クローズアップ現代「あなたの飲酒 大丈夫?」 2014.06.19

かんぱーい!
ビールのおいしい季節。
でも、あなたの飲み方大丈夫ですか?
飲む量をコントロールできない病アルコール依存症。
きょう、その患者数が全国で推計109万人に上ることが明らかになりました。
依存症になりかねない危険な飲み方をしている人も含めると979万人に上ります。
自分は大丈夫と思っているうちに増え続ける酒の量。
そして気付いたときには…。

最新の研究で依存症は脳自体の変化によって引き起こされることが分かってきました。

いつのまにか進行するアルコール依存。
あなたが、家族が深刻な事態に陥る前にどうしたらいいのか考えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
おいしいお料理に、お酒弾むおしゃべり。
お酒は生活に潤いを与え人間関係を円滑にする効果もあります。
その一方で飲み過ぎると肝臓やすい臓、胃など内臓に影響を及ぼしたり飲酒運転や家庭内暴力にもつながるという負の側面もあります。
酒浸りになり仕事に支障が出たりするなど飲酒を巡る問題を抱える人はアルコール中毒アル中と呼ばれることが多かったのですが現在では飲酒への欲求が抑えられなくなる病気アルコール依存症であると考えられています。
きょう明らかになりました厚生労働省の研究班の最新の調査結果によりますとアルコール依存症の患者の数は109万人。
ご覧のようにこの10年で急増しています。
さらに依存症になりかねない危険な飲み方多量飲酒をしている人たちを含めますと979万人に上ります。
この多量飲酒者とは個人差もありますが日本酒3合あるいはビール中瓶3本以上を毎日飲んでいる人のことです。
コンビニや自動販売機で手軽に、お酒が買えテレビや新聞、雑誌、街なかでも広告が、あふれています。
日本は、お酒に寛容な社会といわれている中で依存症になりかねない危険な飲み方をしている人が大勢いるわけです。
行き過ぎた飲酒から依存症になるのを防ぐためにどんな対策が必要なのか。
アルコール健康障害対策基本法が今月、施行され国はアルコール業界も巻き込んで具体的な計画を今後2年以内に作ることにしています。
初めにアルコール依存症の実態となぜ飲酒への欲求が抑えられなくなるのかご覧ください。

毎週開かれているアルコール依存症の女性たちの会。
働き盛りの会社員や主婦などが体験を語り合います。
仕事や家事をきちんとこなそうとして酒の量が増えていったという人がほとんどです。

自分は大丈夫。
そう思っているうちにアルコール依存症に陥ってしまう人も少なくありません。
去年、アルコール依存症と診断された37歳の女性です。
専門の病院に通い治療を続けています。
女性は看護師として、大学病院の救急外来で長く働いていました。
25歳のころ夜勤の前に仮眠を取るためビールを飲むようになりました。
やがて責任ある立場に就くと重症の患者と向き合うストレスから職場でも同僚に隠れてビールを飲むようになりました。

さらに子どもを産んでからは仕事と家庭を両立させようと一層、気が抜けなくなりました。
1日に飲むビールは、1ダースを超えるようになりました。
異変に気付いた家族や職場の上司から病院に行くよう勧められましたが女性は受け入れませんでした。

結局、女性が依存症と診断されたのは家族や上司から指摘を受けた3年後のことでした。
酒を断つため入院治療が必要となり仕事は辞めざるをえませんでした。

酒が原因で体を壊しても病院で依存症が見過ごされるケースも多くあります。
46歳のこの男性は酒の飲み過ぎで胃や胆のうなどの病気を繰り返してきました。

しかし、いずれの病院でもアルコール依存症を指摘されることはありませんでした。
男性は内臓疾患の治療を受けて酒を飲める体に戻ったらまた飲み、再び病気になるということを繰り返してきました。
3年前、急性すい炎になったとき初めて精神科での治療を勧められアルコール依存症と分かりました。
今は酒を飲むと極めて不快な気分になる抗酒剤を毎日飲みながら治療を続けています。

なぜ多くの人が仕事を失い健康を損なってまでも酒をやめることができなくなってしまうのか。
30年以上、アルコール依存症を研究してきた精神科医の樋口進さんです。
依存症の患者の脳には特有の変化が見られるといいます。

左は50代の酒を飲まない人。
右は30代のアルコール依存症の人の脳です。
左の脳に比べ、右の脳は前頭葉が萎縮した分黒い隙間が見えています。
前頭葉は酒を飲みたいという欲求を抑制する機能があります。
しかしアルコール依存症になると飲みたいという欲求が大きくなるにもかかわらず前頭葉の脳細胞の一部が破壊されて欲求を抑制できなくなるのです。

