木
19
6月
2014
月刊「東京人」
月刊『東京人』という雑誌の7月号で「ガロとCOMの時代」という特集がされていて、つげ義春のロングインタビューも掲載されていたので購入したが、つげ義春のインタビュー内容がすさまじい。
前々から噂にはなっていたが、ひきこもり歴20年の息子さんに関する話が中心で、息子さんは現在統合失調で障害年金給付者ということ。ただ、つげ義春自体は、奥さんも死去してひとりぼっちなので、ひきこもりの息子と一緒に住んでいることに何の辛さもないようである。
「もし息子が元気であれば、とっくに結婚をして家を出て、私は一人になってしまう。そうなったら、私は一人で生きていけなくなる。息子は今、親孝行しているかと思っています。意識的な隠遁するときの孤独とは別で、日常における一人暮らしは生きられない。(つげ義春)」
ひきこもりや統合失調症でも、年金生活など日常生活を送っている独居老人にとってはひきこもりやダメ人間がものすごく重要な存在であることがわかる。
それから、息子さんの現実離れの記事を読んでいて気づいたのは、ひきこもりや現実感覚のまったくないといわれている人は、一方で恐ろしく合理的・論理的であることがわかる。
「息子は20年間他人との関係がなく、友だちも一人もいないですから、この現実社会をまったく理解できず、そのため物事の認識や判断が現実離れして、別の世界に住んでいるような状態なんです。でも、何かと現実的な情報が入ってくるので戸惑い、疑問だらけになり、私に質問攻めをするわけですが、現実を知らないからひたすら合理的、論理的な答えでないと承知しない。たとえば、現実の世界には曖昧さやいいかげんな面が混じって理屈では割り切れないものなんだ、という答えでは納得せず、そういう曖昧な現実こそ間違っていると反論してくる(笑)息子はニーチェを知らないのにニーチェと似たような直感があるようで、そのために虚構の現実に違和感を覚え、疑問だらけになり、しかも現実の経験がないですから、ひたすら理論だけに傾いているんです。
でも実際の息子は現実レベルの知識が欠如していますから、すごい幼稚で世の中には運や偶然があることを説明しても認めない。マンガも僕のようなマンガは理解できなくて、相変わらず「ドラえもん」とかを読んでいます。映画にしてもストーリーがないもの(論理的でないもの)は息子は理解できないようです。(つげ義春)」
これは自分の知り合いで思い当たることがある。ゲームマニアが典型的で、それだけ戦略的で頭がいいのに、現実に起きることはまったく理解できないような。ゲームにバグが起きるのはおかしいけど、本当の現実はバグだらけで、そういうバグだらけの現実はゲームと違って不条理で虚構であるというかんじ。ブラック・スワンがよくわからないのだよね。「世界は完璧だ」というようにディズニーのような魔法の現実世界に住んでいる。
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