(陣川公平)ハハハ…それにしてもええ披露宴やったなぁ。
お前もなかなかええ司会やったで。
警視庁君。
その「警視庁警視庁」言うのやめてくれへん?せやけどないきなりマイク握り締めた思うたら「警視庁捜査一課陣川です!」…なぁ。
ホンマやで。
会場シーンとしてもうて俺の後ろのじいちゃん誰か逮捕されるんかってたまげとったで。
一応自己紹介からと思うて。
お前自己紹介って…。
まあな捜査一課いうてもこいつ単なる経理担当やねんけど。
おい…!警視庁君。
それにしてもあいつ緊張しとったなぁ〜。
すみません。
こういう者ですがちょっと向こうでお話を。
さぁ。
お名前と住所を伺えますか?鯨岡学。
練馬区貫井7丁目2の5です。
胸を見せていただけませんか?は?胸をこう…シャツ上げてよ。
あ…。
はい。
もっとぐっと上…上まで。
(陣川)ちょっと失礼。
…あれ?
(鯨岡)あ…あの…。
(陣川)はい?痛いです…。
痛い…あ…ですよね。
はい…。
あすみません。
(宮部たまき)フフッ…いやごめんなさい。
でもお仕事熱心なのはいい事ですよね。
(杉下右京)しかしそれは災難でしたねぇ。
いや〜こんな事でへこたれません!
(神戸尊)いや間違われた人の事ですよ。
尊君!えっ…!?特命係においては僕のほうが先輩だって最初に会った時に言いましたよね。
はい。
なぁ!はいはい。
確かに伺いました。
でも陣川さんに会ったのはあれ一度きりだし些細な事でしょうけど僕は「ソン」ではありません。
「タケル」です。
いやぁ〜…。
聞いてないし。
僕の友達の結婚式とこの花の里の開店記念日が重なるなんてもうこんなめでたい事ない!皆が大阪に帰るんじゃなかったら一緒に連れてきたんですけど〜。
不幸中の幸いでした。
あ!そうそうそう…。
僕ね結婚式でこれがまた縁起のいいもんもらったんすよ!ほれ〜!ヘヘ…。
え…えぇ…?おやおや通常それは女性がもらうものではありませんか?いやそれがまるで僕を狙ったかのようにこう…ストンと飛んできたんですよ。
(女性たちの歓声)たまきさんこれ男がもらうとどうなるんですかね?さあねぇ…?さあって…。
運命の人に出会うとかじゃないですか。
あらららら…。
キミいい人だねソン君。
え?醤油。
あ〜!大変大変…!やっちゃった…。
おしぼりおしぼり…はい。
(ため息)運命の人か…。
あ…乗ります。
乗りまーす。
よいしょっと。
これなんだけどねぇ。
え〜っと拾ったのは北沢駅前のタクシー乗り場ですね。
ええ。
ゆうべの陣川さん炸裂してましたね。
普段は朴訥な青年ですよ。
多少風変わりなところはありますが。
フフ…でアルコールが入ると極端に風変わりになるってわけですね。
恐らく今日は二日酔いで大変でしょう。
何食おっかなぁ…。
…不審物か?何してんですか?それ私のなんですけど。
いや僕は何も怪しいあれじゃ…。
この人置き引きです!置き引き!置き引きです!ちょ…ちょ…ちょ…警察ですよ警察。
ほら警視庁…。
ほら見て。
なんでも好きなもの頼んでね。
私がお詫びに誘ったんだから。
いやでも…。
あ!これにしようよ。
季節のオススメきのこのハンバーグセット。
このハンバーグセット2つね。
(店員)かしこまりました。
メニューお下げします。
自販機の下に500円玉が転げ込んじゃってね横から手突っ込んで捜してたんだよ。
やっと見つけた!って思ったら人の荷物いじってる奴がいるじゃない。
あこいつ置き引きだって思って。
勘違いしたのは私が悪い。
でも警察なら警察って最初にビシッと言わないとね。
すみません。
まいいや。
済んだ事だし。
私篠原奈緒。
あ陣川公平です。
これね友達の結婚祝いなんだ。
へぇ〜昨日僕友達の結婚式に出たんですよ。
話合わそうとしてる?いやいやホントですよ!大学時代の友達の結婚式でね。
…ほら。
(奈緒)この新郎が友達?
