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24 Jun 2014 11:35

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?AKB襲撃、黒子のバスケ脅迫、遠隔操作ウイルス、ネットに過剰適応した犯罪者たち

cakes 6月21日(土)17時47分配信

ライターふたりの時事放談、今回取り上げるのは5月に起きたAKB48握手会での襲撃事件。1ヶ月経ち、AKBの総選挙や大島優子の卒業を経てすでに風化しているかのようにも思えるこの事件に対し、「すき家のワンオペ問題と同じ」との発言が飛び出します。また、この事件の犯人を始め、急速に増えつつある「インターネットに過剰適応」した犯罪者たちについて語りあいます。

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●AKB襲撃事件のその後

速水健朗(以下、速水) いま、この原稿をまとめている瞬間って、W杯日本対ギリシャ戦がまさに終わったばかりで、なにもする気が起きないんですけど。

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) はぁ……もうサッカーサッカーサッカーサッカーって。僕は高校のとき体育の授業でサッカーをやる月があって、一ヶ月間、必死にボールを追いかけたのに、ただの一度もボールに触れなかった苦い思い出があるので、W杯の話題はやめましょう。日本戦も見てません。

速水 ちょうどフジテレビの『とくダネ!』が「“日本戦”見ないで何してる?」っていう特集を組んで批判されてたね。見てない人を非国民扱いしているって。

おぐら 正直、あんなに怒る人がたくさんいたことに驚きました。きっとフジテレビもびっくりしたと思いますよ。だって見てない僕ですら「見てない人は何してるの?」って思いますもん。ただあれだけ怒るっていうことは、マイノリティの自覚があって、そこに後ろめたさが多少なりともあるからなんじゃないかなと思います。

速水 W杯じゃないとすると、何か話題ある?

おぐら AKB48はここ最近いろいろありましたよね。

速水 えー、AKBはいまさらもういいでしょ? 総選挙? 大島優子引退? 他に何かあったっけ?

おぐら ほら、その直前の5月25日に、岩手の握手会で24歳の男がメンバーの入山杏奈と川栄李奈をのこぎりで切りつけるという大事件が起こったじゃないですか。

速水 忘れてた! でもさ、この問題、思ったよりも引きずらなかったというか、事件直後には、AKBビジネス自体の崩壊くらいに大げさに言ってた人が多かった割に、それ以上の議論にはならなかったよね?

おぐら たしかに。握手会イベントは様子見的に中止になったり、AKBが出演するCMの放送が自粛されたりとかはありましたけど、収束までは早かったです。

速水 直後の6月7日に、フジテレビがほぼ5時間にわたる総選挙の生放送を控えていたから、総選挙中止とかいうセンシティブな話にはできなかったっていうところだろうね。日本社会全体が、そういう空気を読んだ感じもしたなあ。

おぐら AKBという存在が、もはやアイドルの枠を超えた大きな存在になってますからね。たった一人の反乱で、その活動全体に影響を与えるということがもはや許されないというか。

速水 テロに屈してはいけないという、対テロの原則からいってもそうあるべきなんだろうけどね。とはいえ、アイドル活動を行っている人たちにとっては、他人事ではないよね。ファンとの接触という行為のリスクが高まったわけだから。

おぐら 襲われて頭を切られたメンバーたちも、「握手会は危険だと思ってました」「これからはもうやりたくありません」なんて絶対に言えない。

速水 平気ですって言うしかない。

おぐら 実際、川栄がレギュラー出演している『バイキング』で「めっちゃ元気です」って報告してました。

速水 この問題って、すき家のワンオペ問題と根は同じなのかもしれない。深夜に1人で強盗におびえながら、たくさんのタスクを抱えて仕事をしなくてはならない。すき家は、例え強盗に入られても、人員を増やすよりも安くつくからって、ワンオペの労働環境を改善しなかった。同じように、今回の握手会襲撃事件も、結局のところ続行という可能性が高そうだよね。

おぐら 今後は手荷物の持ち込みが禁止されるという話は出てましたね。その代わり、この原稿がアップされる日に行われる、乃木坂46の握手会で荷物の預かりが有料で1000円になったのが話題になっていて、転んでもただで起きない秋元康の新AKB商法だって。

速水 すき家もAKBもデフレ時代に適したビジネスモデルとして登場して成功したという共通点がある。でも、すき家の場合、ちょっと景気が底上げされてきたら、人手不足になって、誰もすき家でリスクを背負ってまで働かなくなった。そこは、アイドルはそうはならないというか、アイドルになりたいという人たちは、まだたくさんいるだろうからね。

