2ハートネットTV「震災を詠む 2014」(前編) 2014.06.19

2時46分で止まっていたその時計を見た時にね…東日本大震災から3年。
あの日からたくさんの歌が詠まれています。
この田んぼが…「ハートネットTV」の呼びかけに全国から697首が寄せられました。
先月福島県いわき市で選ばれた35首の作者たちが集う歌会が開かれました。
短歌を選んだのは仙台市にお住まいの…そして震災の記憶を語り継ぐ活動を続けている…屋根の上の方が波うったんですね。
それがもう全然…本当強烈な印象で。
31文字に込められた思いを語り合います。
胸がいっぱいになりました。
それではまいります。
ことば書きです。
「平成23年11月11日防護服に身を固めて夫の実家がある富岡町に初めての一時帰宅を果たしました。
散乱する家の中でふと柱時計を見るとあの時刻を指したまま時計が曲がっていました」。
この歌を選んだのは佐藤さんです。
(佐藤)はい。
もう…私なんかはねよく状況分かるもんですから本当に深く胸を打つんですよ。
生活が根こそぎ奪われるというこれなんですよ。
これはね現在だって3.11のままでしょうよ。
そういうふうな事をね心の中の傷として残っていくんですけど残っていくだけじゃ自分が病になってしまうのでねなんとかしてこういうふうに言葉として残していきたい。
何て言うのかな。
心は残していくという一つの私たちにある手段ですからね。
皆さんも今日この歌に出会ってよかったなと思われる方多いんじゃないでしょうかね。
(拍手)今日は会場に渡辺さんいらっしゃっています。
渡辺さんどちらでしょうか?こんにちは。
どんな思いで詠まれたんですか?はい。
初めて入る時に…警戒区域に入る時からもう胸がドキドキドキドキして本当に心臓が飛び出すぐらい震えがきたんですね。
それで防護服を全部電力会社の方たちに着せて頂いてやっとの思いで富岡町に入りまして…。
本当にあの…うちの駐車場にまず車が入れなかったんです。
草がぼうぼうで…。
玄関に入ろうと思ったら草がもう自分の背より高くなってて…。
あの…玄関入るのにも全部草をかき分けてうちに入って…入ってみたらうちの中がめちゃめちゃで…。
そしてパッとこう何気なく時計を見たら2時46分で曲がったまま止まっていて…。
何かもうあの時の事を思い出したのもそうでしたけどももうこのうちには入れないんだなもうこのうちには住めないんだなっていう気になりまして震えと悲しみと複雑な思いでこの歌が生まれました。
義理のお父様が独りで住んでいた…。
家に戻れずに亡くなられたと…。
一度もあの日から…お父さんは一度も戻った事がありません。
(生島)いやいやでも本当に残念ですよね。
お父さんも戻れなかったんだね…。
何かその事を考えるとねずっと94年間も富岡で暮らした人だったから…。
そうですか。
(竹下)そうですか。
94年…。
ありがとうございました。
さあ続いての短歌にまいります。
ことば書きです。
「3月11日裸足で庭へ飛び降りて震えながら自宅の屋根を見ました」。
選者は佐伯さんです。
(佐伯)「波うつ屋根」というのが実際に体験しないと出てこない言葉で「屋根が波うつ」なんていう事は比喩でも出てこないんですよね。
だからここに迫力があってそしてそれを「忘るべからず」といって最後に自分に言い聞かせてるんです。
「忘るべからず」って現地の方がおっしゃってるところが私はすごいなと思いました。
ちょっとこの言葉は短歌には向かないかなと思ったんですけども人間は自然とどうしてもいろんな事を忘れていってしまいますから自分自身の戒めの一つとしても忘れないようにしたいなという思いもありました。
それで自分のうちが海の波のようにうねったっていうか…屋根の上の方が波うったんですね。
それがもう全然…本当強烈な印象でありました。
どうもありがとうございました。
(矢内)ありがとうございました。
さあ続いての短歌にまいります。
「津波から2週間後に避難所を見舞った時の様子です」。
私はね岩手の生まれなもんですから「らずもねごと」はね本当に日常語でした。
(竹下)どういう時に使われますか?「とんでもない事」っていう。
人間の力を超えたとんでもない事が出たっていう時に「らずもねごと」って言うんですよ。
私のようにそういう土地で生まれ育ってなくても何かしらその人の体温とかその情感のようなものを伝えてくれる。
私たち一緒だよっていうような温かさのある言葉ですよね方言は。
その方言の言葉の力にすごく魅了されて…。
(生島)だから山田さんね僕らはやっぱり標準語というか共通語をしゃべる勉強したりとかした訳ですけどでもやっぱりこう「らずもねごと」という非常に心にしみいるというか優しさがあふれているような感じはしますね。
さあでは次の歌にまいります。
お願いします。
選者の一人竹下さんお願いします。
「陽だまり」はまあ暖かいですよね。