(陣川)ええ。
今市です。
ハハイマイチ…だね。
いやいやいや今市宏。
名前です。
いい奴なんですよ。
アハハちょっと不幸な名前だね。
(陣川)ん?なんていうのかな…豪快っていうか男前っていうか。
いや初めてですよああいう人。
はい。
でとりあえず何しに来たか聞いていいですか?決まってるじゃないですか。
神戸さんの予言当たったかもって知らせに来たんですよ!はい?ほら神戸さん僕が運命の人に出会うって言ったじゃないですか。
ねえ!真に受けたんだ…。
はぁ〜昨日は記念すべき日になりそうです。
まああのあとちょっとした災難はありましたけど。
災難って?
(陣川の声)いや彼女とファミレスで飲んだあと家に帰ったら…。
つまり空き巣ですか?ええ。
いやでも幸いなんの被害もなかったんです。
部屋には小銭しかありませんでしたから。
やっぱりピッキングですか?いや…見たところ鍵穴に目立つ傷とかはついてませんでしたけど…。
いや最近の空き巣は巧妙ですからね。
鍵も落としちゃった事だしまあ今日中に鍵を取り替えてもらうように頼んだんでもう大丈夫です。
はい。
陣川君。
それ警察に届けたほうがいいんじゃありませんか?いや〜鍵穴操作してこじ開けた跡はないですね。
誰か侵入したんなら鍵使って入ったんですね。
えっ…!?鍵で!なるほど。
いろんな意味で非日常的な環境ですね。
いや週末に大掃除してまとめて片付けようと思って。
陣川君。
はい。
もしかしたら鍵は落としたのではなく何者かが侵入目的でキミから盗み取ったのではないでしょうか。
いや侵入目的って…。
いやでもホントに何も盗られてないんですよ。
犯人が何も盗らなかったのにはいくつかの可能性が考えられます。
まずこの部屋に盗る価値のあるものがなかった場合。
それから捜していたものがなかった場合。
ところでキミ…。
ええ。
引き出物袋をどうしました?確か花の里にいた時は持ってましたよね。
あ…実は帰りに置き忘れちゃって。
奈緒さんと結婚式の話をしてて初めて気付いたんです。
(陣川の声)そしたら彼女親切にもどこに置き忘れたのか思い出すのを手伝ってくれて。
じゃあ駅を出たあとは?タクシーに乗る時は持ってた?えっと…そっかタクシー乗り場だ!北沢駅前のタクシー乗り場に置き忘れたんですよ。
早速明日の昼休みに笹塚署の遺失物係に行ってみます。
そうだね。
なるほど。
ひょっとして犯人は本来ならキミが持ち帰っていたはずのその引き出物袋を捜していたのかもしれませんね。
しかも陣川さんが篠原さんとファミレスに行かずに真っ直ぐ帰宅していたら犯人は陣川さんと鉢合わせしていた。
つまり昨晩の空き巣は彼女がいなかったら不可能だった。
うん。
もしかして2人とも彼女と空き巣がグルになって僕の引き出物を捜してたなんて考えてます?そんな荒唐無稽な話あるわけないじゃないですか!ハハ…。
(係員)北沢駅前のタクシー乗り場ね。
はいこれですよ。
あ〜これですこれです。
間違いないです。
ほら袋に南急グランドホテルって書いてあります。
ではあの…袋の中身を言ってみてください。
え…?あバームクーヘンと食器じゃないでしょうか。
想像で答えてどうするんです。
(陣川)いやでも…。
誰の結婚式に出たのかを言えばいいんですよ。
引き出物ののし紙に名前がありますから。
ああ…。
えー今市家と河田家の披露宴の引き出物です。
違いますね。
え…?そんなバカな…。
失礼。
申し遅れました。
は…はぁ…。
ちょっと中を拝見してもよろしいでしょうか?どうぞ。
(陣川)鈴木家山田家!?全然知らない人ですよ!誰なんだ?この2人。
鈴木さんと山田さんでしょ。
うん。
いやしかしどうして…?単に別の人が置き忘れた引き出物だったって事じゃないですか。
おや…。
結婚式なんですから誰の引き出物にも花びらくらい…。
しかし刺身醤油の付いた花びらは珍しいと思いますよ。
いい人だねソン君。
え?醤油。
でもどうして僕のブーケの花びらが知らない人の引き出物に?だから陣川さんが花の里に来た時からこの引き出物袋を持ってたんですよ。
ホテルの引き出物袋は一見して区別がつきません。
キミは引き出物袋を誰かのものと取り違えたのでしょう。
あ!そういう事か…。
(携帯電話)あちょっとすみません。
つかぬ事を伺いますが彼のほかにもどなたか「北沢駅前のタクシー乗り場に今市家と河田家の引き出物を置き忘れた」と言って捜しにきませんでしたか?そうなんですよ!朝一番に若い女性が来ました。
