2014年06月17日

パリに眠る読本たち

『読本研究新集』第六号が刊行された。第3次『読本研究』というべきもの。40代〜50代の中堅が編集委員と事務局を担い、順調に世代継承が進んでいる印象である。読本研究の分野は、若くて優秀な方も多くいて、今後とも期待がもてる。今号は、馬琴特集の観がある。藤沢毅氏の「馬琴研究の現在」も労作である。

 私には、高木元氏のパリ・ギメ東洋美術館所蔵の読本挿絵集についての報告(「江戸読本の往方―巴里に眠る読本たち―」)が興味深かった。江戸文芸研究がグローバル化に対応するには、読本をはじめとする江戸文芸が、海外の人たちにどのようにアピール可能かを模索する必要がある(もちろん現代日本の人たちにもだが…)。

 それには、西欧におけるジャポニズムという歴史的視点と、アニメ人気などのクールジャパンと繋がる現代的視点との複眼的アプローチが求められる。それを考える材料のひとつが、こうした在外文献にあることは疑いない。それらがどのような様態で伝播し、保存されているのかに着目した今回の高木論は、江戸文芸研究の今後を見据えたものと言える。

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