そこに何人かが集って待っていれば普通ならそこはちょっとほっとする場であったり何気ない会話が交わされたりするんでしょうけれど恐らく…大事な方々の安否を尋ねていくつもの安置所を巡られる方にとっては暖かであったであろうその陽だまりも冷たい風が吹いているというかね…。
そういう思いがその「寒き陽だまり」という言葉になっているように思われて…。
胸がいっぱいになりました。
生島さんは妹さんご夫婦を…。
(生島)そうですね。
ちょうど我が家は実は2011年の2月2日におふくろが85歳で天寿を全うしてですねあの世に旅立ってったんですけども3月の11日にその遺骨と遺影位牌を持ってですね東京に来る予定だったんですね。
しかも在来線の時間が3時半ぐらいですから。
3時半ですか。
だから午前中の便だったらば助かったのかなとかいろんな事を考えるんですけどもやはり運命というのは非常に残酷なもので津波に対する怖さも分かっていたんですけどまあそんな大きいのは来ないだろうっていう甘い考えもあったんじゃないかなと思って…。
やっぱり人生には本当にまさかの事があるんだなという事を痛感させられましたけれどもね。
「私の家のある所は居住制限区域です。
しかし田んぼのある所は帰還困難区域でありバリケードが張られ自由に入る事はできません。
しかし風は関係なく往き来しているのです」。
作者の山田純華さんです。
自宅は福島県富岡町にあります。
(純華)駄目になってんじゃないの?
(莊一郎)手前通れるよ。
(純華)あっそっか。
これだけの差なんですよね。
(莊一郎)これだけでねこれだけで帰還困難と居住制限との差がある。
この道路だけでね。
富岡町は今避難指示解除準備区域居住制限区域そして柵によって仕切られ許可なく立ち入る事ができない帰還困難区域の3つに分けられています。
(純華)こんなふうな形になってます。
様子を見に帰る度家が荒れ果てていくのを目の当たりにします。
ああもう3.9ミリです。
ほら。
今のこの線量計を見ても分かりますようにああ帰れないって思いますね。
それが何とも…。
家がありても帰れないっていうのは本当に残念という…。
40年以上米を作り続けてきた田んぼは帰還困難区域を仕切る柵の向こう側。
えっとこの田んぼが私の田んぼなんです。
ずっと。
あの上の方もずっと。
もう入れないんですけど。
うちの田んぼですずっと。
この収穫時ですね。
風が吹いて稲穂がさ〜っとした時は本当に涙が出るような感激をしたのを…若い時覚えてます。
ああ私これをやってきたんだなと思って…。
あの…全部憤りもありましたし悔しさもありましたし今…諦めもありますしね。
まあ確かにね本当に同じ風が吹いてるのにバリケードで区切られてたって納得がいかないっていう事はあるかもしれませんね。
その…今一見穏やかに平和に見える中にもっと重い現実があるっていう事を反すうすると言ったらいいんでしょうか。
そういう思いが致しました。
それにしても復旧復興という事を随分言われましたけれども特に福島の方にとってはそのスピードの遅さとそしてその後の原子力発電所の動きなんかを見てると本当にじくじたる思いがすごくおありだと思いますね。
今まではうちの中で遊ぶ事が多かったんですね。
それでこの春に除染も終わりまして芝生を取ったんですね。
芝生の所にすごい…線量が高かったのでそれを取り除いたら線量は減りました。
そしたら子どもたちはとても喜んでそこで縄跳びをしたんですね。
まあ近所ではまだ戻ってらっしゃらないお孫さんたちはいるんですけれどもうちの孫たちの声だけが何かすごい高く聞こえたのでこんなふうに歌ってみました。
これもとてもいい歌ですよね。
普通ならね「数うる声の垣根越えゆく」っていうのはとても元気な子どもたちの声のように見える訳ですよ。
ところがね元気は元気なんだけどもそれだけでは済まない不安がねある訳でしょ。
これが現実ですよ。
こういうふうな事を言葉として言えるという事はね恐らく放射能に関係のない地区に住んでいる人たちにも初めてああこういうもんだなというふうに分かるという事ですね。
ありがとうございました。
では次の短歌です。
本当にこの馬酔木の花を揺らしてんのはあの…セシウムなんだろうな。
セシウムの重みに耐えかねて馬酔木が揺れてんだろうな。
そんな思いがしました。
この歌は「門口の馬酔木の花をたわたわと揺らして」までとてものどかで懐かしくて美しい…。
馬酔木の花っていうのは「万葉集」でも歌われてて懐かしい日本の花なんですけどそうしたあとに「セシウムは」ってすぐつなげてるところは大胆なつなげ方なんですけど読み手に非常に不安感を与えるところで私の方にも伝わってくる恐怖感というのがありました。
さあでは次の歌にまいります。
お願いします。
この慰霊碑に若き記者の名が追加されたという新聞記事を読みました。
その時にお父さんのコメントが載ってたような気がしましたね。
「これでホッとした」とか何とかね。
要するに地区の人たちが…地区の人々のための慰霊碑だったんですね。