若い女性?ええ…確か引き出物袋の中にプレミア物の札入れが入っているはずだとか言ってましたね。
プレミア物の札入れが…。
恐らく引き出物を取りに来た若い女性というのは篠原奈緒さんでしょう。
陣川君が置き忘れた場所を知っているのは我々の他には彼女だけですからね。
しかしなぜ彼女は陣川さんの引き出物を捜してるんでしょう。
あと中に入ってるはずの札入れって一体…。
…そうそう。
でね引き出物を誰かのと取り違えちゃってたんですよ。
え?ハハハキツイなぁ奈緒さん。
わかりました。
はいそれじゃ。
電話は篠原奈緒さんでしたか?ええ。
あこれからランチ行くんですけどよかったら一緒に行きませんか?奈緒さん紹介しますよ。
それは…ぜひ。
いいんですか?彼女来てないのに先に食事始めて。
いやぁ彼女はあそこです。
なるほど豪快ですね。
ええ。
彼女はこのお店で窯焼きを担当してるんです。
へぇ〜。
(奈緒)お待たせしました。
こちらが篠原奈緒さん。
奈緒さんこちらは僕が尊敬する杉下警部。
こんにちは。
…と後輩の神戸尊君。
い…どうも。
ようこそ。
陣川君が運命の人に出会ったので紹介したいと言うものですから。
す…杉下さんそんないきなりホントの事を…。
照れ方間違ってますけど。
まとりあえず運命は置いといてお座りになって熱いうちにどうぞ。
では早速いただきましょうか。
はい。
私2時に休憩があるんだけどお茶とか出来ないかな?うん。
あでも今日は午前中一杯仕事抜けてるんで…。
あの代わりに晩ご飯どうですか?いいね。
じゃあ7時に北沢駅前で。
ああ…!杉下さん…。
僕とした事が申し訳ない。
お手拭を。
はい。
どうぞ。
どうもありがとう。
大丈夫ですか?
(奈緒)失礼します。
申し訳ない。
(陣川)どうして彼女の指紋を調べなきゃならないんです!杉下さんも見たじゃないですか。
彼女はちゃんとした…。
(米沢守)スリですな。
そうスリ…スリ!?
(米沢)桧原奈緒。
一流ホテル専門のスリで1年前に出所してます。
神戸君。
はい。
この写真を笹塚署の遺失物係に照会してください。
了解。
ちょ…ちょっとなんなんです?皆で彼女を犯罪者扱いして。
たとえ前科があっても今はちゃんと更生して真面目に働いてるんです。
なんの問題もないじゃないですか。
彼女は「桧原奈緒」ではなく「篠原奈緒」という偽名でキミに近づいてますね。
「ヒ」と「シ」の違いですよ。
僕の聞き間違いで…いや彼女は江戸っ子なのかもしれない。
そう言えばごまかせる巧妙な偽名ですな。
(係員)ああ…この女です。
間違いないです。
そうですか。
どうもありがとうございます。
はい…はい。
やはり笹塚署の遺失物係に現れた女は桧原奈緒でした。
どうもありがとう。
なぜ彼女が?陣川君彼女は僕たちよりも先に遺失物係にキミの引き出物袋を取りに現れています。
そして袋の中にプレミア物の札入れが入っているはずだと言っていたそうです。
それどういう事です?え?まだわからないかな?彼女の狙いはその札入れだったんですよ。
彼女は初めからその札入れを手に入れるためにキミに近づいたんじゃありませんかね。
はぁ?つまり…ああ想像ですよ。
ええ。
彼女はキミから部屋の鍵を掏リ取り仲間に渡した。
そして彼女がキミを足止めしている間に仲間がその鍵を使って部屋に侵入し引き出物袋の中の札入れを捜した。
ところが彼女はキミと話すうちにキミが引き出物袋をどこかに置き忘れてしまった事に気付いた。
それだけでもショックだったでしょうが彼女はなんとか陣川さんに置き忘れた場所を思い出させ朝一番笹塚署の遺失物係に行った。
ところがこれまたキミが引き出物袋を取り違えていて全く別のものが保管されていた。
ほとんどバカヤロウと言いたい気分だったでしょうな。
待ってください…。
その札入れってなんです?なんでそんなものが僕の引き出物袋に?この場合彼女が掏った札入れだと考えるのが妥当でしょうね。
(支配人)おとといにスリの被害を申し出たお客様はいらっしゃいませんね。
はぁ〜ほらね。
奈緒さんは無実ですよ。
あそうそうおとといは大安吉日で結婚式のお客様も大勢いらしたので青山署の盗犯係の堀田刑事が巡回に来てくださってました。
なるほどね…。
青山署の堀田刑事ですね。
(支配人)ええ。
(堀田刑事)桧原奈緒?ええ。
あいつならおととい南急グランドホテルに来てましたよ。
えっ!?
