530万人が介護などを必要とする大介護時代。
祖父母や親の介護に追われる若者の存在が今、明らかになっています。
認知症の祖母を介護する高校生の、きょうだい。
介護の不安を誰に打ち明けていいのか分かりません。
学生時代から父の介護を続ける女性です。
介護と学業の両立に悩んだ末国家資格を取る夢を諦めました。
認知症の母を介護する男性は入社したばかりの会社を辞め以来、アルバイト生活を続けています。
介護の悩みや苦しみを抱える若者たち。
その姿を通して支援の在り方を考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
10代、20代で家族の介護を中心的に担っている子どもや若者たちがどれだけいるのか正確なデータはありません。
国は、おととし就業の実態を把握する調査の中で初めて家族の介護を行っているかを尋ねています。
その結果が唯一のデータです。
15歳から29歳で家族の介護を担っていると答えた若者たちはご覧のように17万人余り。
ただ、この調査では誰の介護に、どの程度時間を割いているかなど詳しい実態をつかむことはできません。
共倒れが懸念される老老介護。
働き盛りの中高年の介護離職。
介護を担っている人には年代を意識した支援が大事だといわれます。
子どもや若者の場合介護と学業の両立ができず進学で不利益を被る。
クラブ活動や遊びができない。
さらに希望どおり進路を決められなかったり就職しても会社を辞めざるをえなかったりするなど若者たちの将来の希望キャリアが大きく左右されかねません。
これから社会に出るために必要な学力やスキルを身につけなくてはならない若者であると同時に大切な家族を介護する介護者であること両方を意識した支援が求められているわけですけれども介護に追われる若者の実態は見えにくく適切な支えが届いているとはいえない状況です。
可能なかぎり住み慣れた生活の場で安心して暮らす社会を目指すという方針が打ち出され家族による介護が結果として今以上に求められ子どもや若者たちが介護の担い手になることが増えると見られています。
献身的に介護を行い介護と、そして自分の将来との板挟みになっている若者たちの実態をご覧ください。
学生時代から父の介護を続ける女性がいます。
原島なつみさん、25歳です。
おいしい?
脳の障害から体が徐々に動かなくなる病気の父、保夫さんを介護しています。
今では、寝返りを打つことも声を出すこともできない保夫さんから目が離せないといいます。
介護が始まったとき原島さんは高校生でした。
当時、保育園で働いていた母、真由美さんが介護保険を利用しながら保夫さんの介護を担っていました。
ところが4年前真由美さんが突然倒れます。
大腸にがんが見つかり仕事を続けられなくなったうえ介護もできなくなりました。
当時、大学3年生だった原島さん。
専門知識を身につけ、将来福祉関係の仕事に就きたいと必死に勉強をしていた時期でした。
介護施設や病院に父を一時的に預けることも家族で検討しました。
しかし、介護保険を利用しても金銭的な負担は重く長女である原島さんが介護を引き受けるしかありませんでした。
介護と学業の両立について相談できる人は見つからず夢を諦めざるをえませんでした。
今、原島さんは近くの病院で受付として働きながら父の介護を続けています。
介護で将来を見通せない。
今、こうした若者たちが各地で声を上げ始めています。
この日は、介護をした経験がある若者や、福祉関係者が集まり交流会が開かれました。
若者が直面する厳しい現実。
親の介護を担うことで仕事を辞めざるをえなくなった人もいます。
金井隆彦さん、26歳です。
こんにちは。
若年性認知症の母、邦子さんを4年前から介護しています。
昼夜を問わずはいかいしたりことばのやり取りが難しくなるなど症状が進んでいます。
介護を始めたころ金井さんは就職したばかりでした。
金井さんは仕事と介護に追われる中で体調を崩してしまいました。
休暇を取り母の介護を続けたものの次第に会社に居づらくなったといいます。
金井さんは、父の清隆さんとどうやって介護を分担するか話し合いました。
その結果金井さんが退職し、介護に専念。
収入の多い父が経済的に支えることになりました。
邦子さんの症状は進み今では、息子の金井さんを認識できているかも分からない状態だといいます。
会社を辞めて3年余り。
金井さんは母を介護した経験を生かしていつかは福祉関係の仕事に就きたいと考えています。
今夜は、介護を担う家族の支援について研究を続けていらっしゃいます、日本女子大学教授、堀越栄子さんにお越しいただきました。
よろしくお願いします。
介護しているお子さんの、本当に優しいまなざしが印象的でした。
その一方で、複雑な心もようというのも、うかがえました。
どのように今、ご覧になられましたか?
