横浜市にある県営いちょう団地。
およそ2,100世帯が暮らすこの団地が今日の舞台です。
一見何の変哲もないように見えますが実は全国でも珍しい多国籍団地として知られています。
例えばこちら。
進入禁止の看板は6か国語。
お店に並ぶのはベトナムのフォーに中国のビーフン。
タイのチリソースもあります。
11か国530世帯の外国人が暮らすこの団地では外国人である事が当たり前。
国籍や文化の違いを認め合うコミュニティーとなっています。
しかし団地の外に出ると厳しい現実が待っています。
外国人であるために付きまとう法律や制度の壁。
日本語が堪能でもいわれのない偏見にさらされます。
日本の社会で生きていくいちょう団地出身の若者たち。
それぞれの今を見つめます。
いちょう団地が出来たのは昭和40年代の高度経済成長期。
神奈川県が比較的収入の少ない人でも入れるように建設しました。
それからおよそ10年後。
ベトナムやカンボジアなどから多くの難民が来日しました。
難民の定住を支援する施設が近くにあったため家族を呼び寄せて移り住むようになったのです。
更に中国残留孤児や働き口を求めてやって来た日系ブラジル人も入居しました。
現在世界11か国の人たちが居住。
全世帯の3/3に相当します。
文化や習慣が違っても共に暮らすにはルールを守ります。
自治会の掃除当番には外国人も参加します。
ご苦労さまです。
いつもどうもありがとうございます。
今日は寒いけど頑張って下さい。
はい。
頑張りま〜す。
はいありがとうございます。
団地の行事やお知らせを案内する放送は4か国語です。
この日は学童保育の説明会について。
伝え手は日本語と母国語両方堪能な団地育ちの若者たちです。
団地の若者たちが通ったいちょう小学校です。
この春隣の小学校に統合されました。
私たちはいちょう小学校で多くの事を学びました。
多様な文化を背景に持つ子どもたちを受け入れ支えてきました。
たくさんの思い出を…!
(一同)ありがとう!以前の授業の様子です。
失礼しま〜す。
この日はベトナムから来日したばかりの子どもたちに日本語の授業。
なるほど。
3の時にはね…。
ベトナム語も交えて分かりやすく進めます。
3ぼん。
3ぼん。
(先生)3ぼん。
OK?
(先生)2ぼん!?2ほん。
アオザイというベトナムで着る物です。
5年生の家庭科調理実習です。
クリームソーダ味!それぞれの国でお米をどう料理するのか学びました。
ジャジャ〜ン!出来上がったのは日本のお寿司。
ラオスのおかゆ。
そしてベトナムのおこわ。
違う国の文化も大切にする気持ちを育てます。
…うん!うまい!合う!いちょう小の卒業生シュウ・チュウピンさん16歳です。
両親と妹の4人家族。
9歳で中国から来日しました。
現在高校の国際文化コースで学ぶチュウピンさん。
来日当初は日本語が全くできませんでしたがいちょう小で基礎から学びました。
そして1年半後には横浜市のスピーチコンテストで見事入賞。
今では日本語を中国語と同じくらい流ちょうに話せます。
この2つの国の文化を知れてこういう経験ができて本当にいい経験できたなって…できているなって思いました。
チュウピンさんは団地の放送で中国語を担当しています。
将来は通訳など日本と中国の懸け橋になる職業を目指しています。
(中国語で)やっぱり将来もそういう自分の経験とかを生かして国際的な仕事ができたらいいなって思ってます。
(ホアン)ここの所って怖くてあんまり来れなかったんですけど…。
ベトナム人のグェン・ホアンさん23歳です。
ここ理科室なんですけどいろいろ不気味なんで。
ここら辺はもう全然来なかったんですけど…。
3歳の時ベトナム難民として来日し6年間いちょう小で学んだホアンさん。
当時自分が外国人である事はほとんど意識しなかったと言います。
難民として祖国を離れたホアンさんにとって団地は大切な場所です。
ベトナムといってもそんな記憶にないですし…。
何かいい思い出が多分あったんだろうけども全然覚えてないですし。
子どもの頃からいて上京してそれがふるさとっていうなら自分のふるさとはいちょう団地ですよね。