(堀田の声)仕事したなってピーンときましてねぇすぐにあとを追ったんです。
(堀田)桧原。
持ち物いいかな?ええかまいませんよ。
まさか遊びに来たってわけじゃないよな?おいしいランチを食べに来ただけですよ。
彼女は一流ホテル専門のスリと聞きましたが。
ええ。
単独で仕事をする凄腕のスリです。
掏られたほうが掏られた事に気付かず落としたかなくしたと思ってしまう。
1年前出所してからは足を洗って真面目に働いてるんだって言ってましたがね。
まあマユツバでしょう。
彼女は札入れを掏ったものの堀田さんを見てとっさにロビーにいた陣川君の引き出物袋にその札入れを入れたのでしょうねぇ。
スリは基本的に現行犯ですからね。
掏ったものさえ持っていなければ逮捕されない。
まだ決まったわけじゃないじゃないですか。
いや仮にそうだとしても彼女がそんな事をしたのにはきっと何か深い事情があるんですよ。
しかし彼女はどうしてそこまでしてその札入れを手に入れたいんでしょう?それは札入れを見つけないことにはわかりませんねぇ。
そりゃそうだ。
しかし誰の引き出物袋と間違えたんだろう?いや僕は披露宴のあとずっと手に持ってたんですよ。
いいえ。
少なくともキミは一度は引き出物袋から手を離しています。
ん…?
(チャイム)は〜い。
鯨岡学さんですよね?どちらさんですか?覚えてる?ホテルから帰って取り違えに気付いたんです。
ではごめんください。
(鯨岡)で給料日前で札入れからちょこっとだけお金を拝借してしまって…。
指名手配犯と間違えた僕も悪いですけど勝手に人のお金拝借しちゃいかんでしょう。
ったく…。
いくら拝借したんですか?2万ほど…。
ほど?本当はいくら拝借したんですか?5万です!すみません!あんたねぇ…。
ほ…本当に拝借したのはそれだけです!他には何も手つけてません!カードも入ってませんでしたし…。
現金しか入ってなかったんだ…。
おかしいですねぇ…。
彼女がたかが数万円のためにこの札入れを手に入れようと思っていたとは思えない…。
これ…。
この1万円札半分に破れていますね。
こういうのって銀行に持っていけば5千円と替えてもらえるんですよね。
それはともかくどうして半分に破れているのでしょう。
やはりこの札入れプレミア物ですね。
ほらここ通し番号がある。
(陣川)777!ラッキーセブンだから貴重なんだ。
常識以上の価値はないと思いますよ。
同じ通し番号のものは存在しませんが札入れ自体はお金を出せば買える品物ですから。
そっか…。
いやそれにしてもこれ誰の札入れなんでしょう。
青山署の堀田さんの話では彼女に財布を掏られた人は落としたかなくしたと思ってしまうようでしたね。
はい。
ホテルに連絡しておととい遺失物届を出した人のリストを送ってもらいます。
お願いします。
(奈緒)よっ!どうかしたの?2つのうちどちらかを選んでください。
(陣川)さどうぞ。
…てかなんで陣川さんちか警察か二者択一なわけ?ちょっと人中では話しにくい事なんで…。
さ…どうぞ。
あ〜あ…すごいねぇ…。
で何?話しにくい事って。
この札入れの事です。
篠原…いえ桧原奈緒さん。
桧原さんあなたは一昨日南急グランドホテルでこの札入れを掏って陣川君の引き出物袋の中に入れましたね。
なんの事だかさっぱりわからないなぁ〜。
奈緒さん…。
(奈緒)あ…でもそんな感じの事をしてちょっと困った事になってる友達の話なら知ってるよ。
ハッ…つまり自白はしない。
でも他人の事としてなら話せるってわけね。
ではあなたのそのお友達がこの札入れを捜していた理由を教えていただけますか?信じられないだろうけど彼女は出所したあと人生をやり直そうって思ってたわけ。
でも前科者がまともな仕事を見つけるのって結構大変でね。
