保育所の建設が、地元住民の反対で難航するケースが相次いでいる。「騒音」などへの懸念が理由だ。

 関係者で丁寧な話し合いを積み重ね、お互い譲れるところは譲って、子どもが安心して過ごせる「地域に根ざした保育所」を増やしていきたい。

 働きながら子どもを育てる家庭にとって、保育所は欠かせない。ただ、数が足りず、昨年4月時点で全国で2万3千人の待機児童がいる。国は17年度末までに40万人分の保育の受け皿を確保する計画を定めた。

 ところが、実際の建設にあたって、保育ニーズの高い都市部で事業者が周辺住民から理解を得られない事態が生じている。子どもの声がうるさい、送迎時の車で渋滞や事故、路上駐車が発生する――。そんな懸念が示されている。

 車に対する心配には、事業者側が路上駐車を規制したり、駐車場を用意したりするなど、防止策を工夫する必要があろう。送迎時の混雑も、保護者が路上で長々と立ち話をしたりしないよう、ルールを決めて住民に約束することで、折り合える点はあるはずだ。

 問題は子どもの声である。二重窓ガラスや防音壁を設ける方法はすでに一般化している。プールや園庭で子どもたちが歓声を上げないよう気をつけている保育所もある。

 だが、「騒音防止」のため、子どもたちを半ば閉じ込めておく結果になるとしたら、せつない。地域に子どもたちの声が響くのは、そもそも自然なことではないだろうか。

 ひとたび保育所が建てられれば、そこは子どもが毎日を過ごす「居場所」だ。周辺住民からも温かく見守ってもらえるような環境が子どもには望ましい。親にとっても、子どもの育てやすさに直結する。

 住民と保育所の子どもが触れ合う機会を増やすのは、地域の寛容さを育むひとつの方法だろう。保育所にいるのが「見知った子どもたち」であれば、その声にもおおらかになりうる。

 事実、保育所を地域活動の拠点に提供したり、保育所のイベントに住民を招いたりして、当初の住民の反発を乗り越えたところもある。

 保育所と住民との関係の構築は、地域づくりそのものだ。都市部の課題である「人のつながりの希薄さ」を打破するきっかけともなるだろう。

 自治体も積極的に関与してほしい。子どもたちの声が響く地域は、多様性を包み込む力を持っていると言えるのだから。