「愛の傘」を丁寧に差し込む生徒たち=福井市の福井鉄道赤十字前駅で
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突然の雨に困った人が使えるよう、駅などに傘を置いて無料で貸し出す「愛の傘」運動。福井市宝永4丁目の仁愛女子高校ボランティア委員会が取り組み続け、8月で丸7年になる。傘が返却されず、補充を繰り返してきたが、「きりがない」と打ち切りを検討している。
愛の傘運動は二〇〇七年、突然の雨でずぶぬれになったお年寄りを見た生徒の声から始まった。委員会の会計から費用を捻出し「愛の傘」などのロゴを入れた傘を新調。市内で人通りの多い四カ所に計二百本設置した。
一カ月後、傘は元の一割ほどに減少。補充しても次々となくなったが、「なくなるのは使われている証拠だから」と続けてきた。二〇一二年までに累計六百七十本を設置。返却を呼び掛けるポスターを手作りしたこともあった。それでも今年五月末、愛の傘はほぼなくなった。
十二日には、福井鉄道赤十字前駅に傘置き場を新設。帰宅途中に市街地で傘を借りた人が、住宅地近くに返却できるように配慮したからだ。委員会のメンバー四人は同日、えちぜん鉄道福井駅と響のホールもまわり、オレンジ色の愛の傘計七十本を置いた。資金を援助する慈善団体「国際ソロプチミスト福井」の三人も見守った。三年の国本莉奈委員長(17)は「みんなが自由に使える傘。ただ、設置場所のうちどこかに返してほしい」。傘の柄には設置場所を記すタグを付けた。
全国各地でも、観光地や街中を中心に傘の貸し出しサービスがあり、返却率の悪さは共通の問題。愛知県豊橋市のNPO法人「ニジカサ」では、店、企業での忘れ物や、家庭で不要になった傘を再利用。二年前から市内の居酒屋や駅など約二十カ所に置いている。利用者が捨てにくいよう、傘に園児や児童が絵を描いているが、返却率は一割に満たないという。
金沢市観光交流課は、二〇〇九年から観光客向けに貸し出しを始めた。市内十七カ所に四百六十本を置き、毎週二回補充。一カ月で約四百本減るという。継続できるのは、JR西日本金沢支社から、一定期間経た忘れ物の傘を譲り受けて使うから。客へのサービスで貸し出すホテルなどの他は、不要な傘を再利用することで取り組み続ける団体が目立つ。
仁愛女子高でも不要になった傘の利用を検討したが、鉄道会社などの協力を得られなかった。学校に残る傘は、あと六十本。次の補充が最後になるかもしれない。愛の傘の存続は、利用者のマナーにかかっている。
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