特に彼女は逮捕された時ほんの数行だけど新聞に載っちゃったからね。
ネットで名前を検索すればその記事がヒットする。
偽名を使おうったって今どきバイトだって給料は銀行振り込みだし。
前科はいつまでもついて回るわけ。
しかし彼女はいろいろと仕事を探し回ってなんとかまともな仕事を見つけたんですね。
そう!仕事を覚えるのは大変だったけど仲間も出来たし職場にも慣れて何もかもうまくいってた。
(奈緒)ある男が現れるまではね。
彼女その男に脅されてたんだ。
脅されてた…?その札入れを掏ってこなければ職場に前科をばらすってね。
誰に脅されてたんです?浅野亘。
浅野は彼女の昔の知り合いでね。
いきなり訪ねてきたんだ。
(浅野亘)ある男の札入れを掏ってきてほしいんだ。
礼は30万。
割のいいおつかいだろ。
(奈緒)バカバカしい…。
悪いけど仕事中なんで。
ここの連中…お前の前科知らないんだよな。
脅す気?座んなよ。
狙うのはこいつ。
(浅野)石井久雄って男だ。
石井は19日の3時に南急グランドホテルに来る。
札入れは左の胸ポケット。
プレミア物で777って通し番号が刻印されてる。
別の札入れ持ってきたらすぐわかるからな。
それであの日札入れを…。
(奈緒の声)札入れを掏るところまではうまくいったんだけど顔見知りの刑事がいてね。
(奈緒の声)でその札入れをロビーにいた人の引き出物袋に入れたわけ。
恐らく彼女はその場で唯一身元がわかった人間の引き出物袋の中に札入れを入れたのではありませんか?なんで僕の身元が…?その人友達全員から「警視庁」って呼ばれてたから。
ああ…。
そして警視庁から帰宅する彼を尾行して鍵を掏った。
その鍵を使って部屋に侵入したのは浅野ですね?
(奈緒)そう。
浅野はなぜその石井久雄という人の札入れを手に入れたがっているのでしょう。
わからない。
…って彼女が言ってた。
ただね…確かな事がひとつだけあるの。
明日の午後までにその石井の札入れを浅野に持っていかなければ彼女はかなり困った状況になるって事。
困った状況…。
確かにおとといホテルに遺失物届を出した人の中に石井久雄の名前があります。
なくしたのも札入れです。
出ました。
石井久雄61歳。
職業石井貿易代表取締役社長。
過去に一度旅券法違反で逮捕されてますね。
(角田六郎)おい暇か?お?何これ石井久雄じゃねえの。
え?この男組対五課で捜査してるんですか?いやうちじゃないけど生活環境課が内偵してるはずだよ。
(坂田警部)石井久雄はこれまでに輸入禁止品目の動植物を密輸してる疑いがあったんですがね。
先日上海で象牙の大きな密輸取引をまとめてきたって情報が入りましてね。
なるほど象牙ですか。
象牙は89年にワシントン条約で輸入禁止になって以来取り扱えるのは国の認可を受けた業者だけだからね。
しかし印鑑や工芸に象牙を使う日本では根強い需要があって密輸象牙は軽トラック1台分で億単位の利益になる。
億ですか!?つまり生活環境課としては近々密輸象牙の受け渡しがあると踏んで石井を内偵しているわけですね。
受け渡し現場を押さえて石井を逮捕出来れば懸案の上海ルートが解明出来るってわけだ。
ええ。
でその女スリが言っていた浅野亘ですがそいつは石井貿易の元幹部でしてね。
つい最近石井貿易を辞めています。
しかしなんだってその浅野は石井の札入れを狙ってんだ?ん?恐らくこれを手に入れようとしていたのではないでしょうか。
破れた1万円札を?この半分の札には対になるもう半分の札があります。
そして紙幣には左右に同じ紙幣番号が印刷されています。
…だから?そもそも密輸品は何人もの運び屋の手によって運ばれてきますしおとり捜査も活発です。
最終的に荷物を運んでくる者と受け取りに行く者はお互いが正しい相手であると確認出来る何かを用意しているはずです。