この新聞記者はたまたまここに赴任しててたまたま取材中に遭って名前が載る事はなかったんだけれども地区の人々の温かい気持ちがこの慰霊碑にこの新聞記者の名前を記されたのでは…。
「おだやかな海海原」っていうのがとてもよく効果的に使われていて今はとてもおだやかな海で懐かしい海になっている。
そこに向かって慰霊碑が建っているんだと。
従前に時の経過とそれから哀悼の思いですか。
「追加されたり」もとてもうまいなと思いました。
これで1首で本当によく全部の事を言いえている歌だなというふうに思いました。
さあでは次の短歌にまいります。
最初のうちはそんなでもないんですけれどもああ大変だというような気はあるんですけれども落ち着いてくるとその罅が深くなってきます。
そんなところを詠みました。
実際は家だけではなくて人間も3年かかって心の傷これが深くなってきたという。
この3.11以降解決していったという事ではなくてむしろ一人一人の心が深く傷つきそれがこういう「罅」という言い方で歌われたんだなと。
はいありがとうございました。
さあでは次の短歌にまいります。
17年前から日々の思いや出来事を歌にしてきたという武藤敏子さん。
しかしあの日からずっと震災の事だけは詠む事ができなかったといいます。
(武藤)地震を経験しましたけれども津波は味わってませんし身内を亡くした訳でもありませんのでその本質っていうか…その怖さの本質を知っている訳ではないのに短歌にするっていうのはその本当の苦しみを味わっている人たちに対して失礼かもしれない失礼に当たるのではないか。
もしかして少しでも人手が欲しいのに短歌って役に立たないなとかそんな事思いながら…。
武藤さんは今年図書館から2冊の本を借りました。
多くの被災した人たちの声に触れ震災の事を歌に詠もうと思えるようになりました。
「忘れないでほしい」っていう言葉が多くてそれがとっても印象に残ったんですね。
忘れない事はできそうなので忘れていませんよっていうメッセージのような歌は詠んでもいいかなと思ったんですね。
とっても複雑で微妙な心理が描かれている歌だと思いました。
これは例えば東京に住んでいる私なども次第次第にある後ろめたさを持っている自分というものを忘れていくかあるいは受容していくかっていうところは距離感と思いの深さは違うかもしれないけれども日本人の何か共通した心理の複雑さを出しているというふうに思いました。
さまざまな人の思いが交錯するというのがもしかしたらこの3年の中で起きてるのかもしれませんね。
それでは次の歌にまいります。
ずっと戸や障子閉めっ放しだったので何て言うんだろう。
部屋の空気が死んでますよね。
だから生き返ったような気ぃしたもんですからそれを詠んでいます。
僕は朝がとっても好きなんですけれども震災以降僕は一日一生という…今日が最初で最後と思うように…。
つまりあの日当然普通のように当たり前のようにその日が過ぎて明日がやって来ると思ってた訳ですよね。
ところがやっぱりあの日の朝日を浴びてそのあと午後につまり別の世界に逝ってしまった方もたくさんいらっしゃるんですけどそんな意味で朝の光とか朝の始まりというのをすごい今意識をしているんですね。
今日を大切に過ごそうと思ったんですけど。
(竹下)さあこれからまた新しい日が始まるんだというとても情景も浮かびましたしその…潔さといったらいいんでしょうか。
「潔さ」?はい。
ここでもう一度新しい日を生き直すというかそういう希望のような気持ちも感じました。
震災を経験した一人として生きるっていう思いを…。
もっと強く思っていかなきゃいけないなと思って…。
もうお見事です皆さん。
すばらしい!感動した!
(テーマ音楽)2014/06/19(木) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「震災を詠む 2014」(前編)[字][再]

NHKでは、東日本大震災に関する歌を詠み合う歌会を、5月に福島県いわき市でひらきました。歌の作者と、竹下景子さん、生島ヒロシさんたちが、思いを語り合います。

詳細情報
番組内容
ハートネットTVでは、東日本大震災に関する歌を視聴者から募集。5月に、福島県いわき市で開かれた「公開復興サポート 明日へin いわき」にあわせて、「震災を詠む」と題する歌会を開きました。全国から寄せられた短歌はおよそ700首。歌人の佐藤通雅さん・佐伯裕子さん、俳優の竹下景子さん、そして宮城県出身のフリーアナウンサー・生島ヒロシさんとともに、歌にこめた思いを語り合いました。2回シリーズの第1回。
出演者
【ゲスト】竹下景子,生島ヒロシ,【講師】歌人…佐藤通雅,歌人…佐伯裕子,【司会】山田賢治,【朗読】河野多紀

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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