併後も高水準の先行投資を強いられます。

合併後のスプリント/T-モバイルのEBITDAマージンは20%前後と見られ、これはAT&Tモビリティ、ベライゾン・ワイヤレスの半分以下です。

つまり孫正義氏のグローバル戦略は、超低金利が今後も継続することに賭ける戦略と言えます。ソフトバンクは近く米国に上場される中国の電子コマース企業、アリババの37%株主でありIPOを前に投資家のコンフィデンスは高いです。

このためグループ全体としての借金の多さは、今のところあまり問題にされていません。