そうですね。
とっても責任感が強くて、やっぱり親御さんをとっても大事にしていて、本当に一生懸命なんだなというのが伝わってきたんですけれども、やっぱりいっぱいいっぱいになっているのかなっていう印象も受けました。
なんらかの支援がないと、やっていけないんじゃないかなって、これから。
特にこの年代は、キャリア形成をしていく時代ですので、自分の職業生活もそうだし、人生設計もそうだし、そういう支援を届けないと、無理な、介護を続けられるような支援が必要かなと思っています。
こうした子ども、あるいは若者たちで一生懸命介護をしている存在っていうのは、これまであまり光が当たってこなかったように思えるんですけれども。
そうですね。
もともと介護している人っていうのは、わりと見つけられにくいんですけれども、介護している人って4つぐらい特徴があって、一つはやっぱり、家族が見なくちゃいけないというふうに、本人も周りも思ってると。
それから2つ目に、見てるともう、いっぱいいっぱいだなと思って、客観的に見ると支援が必要なんだけれども、本人が気付いていないということや、それからどういうふうにSOSを出したらいいか整理ができていないという、なかなかできない。
それで自分の暮らしや人生の見通しが持てないので、だんだん孤立してしまうというのがあるんですが、かてて加えて若者で見ると、若者が介護をしてるってあんまり社会が思ってないので、そういう目で見てもらえないんですね。
例えば親を、お母さんと2人で半分半分見ていても、補助者っていうふうに見られてしまうとか、社会的な手続きに行っても、お母さんと一緒にいらっしゃいって言われてしまったり、なかなか介護者として見てもらえないっていう特徴があります。
それから自分から何か、本当は言いたいんだけれども、友達に言ってもしかたがないし、聞いてくれる大人がいないし、そもそも言う場がない。
それから、やっぱりちょっと隠しておきたいっていう、病気のこととか、いろんなことが重なって、どうしても見つけられにくい存在でした。
ようやくさっきのVTRにあったように、社会的に発言の場があれば、皆さん、語りたいと、自分のこと分かってほしいというようにようやくなってきたんじゃないかなと思うんですね。
今、リポートにあって、おっしゃったように、キャリア形成の問題や、進学の問題等、抱えている介護者の方々、いらしたわけですけれども、若いときから介護をする人々にとって、最も大きな課題はなんですか?
そうですね。
今の方たちはちょっと年長さんなんで、キャリア形成が大きな課題かと思うんですが、VTRに出た方たちよりももう少し年少の、例えば10代とか、あるいはもう1桁のときから年齢の、介護しているお子さんたちもいらっしゃるんです。
学齢期の方たちですけれども、そういう人たちは本当は大人に守られて、健やかに成長するのが本当は自分の仕事のはずなんですけれども、結構、家事をやったり、それから排せつの世話から移動から着替えとか、いろんなことをやったり、そういう中で自分の時間が全く持てなくて、結局、遅刻したり、欠席があったり、学業がうまく進まなかったり、それから、すぐ帰ってきてねって言われたりする中で、自分の時間が持てないので、お友達と遊べないとか、いろんな経験ができない中で、大人になっていくというのは、本当にそこの子ども時代が奪われてしまうという意味で、また別の問題があります。
本当に自分の心の中が不安でいっぱいなのに、子どもなのに、大人の世話をしているとすれば、本当に誰か聞いてくれる人が欲しいでしょうね。
そうですね。
ただ、自分も言っていいのか分からないし、自分の生活が目の前で精いっぱいなので、なかなか子どもから見つけるっていうのは無理ですから、やっぱり大人社会が何か手を差し伸べられるようなものを作らないといけないんじゃないかなと思います。
さあこの、家族の介護を担う若者たちの問題ですけれども、20年前から国を挙げて支援しているのがイギリスです。
どのように若者たちを支えているのか、ご覧ください。
介護をする人たちを専門に支援する施設ケアラーセンターです。
全国に300か所ほどあり自治体や慈善団体が運営しています。
介護の負担を軽くしたり経済的な支援を受けられないか福祉や教育の専門家などがさまざまな相談に応じています。
イギリスで介護を担う人たちの支援が本格的に始まったのは1995年。
国は、介護者支援法を制定し相談事業や経済的な支援などを大幅に拡充していったのです。
中でも、特に力を入れてきたのは若い世代への支援です。
学業や就職を諦めるなど介護がきっかけで能力を生かせなくなることは社会にとって大きな損失と考えているからです。
介護を担う若者たちは学校での成績が落ち不安定な職にしか就けないなど多くの問題を抱えています。
しかし正しい支援を行えば若者にとってだけではなくイギリス社会全体にとってもプラスになるのです。
ケアラーセンターは介護と両立できる仕事を紹介するなど就職支援にも力を入れています。
メリッサさんです。
祖母や両親の介護に追われなかなか仕事を見つけることができませんでした。
そこで、ケアラーセンターは介護に合わせて勤務を調整できる企業を探し、メリッサさんに紹介。
履歴書の書き方や面接の指導も行い、イベント会社への就職につなげました。
ここに来れば一人ではないと思えるの。
支援のおかげでとても自信がついたわ。
さらにケアラーセンターでは若者たちが抱える問題が深刻になる前に早めに対策を打ち出しています。
介護に悩む学生に目を向けてもらうため学校に配ったパンフレットやDVDです。
「授業に遅刻しがちになる」「勉強に集中できなくなる」など介護を担う学生が抱える問題を示し学校での早期発見を呼びかけたのです。
