最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
2014年2月1日より、渋谷ユーロスペース

6/22/2014

「河野談話」検証報告という外交上の自爆行為


安倍晋三さんは高校生の時に強姦事件を起こしている、という噂があるらしい。

この書き出しを見て怒り出す人も、安倍政権があまりにデタラメなので筆者もついに気が触れたか、と思う人もいるだろう…が、ここにはあくまで、そういう噂があるという事実が、「らしい」という不確かな伝聞で書いてあるだけだ。

そう言えば安倍さんが前に首相の時は自分の一身上の、病気でやめたはずなのが、自分で辞任会見はやっちゃうわ、復帰しても悪びれる様子もなく前回の失態の謝罪もしなかったのは、実はたいして重症ではなく、また自分から辞めたのではないからだ、と言うまことしやかな噂もあるそうだ。 
なんでも山口組系からの献金を暴露すると彼の無能を疎んだ霞が関に脅されて、と言うまあこれも永田町で聞く噂だが、そんなのが総理だとしたらどう思います、的な風聞を、あくまで不確かな伝聞と断りつつ…あくまでそう言う噂があるらしい、と僕はお伝えしてるだけですが、どうなんでしょうね、総理にふさわしいんですかね…

いやこれだって言論であまりやっていいことではないのだが、この際これもやむを得ない、というより安倍晋三さんに文句を言われる筋合いはないだろう。

たとえば安倍政権が従軍慰安婦問題の河野談話についてやった「検証調査」だの「報告書」だのは、要するにこれと同じこと、火のないところに一生懸命煙を立てる悪質な印象操作である。

最初は河野談話自体を撤回したかった安倍政権が、それは国際社会…というかアメリカが許さないと分かって、悔し紛れになんとかこの談話の信用性を毀損するイメージを作りたくてやっていること…に見えるのは日本国内で見た場合であって、たとえば朝鮮日報は社説で「河野談話検証は韓日関係の破たんが狙いなのか」と即座に反応した。

朝鮮日報の社説(日本語訳)

そう思われても仕方がないのだが、安倍首相とそのオトモダチ内閣は、この「調査報告」とやらが外交上そのようなメッセージとしてしか受け取られ得ないことに、どうもまったく無自覚なようなのだから恐れ入る。

安倍晋三が中国や韓国などの近隣諸国の関係を破綻させようという意志を持っているのなら狂人だろう。 
だが実際には、彼は恐らく自分のやっていることがそういう意味になってしまうことに気づいてすらいない。 
狂っているというよりも単に愚かなだけなのだが、どちらが危険なのかと言えば、ここまで来ると相当に微妙な問題である。

それに安倍がどんなに駄々をこねようが河野談話は撤回も修正も出来なかったのだから、そもそも意味がない「調査」だ。そんなに撤回したかったら、この調査をやってから「撤回する」とか言えばまだ筋が通るのに、この総理大臣のやっていることはまるで子どもだ。

客観的に、普通の国際標準で考えれば、こんな報告書を出したところで、悪意の印象操作以外の動機が見当たらない。まさか安倍晋三とそのオトモダチたちが悔しかったから、それをなだめるために国費を浪費だなんて、常識では考えつかないことだ(それだけ日本の政治状況が非常識になってしまっている、ということだでもある)。

報告書は冒頭で「河野談話に問題はない」と結論づけながら、延々とその結論を否定するわけではないが恣意的な引用で河野談話の印象を悪くするのには使える記述が、延々と21ページも続くそうだ

その意図を問われれば安倍政権は「いや河野談話は継承すると言ったはずだ」と言い張り、「ちゃんと問題はないという報告書を作ったじゃないか」とうそぶくのだろうが、もちろんそんなのは真意ではない(だったらそもそも調査自体やる意味がない)。

靖国神社に参拝するのだって、この人たちの場合はもはや英霊だ戦死者だのではなく、中国や韓国に反発され「サヨクのマスコミ」に叩かれる、そこへの対抗としてやっているだけだ。

なんとかケチをつけたい、というのがあまりに子どもじみている。

だからこそ、事実関係の再確認自体は、この談話の文責を負う河野洋平元官房長官自身が「足すべきところも引くべきところもない」というその通りだとしても、導き出されることを狙った恣意的解釈の方には多いに問題がある。

たとえば慰安婦の徴集に強制性があったとみなす結論が、元慰安婦の生存者16名の証言を取る前からほぼ決まっていた、と言われると、あたかも証言の信用性が薄いか、事実を証言で確認する前から決まっていた政治的結論だったかのようにとることも出来る。

もっとも、まともな常識があればそんな憶測は一笑に伏されることだろう。歴史学的な見解として、朝鮮人慰安婦の多くが強制で慰安婦にさせられたことは定説だったから、それを覆すような他の結論には、国家の名誉にかけて至りようがなかったのだ。

というか歴史学上の定説以前に、そんなのは戦後昭和40年50年代くらいまでは、日本人の常識だったわけだし、植民地宗主国の軍隊に植民地の女性が性奉仕をしていたという状況だけで、「強制はなかった」なんて言ったら国際的な常識ではモノ笑いのタネである。

河野談話の発表前に日本政府が韓国に文案を提示して非公式の外交上の折衝があったことも、いかにも安倍晋三さんとそのオトモダチたちが言いたくてしょうがないことのようだが、仮にも国の公式見解を出すのだから、そのように万全を期すのは当たり前の外交上の手続きだ。