今夜は、今のリポートにも登場していただきました、国立病院機構久里浜医療センターの樋口進さんにお越しいただいています。
きょう発表されました、厚生労働省の研究班の調査を、中心となってまとめられたわけですけれども、重症にならないと専門医を訪れない依存症の方々が多いんですか?
そうですね、わが国は飲め飲め社会ですよね、酒にすごく甘い。
そうすると、かなりひどくなるまで、社会が許容するんですね。
ですから、医療機関に来るときにはもうかなり重症になっているということがありますね。
しかし周りの方々も、勧めていらっしゃるでしょうね。
そうです、特に家族が大変で、家族は暴言とか、場合によっては暴力があったり、だけれども、本人を医療機関に連れていけないと、怖くて連れて行けないということがあって、そういうこと、家族にとってみれば、もし医療機関に本人が行けば、ずいぶん、助かるんだと思うんですね。
そして前頭葉の部分が依存症の方は縮んでいた。
アルコールが脳に与える影響っていうのは本当に深刻ですね。
そうですね。
お酒はほかの薬物と違ってたくさん飲まないと、酔えないんですね。
その結果ですね、脳の中のいろんな神経系に影響を与えると。
神経系の主に集まっているところというのは、脳の深い部分なんですけれども、この部分に飲みたいとかってそういうふうな欲求の中枢があるわけです。
一方ですね、脳の前のほう、こちらのほうはわれわれの行動を抑制して、我慢しなさいとか、そういう指令を出すところなんですが、これ、お互いに競争し合ってるんですけれども、依存症のように先ほど見たように、脳の神経細胞、前のほうがやられてますと、やっぱり飲みたいという気持ちに負けてしまうということでしょうね。
この依存症というのは治るんでしょうか?
もちろん治ります。
治療すれば、治るわけですが、基本的にはお酒をやめ続けるというのが、治療の目標ですね。
多量飲酒の方々が、依存症にならないように、早く見つけて防ぐということが大事なんですけれども、アルコール依存症の診断基準が、こちらにありますけれども、どんな症状が目安になるんでしょうか?
これ、WHOの診断ガイドラインなんですが、全部で6項目あります。
まず第1ですね、ここ。
どんな状況においても、飲みたいという気持ちが出てくるような、強い欲求ですね。
それから2番目は、お酒のコントロールがうまくできない。
典型的にはアルコール依存症の人の場合には、例えば2、3合の日本酒を、数時間置きにずっと飲み続けて、体がいつも、アルコールが体にあるような状況なわけですね。
これを連続飲酒といいますが、典型的な飲み方です。
ちびちびずっと飲んでいると?
そうです。
それからあと、この離脱症状ですね。
お酒はわれわれの脳を抑制しますので、その抑制状態からお酒がとれて、脳が興奮すると、自律神経が活発になって、手が震えるとか、汗が出るとか、心臓がバクバクするとか、場合によっては眠れないとか、そんな症状が出てきます。
それから、耐性が上昇というのは、お酒に強くなる、たくさん飲まないと酔えないということですね。
それから飲酒中心の生活っていうのは、生活の中にアルコールがいっぱい入ってきてしまっていて、時間だいぶ使うと。
最後はこれはもう、本当に分かっているけれども、やめられないという、そういう状況だと思うんですね。
この項目を、いくつ、心当たりあった場合。
6項目のうち3項目が、過去1年の間に同時に起きたとか、あるいは繰り返し起きてきた場合に、依存症というふうに診断します。
この中で特に大事なのは、この2番と3番でして、飲酒のコントロールがうまくできない。
それは強い欲求があるからなんですが、それとあと離脱症状。
離脱症状というのは、脳の神経細胞がアルコールに依存しているという兆候だといわれています。
さあ、遅れがちになるといわれている、この依存症の診断ですけれども、対策の鍵は、ハイリスクの人たちを早く見つけることです。
その模索をご覧いただきましょう。

先進的なアルコール依存症対策に乗り出している三重県四日市市です。
中心となってきた精神科医の猪野亜朗さん。
40年以上、アルコール依存症の治療に携わってきました。

患者が精神科にやって来るときにはすでに重度の依存症になっていることが、ほとんどです。
そうなる前に発見し適切なアドバイスを与えることができないか猪野さんは模索しています。

猪野さんが目指している早期発見の仕組みです。
さまざまな機関でアルコールへの依存度が高い人を見つけたら精神科医のもとで診察を受けるよう促してもらおうというのです。
この取り組みは三重モデルと呼ばれています。
例えば、その一つが内科医です。

調子はどうです?
体調のほうはいいです。

内科医には飲み過ぎで肝臓などを患った人が多く訪れます。
この内科医はこれまで20人以上の患者を精神科医に紹介してきました。
この患者は酒をやめて治療に専念した結果肝臓の機能は回復してきました。
しかし、アルコールを強く求める心の状態はなかなか改善されませんでした。

