刑事司法制度全般の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会の会合が23日開かれ、法務省が他人の犯罪を明かせば処分を軽くする「司法取引」の導入などを盛り込んだ新たな試案を示した。特別部会は今夏をメドに結論を取りまとめる方針で、法制審の答申にも盛り込まれる見通し。
司法取引を巡っては、捜査を撹乱(かくらん)する目的の虚偽の供述などが出やすくなる恐れから、日本弁護士連合会などの反発が根強い。
同省は来年の通常国会で刑事訴訟法など関連法の改正案提出を目指すが、答申では、こうした懸念に配慮した表現がとられる可能性もある。
司法取引は捜査当局側が導入を求めている新たな捜査手法。
試案では、容疑者が共犯者の犯罪を供述した場合、検察官が起訴を見送ったり、略式起訴にとどめたりできるほか、求刑を軽くすることを可能にする。汚職や詐欺、金融商品取引法違反といった経済事件や、組織が関与するケースが多い薬物犯罪などを想定。検察側と弁護側の合意が適用の条件になる。
容疑者が捜査機関の知らない自身の犯罪を明らかにした場合にも刑を軽くできるようにする仕組みや、犯罪内容を正直に証言した証人は刑事責任を追及しない新たな免責制度も導入する。
司法取引は海外で広く活用されている捜査手法の一つ。米国やドイツは対象犯罪を限定せず適用し、英国では重大な犯罪に限るといった運用上の違いはあるが、いずれも事件解決に向け重要な供述を引き出すのに使われている。特別部会は今後の議論を通じ、今回の試案を最終案とする合意形成を目指す。
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