くらし☆解説「電力も“選んで買う”時代に」 2014.06.19

生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
10時5分になりました「くらしきらり解説」きょうのテーマは電力も選んで買う時代にです。
担当は関口博之解説委員です。
関口⇒こんにちは。
これは私たち消費者が電力を選べる立場になるということですよね。
そうです。
2年後の2016年からですけれども電力小売りの完全自由化でそれが可能になるんですね。
これまで家庭で使う電力というのはその地域にある大手電力会社例えば東京電力とか関西電力とかそういうところから買うしかありませんでした。
つまり地域独占だったんですね。
ただ工場やオフィスなど大口のところは2000年以降自由化されて新規参入の事業者これは新電力と呼びますけれどもそこと個別に契約して安く買えるようになっていました。
そして2016年からはいよいよ一般家庭も地域独占の縛りを外してどの電力会社からでも買えるようにするという歴史的な転換ですよね。
新電力が、私たちの家まで新たに電線を引くわけですか。
いえいえ、そういうことはありません。
電線は今のまま、そこに流れる電気も今と同じです。
どうするんですか。
請求書が出てくるところが変わると考えてください。
新電力は大手の電力会社が持っている送電網を借りてそこで電気を送ってもらって代金を託送料として大手に払うという仕組みです。
発電は、どうするんですか。
もちろん自前の発電設備を持ってもいいんですが一般の事業会社が自家発電した余りを買うとか電力会社が余剰分を出している卸電力取引所というのがあるんですけれどもそこから調達するということになります。
余った電気を買って送電網を借りて私たちの家に届けるシステムなんですね。
どんなところが参入してきそうなんでしょうか。
国への届け出は、この1年ほどで急に増えていて今244社にも上っています。
例えば都市ガス会社です。
同じエネルギーを扱っていますから、垣根はわりと低いですよね。
例えば、地元のガス会社が電力とガスをセットで売りますよというふうに売り込みにくるかもしれません。
また携帯電話会社が、こちらも携帯電話と電力を一緒に契約したら割り引きますと言ってくることも考えられます。
通信会社はもともと顧客リストを膨大に持っていますから家庭にもアプローチしやすいというわけです。
それから石油元売り会社も参入を考えています。
こちらは原油を輸入して自前の発電所なども持っていますからいわば、すぐ売れる電気という商品を持っているのが強みですよね。
それから。
まだまだあるんですね。
住宅メーカーは、こちらは省エネ住宅を建てるなら合わせて安い電力を使えばより効果的ですよ、とPRしようとしていますし自動車メーカーだと電気自動車、あるいはプラグインハイブリッドを買えば、割安な電力をつけますと言うかもしれません。
業種は本当にさまざまですね。
それから太陽光発電の会社も今増えていますよね。
そういうところがクリーンなエネルギーを買いませんかと呼びかけることもありそうです。
料金が多少高くても再生可能エネルギーを応援したいとこういう会社を選ぶ人もいるでしょう。
また、ほかのエリアの大手電力会社も越境して売り込みにきそうなんです。
すでに関西電力や中部電力が首都圏での電力販売をねらっていますし逆に東京電力は全国に打って出ようとしています。
ここで、やはり気になるのは電気料金なんですが下がりそうですか。
下がる方向には、なるだろうと思います。
それが自由化のいちばんのねらいですからね。
まず新電力は攻める側です。
先ほど、ちょっとご紹介したような割引制度とか自由料金で有利な魅力的なメニューを打ち出してくるはずです。
そちらに乗り換えてもいいですしそうでなくても大手電力自体が対抗上、自由料金として安い料金プランを作るでしょう。
まさに競争のメリットですよね。
この規制料金というのは何ですか。
これは当面の移行措置としてこれまでと同じように国が規制して認可する規制料金の制度も残すということです。
今の料金制度ということですね。
そうです。
自由化しても、今は圧倒的な寡占状態に大手電力会社があるわけですよね。
それを野放しにしておくと大手電力会社が価格をつり上げたりして本来の目的と逆のことも起きかねない、それを防ぐ保険として規制料金も残すこれより高い料金はだめだよということですね。