ケアラーセンターと学校との連携の中で支援を受けることになったケイティさんです。
母と共に認知症の父を介護しています。
かつては介護疲れで授業に集中できず成績が落ち込みました。
さらに、介護していることをからかわれたことがきっかけで友人との関係もギクシャクしたといいます。
孤独でした。
学校で勉強が進まず友達とうまくいかないときもありました。
かなり悩んだり落ち込んだりしていました。
ケアラーセンターは専門のスタッフをケイティさんの自宅に派遣。
面接を繰り返し、どんな支援が必要かをまとめていきました。
ケアラーセンターのスタッフは、ケイティさんと共に学校を何度も訪問。
話し合いの結果授業を受けられなかったときには「ノートを自宅に届ける」「補習を行う」などの支援が決まりました。
さらに、友人たちには介護は家族を支える役目を果たしていると伝え理解を求めました。
ケイティさんは友人たちと以前のような関係を取り戻すことができました。
私は、人の役に立つことをしているんだと思えるようになり安心できるようになりました。
私の夢は父の病気を治せるような人になることです。
今、ケイティさんは医師を夢見て勉強に取り組んでいます。
ケアラーセンターでは今後奨学金制度の紹介や学業に専念するための介護の肩代わりをするなどの支援を検討しています。
適切な支援があれば学校に行けて、友人もできます。
介護の重圧から解放され幸せな未来をつかむことができるのです。
介護している子どもたちにも、耳を傾けて、そして本当にきめ細かな支援を行ってますね。
そうですね。
すごく印象深かったのが、仕事に就けたメリッサさんなんですけれども、仕事に就くことで、自分に自信が持てたっておっしゃってましたよね。
それから11歳のケイティさんも、安心できた、信頼できる大人がサポートしてくれて、安心できて、介護に誇りが持てて、それから将来の夢まで持てるようになったっていう、やっぱり一人一人の人生をきちっと支えるっていう支援がとっても大事なんだと思いますし、具体的に学業についていけるようになったり、それから友達もまた一緒に仲よくできたというこれ、本当にすばらしいことだなというふうに思います。
だから日本でもやっぱり、子どもたちが安心して話ができる、信頼ができる、頼れる大人がいるとか、あるいは自分の体験が自分だけじゃないっていう、そういう話ができるような、今、結構、学習支援はボランティアの人もやってますけれども、そういう場所も出来たらいいなという感じがすごくします。
とにかく遊んだり楽しんだりする場所もすごく必要です。
そうですね。
また日本の場合は、地域包括センターが全国にあって、ケアマネージャーの方が介護、どんな介護が必要かということで、きちっと見守っている体制があるのかなというふうに思ったんですけれども、こうした介護者を支えるシステムが、非常に弱いというのはなぜなんですか?
介護保険制度はもともと、要介護者の人のための制度なので、介護者の方を支えるという構造にはなってないんですね。
確かにデイサービスやショートはあるんですけれども、介護者を直接支えて、要介護者の人のケアプランを立てるのと同じように、介護している人の生活プランのようなものを立てて、支援をしていこうというふうにはなってないので、それはそういう仕組みをやっぱり作っていくっていうことが必要になるだろうなというふうに思ってます。
そうした仕組みを早く作らないと、介護している側が持続可能ではないと、介護される側も本当に安心して介護を受けることができないと思うんですけれども、何が一番必要ですか?
やっぱりイギリスでも結局、要介護者のサービスは介護者のためにもいいものであると。
介護者のためのサービスは、要介護者にとってもいいのだという、そこの認識をやっぱり社会の認識にしていって、それで、法制度できちっとバックアップをするとか、そういうことが最終的には必要なんだろうと思います。
そのためにも、やっぱり社会がちゃんとこう、介護者がいるとか、それから、若くて介護している人、年少で介護している人がいるっていうことをきちっと知らないといけないので、もっともっと社会的な認識を、広めていくっていうことが必要です。
そうすれば、例えば企業でも、若い、入った人がすぐ辞めてもらっちゃうような、のではないキャリア支援をもう少し柔軟にするというような方向にもつながって、いけばいいなというふうに思います。
そして学校でも、学校と介護が両立するような仕組みをもっともっと柔軟に作れるようになるといいですね。
そうですね。
だからあと、学校とか医療機関で、ちゃんと早く見つけてあげて、サービスにつなげると。
そういうことがとっても必要です。
ありがとうございました。
2014/06/18(水) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「介護で閉ざされる未来〜若者たちをどう支える〜」[字][再]
15歳から29歳の若年介護者が17万人にのぼることが明らかに。進学や就業をあきらめ、貧困に陥ってしまうケースも。これまで見過ごされてきた実態とその対策を考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本女子大学教授、日本ケアラー連盟代表理事…堀越栄子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本女子大学教授、日本ケアラー連盟代表理事…堀越栄子,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:29073(0×7191)