だって昔から…まあ3歳からですけどそこで育って…。
ホアンさんは1年前から隣町の工場で働いています。
面接での真面目な態度が社長に見込まれ採用されました。
車のシャフトや工作機械に使われる部品などのバランスを測定して修正する仕事です。
ねじの重さを調整します。
(取材者)どうするんですか?削るんです。
100分の1グラム単位の精度が求められるため経験と腕が必要です。
仕事を一とおり覚えるだけで3年はかかります。
(ホアン)あとはここの微調整終わらせれば…。
ホアンさん修業の日々です。
日本のいいとこってやっぱり匠といわれる人がいてそういう人たちで成り立っていると思うのでそういう一人になれたらいいです。
ホアンさんは長年暮らしたいちょう団地を離れ職場近くにアパートを借りています。
(取材者)おっ!意外ときれい…。
意外ときれいですね。
物がないだけ。
高校卒業までは団地で母と妹と暮らしていました。
(取材者)どうしても1人暮らししたかったわけじゃないんですか?ああ…そうですね。
できれば家族と一緒がよかったですね。
いろいろ楽ですし。
1人暮らしは別にしようと思えばこの年だったらできるんで。
仕事もありますし…。
いまだに慣れない1人暮らし。
これやってると本当1時間2時間…。
(取材者)やってるの?やってる。
自分が外国人だと強く意識するようになったのは団地の外に出てから。
アパートを借りるにもカードを作るにも外国人という理由で簡単には契約ができませんでした。
やっぱり普通の…普通の家庭でできる事ができないっていうのは多々あるので…。
やっぱり…。
今ネットで買い物するにもクレジットカードが必要だけどクレジットカードを作るには信用が必要ですよね。
でもその必要な信用って外国人だと壁が更に上がるんですよね。
同じ収入でも外国人だった場合と日本人だった場合は全然違いますし。
そういうとこは残念だなと思いますけど…。
歯食いしばってもう認めるしかない。
もう自分があがいたところでどうにもならないし。
あがいてなんとかなるならあがきますけどそういう事じゃないので…。
週末ホアンさんは必ずいちょう団地に戻ります。
これが1週間の楽しみなので…。
母校のいちょう小で団地の若者たちとサッカーを楽しみます。
ベトナム中国南米日本。
共に育った仲間との大切な時間です。
ラストワンプレー!チームのリーダー役…外国人を支援する団体の代表で20年近く団地の若者たちを見守ってきました。
早川さんは外国人の子どもたちが成長するにつれさまざまな壁に直面する現実を見てきました。
進学や就職の難しさ。
経済的に厳しい家庭が多い事。
一人一人相談に乗ってきました。
団地の中に事務所を構え中高生の受験指導にも当たっています。
国籍に関係なく誰もが居心地よく過ごせる場所を作りたいと考えています。
おお〜!おお〜!分かりやすい!今の分かりやすかったの?すばらしい!やっぱりこうやっていろんな人が集まってきてそこで一緒に過ごす時間…。
自分自身もそういう場があったら行きたかったかもしれないなという気がするし…。
一緒に時間を過ごす空間を作りながらこの町で育ったっていう意識が作れて自分たちがその町を支えていくというような事ができるとすごくいいなと思いますけどね…。
おいしそう!すげえ!毎週サッカーで汗を流したあとは…。
じゃお疲れさまです。
(一同)お疲れさまで〜す!必ず早川さんの事務所で宴会です。
この10年お互いの近況や悩みなど何でも語り合ってきました。
何だ?この緊張感漂う…。
(笑い声)大丈夫か?クラス入っていきなりほかのクラスから「片仮名がいるよ!片仮名がいるよ!」って…。
(早川)やっぱり来たんだ?うん。
来た来た来た。
だから俺も「こうなるんだ!?」って感じだったよ。
あの時は…。
俺はでも結構名前出すまで気付かれないけど。
えっ!?えっ!?えっ!?そうなの!?本当!?本当に…。
本当!?うるせえよ!それは言うんじゃねえよ!おおっ!強えな!「いいだろ?」って。
(笑い声)ホアンさんの同級生です。
よ〜い始め!
