ISIL:イラク西部で攻勢 ヨルダン国境検問所を制圧

毎日新聞 2014年06月23日 11時12分(最終更新 06月23日 12時22分)

イラク・ファルージャ市内をパトロールするイラク・レバント・イスラム国(ISIL)のメンバー=21日、AP
イラク・ファルージャ市内をパトロールするイラク・レバント・イスラム国(ISIL)のメンバー=21日、AP

 ◇ケリー米国務長官「中東地域全体の脅威に」

 【カイロ秋山信一】イラクとシリアで勢力拡大を続けるイスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」は22日、イラク西部で攻勢を強めている。新たにアンバル県ルトバや、ヨルダンとの国境にあるトゥライビルの検問所を制圧した。AP通信が報じた。ISILの勢力はアンバル県全域に拡大。ヨルダンは、北方のシリア国境と東方のイラク国境で紛争地と隣接する事態となり、ヨルダン政府や同盟国の米国などが警戒を強めている。

 ISILは、イラクからシリアなど地中海東岸地方にまたがるイスラム国家の建設を目指している。エジプトを訪問したケリー米国務長官は22日、シシ大統領やシュクリ外相と会談し、ISILが中東地域全体の脅威になっているという認識で一致した。

 さらに、ケリー氏はスンニ派が多いアラブ諸国から慈善活動への寄付名目で、ISILなどスンニ派過激派勢力に資金が流れているという疑惑を指摘した。

 AP通信によると、ISILは22日、ユーフラテス川沿いにあるアンバル県の二つの町を掌握する一方、シリア国境では21日のカイムにある検問所に加え、アルワリードの検問所も新たに制圧。シリア東部とイラク中部を結ぶ幹線道路を押さえつつある。

 中東のテレビ局アルジャジーラによると、アンバル県では地元のスンニ派部族もISILに同調し、政府側への攻撃に加わっているという。政府軍報道官は、ISILのアンバル県での進攻を認め「政府軍は戦術的に撤退した」と主張した。

 ケリー国務長官は22日、主にイラク情勢を協議するため、中東、欧州の歴訪を開始。エジプトでの会見で「米国は指導者選びに関与する立場にはないが、イラクの全国民を代表し、幅広い勢力に融和的な政府が望ましい」と述べ、シーア派を偏重し宗派間対立を招いているマリキ首相に不満を表した。

 ケリー氏は22日夜にヨルダンを訪問。27日までの日程でブリュッセルやパリを訪問し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や湾岸諸国とイラク情勢などを協議する。AFP通信によると、イラク訪問の情報もある。

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