電気料金は、そもそもどうやって決まっていたんですか。
これまでの電気料金は総括原価方式で決められてきました。
かかったコストを積み上げて、それに利益を上乗せして会社は申請します。
国がそれを査定して一部カットしたりして認可するんですね。
ですから電力会社側としてはどうせ査定で切られるんだからまずは何でもコストに計上しておけ、となりがちだったんです。
しかし、これからはほかの新電力との競争ということになるわけですからこういうやり方では勝負にならない、より厳しいコスト意識を持たざるをえなくなるはずです。
実際、電力料金はこのところずいぶん上がっているなという印象ですけれども。
そうですね。
2011年の東日本大震災以降の東京電力管内の平均的な家庭の電気料金の推移なんですが、原子力発電所が止まり、火力発電を増やしたことで燃料費がかさんで震災前より大体37%も上がっています。
これを、なんとか抑えてできれば引き下げたいというのが自由化の目的ですね。
ただ、うまくいくんでしょうか。
ここで、ちょっと悩みがあるのが震災のあと電力不足が続いていることなんです。
大手電力の供給量がぎりぎりという中では、一般の事業会社の自家発電の余りとか卸電力なんかも大手電力会社にまるまる吸い上げられています。
ここでは新電力としては売りたくても売る電力がないという状況なんですね。
これは、ちょっと深刻ですね。
ですから原発が再稼働するかどうか、あるいは再生可能エネルギーをもっと増やせるかどうか、国全体の供給能力がこの自由化の成否にも影響してきます。
新電力にわが家は切り替えた、それはいいですけれども発電量を確保できずに停電になってしまったりということはないんでしょうか。
新電力にも長期的な需給計画を作って、それに基づいて電源を確保することが義務づけられています。
ただ急に需要が増えてしまってその日の電力が足りなくなってしまった場合には、緊急避難的に大手電力が補給して停電は防いでくれます。
それから、仮に万が一新電力が倒産してしまったという場合でも大手電力が、最終的には代わって電力を供給するという、セーフティーネットが用意されています。
大事なライフラインの電気ですから、途絶えたら困るからなんですが最初からそれをあてにして安易に会社を選ぶのはどうかというふうに思います。
自由化は、私たちがもっと電気のこと、そしてその使い方を真剣に考えるきっかけにもなりそうですね。
そうですね。
その1つの鍵になるのがこちらです。
スマートメーター。
そうです、スマートメーター次世代の便利な電力メーターのことです。
30分ごとに電気の使用量を測れるんですね。
それから通信機能がありますのでデータを自動的に電力会社に送ります。
利用者もパソコンで自宅の電気使用量を簡単に確認できるようになるんですね。
使いすぎを防げて節電につながりますね。
東京電力の場合、ことし4月から設置を始めていて2020年までに2700万台あるメーターを全部切り替える計画です。
このスマートメーターがつきますと、例えば曜日や時間帯ごとによりきめ細かい料金設定をすることができるようになるんですね。
ですからユーザーも、それをうまく使えば節電で電気代を節約できるということです。
この電力の自由化、そしてこのスマートメーターの設置というのが同時進行でこれから進んでいくというわけですね。
スマートメーターの設置自体は新電力のお客さんに対しても大手電力が担当して行うことになっていますので、その点不公平はありません。
電気の使い方を自分自身でチェックするというのはまさに見える化ですよね。
ということで、これからの私たちが目指すべきは電力を選んで買って、そして賢く使うという、こういうことなんだろうというふうに思います。
関口博之解説委員でした。
次回は中谷日出解説委員と共にお伝えします。
ぜひ、ご覧ください。

(テーマ音楽)2014/06/19(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「電力も“選んで買う”時代に」[字]

NHK解説委員…関口博之,【司会】岩渕梢

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【出演】NHK解説委員…関口博之,【司会】岩渕梢

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