内科医は、この患者は依存度が高いと判断し精神科医の猪野さんの診察を受けるよう勧めました。
それから1年余り。
心と体の両面で治療を続けてきました。

猪野先生からねこの間の状況を手紙頂きましてね。

この日、猪野さんから届いた報告書には男性が子どもの結婚式でも酒を飲まなかったことが記されていました。
男性は猪野さんのカウンセリングを受けた結果酒で家族に迷惑をかけることはできないと強く決意したのです。

三重では警察や県との連携もことしから強化しました。
警察が行う飲酒運転の検問です。

警察が取り締まっている飲酒運転の違反者。
その中にはアルコールへの依存度が高い人が含まれていると見られます。
違反者の情報は個人情報ですが県は条例を作り警察から提供してもらうことを可能にしました。
その情報をもとに県は違反者に通知書を発行。
アルコール依存症かどうか精神科医の診察を受けるよう求めています。

さまざまな機関が協力しアルコール依存度の高い人を発見しようという三重モデル。
しかし、こうした連携を確実に広げていくうえでの課題も見えてきました。

猪野さんは今後は、それぞれの機関が正式な業務として依存症対策に取り組める制度が必要だと考えています。

樋口さん、依存症の方、そして多量飲酒の方を早く見つける鍵は連携ということですか?
まずは、多量飲酒の方々に対しては、簡単なカウンセリングで飲酒量を減らすことができますので、そちらをまずやっていただくというのは、とても大事だと思いますね。
依存症の場合は、その内科とか、それから救急とか、そういうところから依存症の方を見つけたら、専門医のほうに連携を持って紹介するということが大事だと思いますね。
基本法にも、その連携がうたわれたわけですけれども、どういう具体的な、医療機関どうしのこの連携が?
これは一番いわれてるのは、例えば依存の関係の学会と、それから例えばアルコールによる肝臓障害とか、すい臓障害とか、そういうような学会との間で、連携を取りながら、この連携のパイプを太くしていくという、そういうようなことですね。
それにはどうしてもやっぱりインセンティブが必要ですから、例えば紹介したときには加算がついて、診療報酬に跳ね返ると、そういうようなシステムが中に入ってくると、大きく進むんではないかと思われます。
アルコール業界に対する、その今回、自主的な取り組みも基本法の中には必要だということをうたわれているわけですけれども、業界の真剣さ、これはどのように感じてらっしゃいますか?
まず、法律の中に事業者の責務として、努力義務がしっかりうたわれているというのは、とても大事なことだと思うんですよね。
わが国の場合は各大きな企業にアルコール関係の、CSRという、そういうふうな部門があって。
企業の社会的責任?
そうですね、そこでずいぶんいろんな活動をしてきているという、そういう実績があるんだけれども、そうはいっても宣伝なんかを見ると、例えば電車の中に入ると、あちこちにアルコールの宣伝があるし、それからあと、テレビ見ると、飲んでるところがいっぱい出ている。
依存症の患者さん、これ、とっても嫌うんですね。
こういうふうなものに対して、やっぱりもう少し考えていただきたいというようなことと、それからあと廉売、安く売り過ぎるということですね。
安く売れば、その分だけ消費量増えますので、こういうふうなことには、ぜひ取り組んでいただきたいなと思います。
海外でどういったことを行っているか、CM規制を調べてみますと、例えばワインの大国、フランスでは、テレビ、映画で広告を全面的に禁止をしている。
アメリカでは、自主規制ですけど、ビールを飲む場面はいけないと。
そしてイギリスですけれども、勇気や自信などの表現については、自主規制している。
これ勇気や自信の表現というのは、どういうことですか?
お酒を飲むことが、勇気とか自信とか、タフネスとか、そういうふうなイメージにつながっていくようなことはやっぱり避けましょうと、そういうことですね。
さあ、これから業界がどのように取り組むのか注目されますけれども、今回、10年の間に29万人も依存症の方が増えたという状況の中で、社会としてはどう取り組んでいくべきでしょうか?
まずは予防が大事だと思います。
先ほど申したような多量飲酒の人たちに対する介入ですね。
これを広範にしていくことがとても大事だと思いますね。
それから2番目に、やっぱり治療の、われわれの治療の質の向上、治療をよくしていくと。
それから、さらに治療すれば治ると。
病気であると、そういうふうなことを皆さんが知っていただいて、医療機関に早く、患者さんを紹介していただきたいと思いますね。
ありがとうございました。
久里浜医療センターの樋口進さんと共にお伝えしました。
これで失礼いたします。
2014/06/19(木) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「あなたの飲酒 大丈夫?」[字][再]

急増するアルコール依存症。しかし治療を受けている人は4%以下。本人も周囲も「依存症」と気付かずに失職や事故など深刻な事態になってしまう。どうしたら防げるか考える

詳細情報
番組内容
【ゲスト】独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長…樋口進,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長…樋口進,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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