(木槌でたたく音)ニャンさんは大手自動車メーカーに勤めています。
専門は自動車板金。
鉄板をハンマー1つで自在に加工する仕事です。
入社して5年。
その高い技術を認められ今は会社の訓練校で若手の指導に当たっています。
今はこの仕事に熱中しているニャンさん。
かつて外国人である事を理由に夢を諦めた事がありました。
高校生の頃テレビで見たレスキュー隊に憧れて消防士になりたいと考えていました。
スポーツは得意で体力にも自信がありました。
しかしベトナム国籍のため消防士の試験を受ける資格すらない事が分かったのです。
ただただ自分で何で駄目なんだろうってのは少しの間は考えてました。
その後この会社に入り板金技術の腕を磨いたニャンさん。
2年目で技能五輪の神奈川代表に選ばれました。
今は指導員として後輩を育てる事に大きなやりがいを感じています。
お疲れ〜。
絞りはちょっと細かく打っていくんだけど気持ちもうちょっと速く振ってもらえればいいんじゃないかなと…。
ふだんは会社の寮で暮らすニャンさん。
週末は団地の実家に戻るのが楽しみです。
こんばんは。
初めまして。
よろしくお願いします。
ニャンさんが来日したのは小学校5年の時。
この中…あっいますよ。
これがホアン。
いちょう小の仲間や早川さんたちがいつも支えてくれました。
今度は自分が誰かを支える番だと感じています。
もっともっと団地の若い子たちだったりもしくは外国人だったりまずは地域のみんなが話し合えるそういう場にもっともっとほかの人に知ってもらう参加してもらうような活動を広めていきたい。
地域のために何かしたいというニャンさんたちに早川さんはある提案をしました。
団地の中に若手の防災チームを作ろうというのです。
通訳ができる彼らなら外国人住民にもスムーズに避難を呼びかける事ができます。
リーダーはニャンさん。
地元の消防署と連携し訓練を続けています。
この日ニャンさんたちの防災チームに日本人の住民から依頼がありました。
ゴミ集積所の修理です。
ホアンさんも駆けつけました。
雪でこう曲がっちゃって。
本当はドアが向こうに…。
これがねほら当たっちゃう。
これが曲がっちゃったから…。
大雪の影響でパイプが曲がり扉が開かなくなっていました。
せ〜の!よいしょ!もうちょい!せ〜の!よいしょ!せ〜の!もうちょい!ニャンうまいうまい!やっぱりね若い力はすごい!すごいですよ。
皆さんすごいなと思いましたね。
日本人よりすごいかもしんないと思いながら…。
一生懸命やってくれてるからね。
すごいですよね。
少しずつこういう場を使いながら関係作りができていくと多分この子たちだけじゃなくてほかの外国籍の子たちに対する見方も少しずつ変わっていくのかなと…。
ジャジャ〜ン!おお〜!
(取材者)どうですか?出来は…?もう完璧ですね。
本当にありがとうございました。
「やるか!」っていう気持ちだけです。
やっぱり喜んでくれるとすごいうれしいです。
どうもご苦労さまでした。
いちょう団地で育ちそれぞれの道を歩み始めた若者たち。
これからもずっと日本で生きていきます。
2014/06/18(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「ふるさとは“いちょう団地”〜地域で生きる新世代外国人〜」[字][再]
10か国以上の人々が暮らす横浜市の「いちょう団地」。今、外国人の若者たちが地域の担い手に成長しつつある。「ふるさとはいちょう団地」という若者たちの今をみつめる。
詳細情報
番組内容
住民の2割以上が外国人という横浜市の「いちょう団地」。アジアや南米など10か国以上の人々が暮らす「多国籍団地」だ。多様な背景を持つ子どもたちを長年支えたのは「いちょう小学校」。卒業後、子どもたちは、進学や就職など日本でどう生きていくべきか悩み、模索するようになる。そんな中、防災や自治会の手伝いなど地域活動を担い始めた外国人の若者がいる。「ふるさとはいちょう団地」という若者たちの今をみつめる。
出演者
【司会】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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