せっかく公式談話で慰安婦問題の一応のカタをつけようと言う時に、かえって諸外国の不信を買ってしまっては外務省はどこまで怠惰で無能なのか、という話になる。

それどころか、普通に読めば報告書は日本側が当初どれだけ愚かだったのかまで明らかにしてしまっている。どうも日本側が強制の事実は否定のしようがないので、「すべての慰安婦が強制だったわけではない」とする文言を入れたがっていたらしいのだから呆れる。

そもそも日本国の責任が問われるのは強制されて慰安婦になった人がいたのが日本国家による人権侵害だったことであって、全員が強制であったかどうかなんてまるで問題ではないただの詭弁…にもなっていない。子どものいいわけだ。

ちょうど都議会で女性議員に「(子どもが)産めないのか」とヤジが飛んだことが問題になっているが、安倍晋三氏は「自民党の議員が言ったという証拠はない」、石破幹事長の「自民党議員と特定されたわけではない」とお茶を濁しているが、これも似たような心理に基づく子どもの言い訳だ、としか言いようがない

仮に一部の慰安婦だけが強制されたのであっても、それでも日本国家の責任は日本国家の責任なのだ。しかも「一部」であったはずもない。

安倍晋三のオトモダチのなかには、慰安婦は売春婦だったのだ、と言い張る人がいる。朝鮮の娼婦が慰安婦になった、職業売春婦だったら強制ではなかったはずだ、と言いたいらしいのだが、職業売春婦だって仕事の条件や、筋のいい客か悪い客かは当然気にするし、どこで仕事をするかによって客筋は変わる。

日本軍の兵士がそんなにいい客筋だったとは言い難い(将校クラスならともなく)し、まして軍専属の、前線に近い施設で軍に縛り付けられての売春業なんて、プロだったらまず避ける話だ。

安倍晋三氏とその周辺が言いたがっていること、この河野談話に関する調査報告で匂わせたがっていることは、彼らの内輪でしか通用しない理屈にしか基づいていない。いやこの調査をやらせたことも含めて、彼らにはこういうこと自体を日本社会や国際社会がどう受け取るのか、特に実際の慰安婦問題の被害当事者である人たちからはどう見えるのか、をまったく考えていないのである。

これでは子どものお遊びである。

ちなみに冒頭で書いた安倍氏に関する噂は「あるらしい」ではなく、本当に永田町方面ではかなり飛び交っている話だ(噂があることは誰も否定出来ないだろう)。 
むろん事実だとしても岸信介の孫だから警察に訴えても握りつぶされるし、被害者は金を渡され泣き寝入りだろう。だがそんな事件を起こせば、さすがに早稲田慶応レベルの私学は、いかに岸信介の孫でもそんなのを入学させるわけにはいかず、安倍さんの学力でもなんとか入れた成蹊大に、と続く。 
まあことの真偽は(北朝鮮の先代の指導者に関する変な噂とも同様に)無論定かではないが、このような “根拠” の方が、この報告書を安倍政権がなんとか河野談話の信用失墜・無効化につなげようとしていることであるとか、そのオトモダチ連中が慰安婦に高額の報酬を約束するとした募集広告を引っぱり出して来ることよりは、まだ遥かに説得力がある。

もうひとつ、実は長期的に考えれば日本の外交にとってもっと大きな損害が、この報告書を公表してしまったことにはある。

実際には河野談話について韓国など他国の外交当局と折衝していた(韓国が推計でもっとも慰安婦にされた人が多く、また90年代に最初に名乗り出たのも韓国の女性たちだった以上、韓国が最大の相手国になるが、慰安婦制度の被害はインドネシアでも生存者が存命中など、日本が戦地を拡散し支配した各地で起こっている)としても、それは非公式折衝である。

外交の当然のルールとして、他国との非公式折衝はオープンにしないことが最初からの約束であり、だからこそおおっぴらには言えない想定も含めてあらゆる可能性をぶつけ合って、首脳レベルの交渉の下準備をするのが外交当局の役目だ。その内容を相手国に断りなく公表してしまうのはルール違反であるだけではない。双方の国家機密の暴露なのだ。

日本はこの報告書で、韓国と日本双方の国家機密であることを公表してしまった。これだけで韓国政府を蔑ろにした攻撃的な行為とみなされるだけではない。日本と外交関係を持つあらゆる国が、日本は絶対に明かしてはならない外交官同士の紳士協定を平気で破る国だと判断していることだろう。

それこそ非公式折衝で伝える自国の機密レベルの情報などを日本相手に共有することは大いに警戒されて当たり前になってしまう。

あまりにも滑稽なのは、まさにそうした事態を阻止することが目的のはずで安倍晋三政権が物議を醸して採決を強行した法律が、特定秘密保護法だということにある。

外交上の非公式・秘密交渉の内容の暴露が処罰対象でないのなら、この法律をなんのために作ったのかすら分からなくなる。当然、真っ先に国家機密扱いされるべき内容なのだから。

まだ細則が決められず施行されていないこととはいえ、安倍晋三氏が主犯になって、自分達が必死で決めた特定秘密保護法に違反してしまったのがこの河野談話をめぐる報告書騒動なのである。

この河野談話に関する報告書のもうひとつの問題は、日本国の威信を思いっきり毀損してしまったことなのだが、それは先述の朝鮮日報の社説の結論で、僕なぞとても適わない皮肉たっぷりで指摘しているので、そのまま引用しておきたい。

韓日間の外交交渉について、安倍政権は何か「取り引き」でも行われたかのように事実を歪曲(わいきょく)している。安倍政権が今になって「外交交渉を経て日本政府はやむなく河野談話を発表した」という印象を持たせようとしているのなら、これは日本による外交の独自性を自ら否定することにほかならない

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