ネットに過剰適応した犯罪者たち

おぐら この事件の犯人って、結局AKBのコアなファンというわけではなくて、メンバーなら誰でもいいって供述してるんですよね。

速水 この事件がすでに風化しつつあることがまさに象徴的なんだけどさ、遠隔操作事件のゆうちゃんが、冤罪かと思いきや釈放後に真犯人だったことがばれた事件とか、ちょっと前に、「ヤフーチャット万歳」と叫びながら警察に連れて行かれた、柏市の通り魔事件だとか、黒子のバスケの脅迫事件だとか、鬱屈したネット住民が犯人という共通点を持つ事件が立て続けに起こっている感じはするよね。来年くらいには、誰がどの事件の犯人だったかとか、すべてごっちゃになってそう。一方で、ネット時代の闇として語られる対象になっていくのも間違いない。

おぐら でもそういうことを言うと、「ごく少数の異常者と一緒にするな!」「事件を起こさない人間がほとんどだ!」という声がすぐさま上がって、よほどの覚悟がある人じゃないと語れなくなり、議論として発展しない可能性も大いにあるんじゃないでしょうか。となると当事者が語るほうがまだ有効で、『創』という雑誌に黒子のバスケ脅迫事件の犯人による、裁判の冒頭陳述のほぼ全文が掲載されているんですよ。

速水 「反省するくらいでしたら、初めからやりません。また謝罪も致しません」ってやつね。

おぐら 記事によると、犯人は黒子のバスケの作者に個人的に恨みがあるというわけではなかったらしいんです。自分が「手に入れたくて手に入れられなかったもの」を持っている作者に「せめてもの一太刀を浴びせてやりたいと思ってしまった」と。で、その手に入れたかったものっていうのが「上智大学の学歴、バスケマンガでの成功、ボーイズラブ系二次創作での人気」だと。

速水 上智受けたんだ。うーん、上智大学なんて誰でも普通に落ちるよね。それでいちいち恨まれたんじゃ、どうしようもないというか。

おぐら 格差社会が動機とかいうのとも違いますよね。あと彼は、こんな発言もしています。「自分のように人間関係も社会的地位もなく、失うものが何もないから罪を犯すことに心理的抵抗のない人間を『無敵の人』とネットスラングでは表現します。これからの日本社会はこの『無敵の人』が増えこそすれ減りはしません。日本社会はこの『無敵の人』とどう向き合うべきかを真剣に考えるべきです」って。挑戦状っぽいですよね。

速水 その辺の挑戦的な感じや万能感は、昨今のネット犯罪者の共通点といえるかもね。俺が気になったのは、「自分は在日ではない」という声明ね。2ちゃんねるで犯罪者が皆在日朝鮮人扱いされるという流れを、予め先回りして反論しているの。こうした態度を見ていると、彼は「無敵」だから破れかぶれで犯罪を犯したのではなくて、単なるナルシストでしかない。つまり、彼にとっての華やかな舞台は2ちゃんねるで、そこで犯罪者としてスレが立つことが英雄的な行為だと思っているというか。

おぐら “目立ちたい”って、ほんとネット文化によって表出した人間の闇ですよね。昔だったら、そういう妄想は机の引き出しの中のノートにだけ記していたんでしょうけど、それがネットで発信されてしまう。

速水 あと、2ちゃんねる的なコミュニケーションに、過剰なまでに適応してしまっているんだよね。こういう書き込みには、こういう反応で返すみたいな、ネットの中で定番化している暗黙のルールの延長で冒頭陳述が発せられている。

おぐら ネットでどう書かれるかみたいなことが、予め想定できてしまう時代ですからね。そういうことに自覚的な世代がこれからも増えるのは間違いない。

速水 けどね、おぐらくんの言うとおりネットで英雄になる願望を持って犯罪に走る人たち、つまりネットでのツッコミ、罵倒のコミュニケーションに過剰適応した自意識過剰な犯罪者って、これからも生まれるんだろうけど、一方で、ネットがあったからそこに居場所を見つけて犯罪を犯さなかったいう人たちがその犯罪者の何十倍もいるであろうことも間違いないんだよね。

おぐら 何十倍どころじゃないですよ。でも「おれはネットに救われた」的な美談よりも、よりインパクトのある負の側面のほうが拡散されやすいのもまたネットの特性であり……。結局は人間関係とも同じで、どう付き合うかはその人次第っていう当たり前の結論になっちゃいますね。

おぐらりゅうじ / 速水健朗

最終更新:6月22日(日)3時8分

cakes

 

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