そうか!これは受け渡しの際に相手を確かめるいわゆる割り符って事か!恐らく浅野は石井からこの割り符を手に入れ象牙を横取りするつもりだったのではないでしょうか。
なるほど…。
ちょっと待ってください。
確か彼女は明日の午後までに札入れを持ってくるように言われてましたよね?浅野に。
という事は…。
ええ。
受け渡しは明日である可能性が高いですね。
おい…!じゃあこれすぐに石井に返さないと象牙の受け渡しが流れちまうぞ!まずいな…なんとか石井に割り符を返さなければ…。
でもどうやって怪しまれずに返すんです?札入れには持ち主を示すものは何も入ってなかったんですよ。
1つ方法があります。
石井はホテルに札入れの遺失物届を出しています。
(陣川)札入れはホテルのほうから石井に返してもらうってじゃあ浅野のほうはどうするんです?現状では浅野を逮捕するに足る物証がありません。
しかし明日までに札入れを浅野に渡さないと彼女…。
ああとでかけ直します。
(陣川)待ってください奈緒さん!仕方ないよ。
元スリの仕事の心配より何億って金を扱う犯罪者を逮捕するほうが先。
私が警察でもそうする。
奈緒さん…。
(陣川)僕浅野に会って注意します!逆効果だよ。
警察に話したって知れたら余計ひどい事になる。
でもこのままじゃ…。
私は大丈夫だって。
引っ越してまた仕事探すから。
なんか僕に出来る事ないですか?僕奈緒さんの力になりたいんです。
いやあの…僕ムダに顔広いんで…。
ありがと。
でも人の世話になるの好きじゃないんだ。
じゃあね!
(扉の開閉音)
(ため息)
(ため息)まあ彼女らしいですね。
僕彼女が新しい仕事探すのを手伝おうと思って…。
実際ちょっとつらかったです。
彼女に「元スリの仕事の心配より何億って金を扱う犯罪者を逮捕するほうが先」って言われた時は。
どうしたってそれが現実…。
陣川君。
(陣川)はい。
彼女がそう言ったんですか?ええ…。
行きましょう。
はい。
行きましょう。
はい。
え?ってどこへ?
(支配人)バンケットルームの椅子の下にございました。
(石井久雄)私のものだ。
どうも。
こちらに受け取りのサインをお願いいたします。
受け取った。
石井は地下駐車場に戻るぞ。
了解。
今の石井ですよね。
ええ。
桧原さんだ…タクシーに乗ります。
どうして彼女がここに?彼女実力行使に出たのでは?僕は館内の防犯カメラをチェックします。
僕は彼女を。
(警備員)出ました。
再生します。
止めてください。
はい。
少し戻していただけますか。
(警備員)わかりました。
はい。
奈緒さんだ。
彼女石井の札入れを…。
坂田警部ですか?杉下です。
なんだと…!?
(坂田)あいや石井は札入れを掏られてなんかいない。
石井が動き出した。
切るぞ。
行こう。
はい。
石井は札入れを掏られてないってじゃあ奈緒さんはなんのために石井に接触したんです?駐車場は地下でしたね?
(警備員)ええそうです。
すみませんがこのあとの地下エレベーターホールの映像を見せていただけますか?はい。
あ止めて!杉下さんこれ…。
ええ。
服装を変えてキャップをかぶっていますが間違いなく桧原さんです。
彼女は2度石井に接触した…。
陣川君。
はい。
桧原さんが何をしたかわかりました。
(アナウンス)「16時ちょうど発パシフィックオーシャン号ご乗船のお客様は2番カウンターまでお越しください」「繰り返します…」桧原さんあなた浅野から報酬を受け取りましたね。
それも当初の約束の30万ではなかった。
(ため息)300万円あります。
え…!?どうして気付かれちゃったかな…。
あなたは陣川君に「何億もの金を扱う犯罪者を逮捕するほうが先」と言いました。
それを聞いた時あなたが密輸象牙の件を知っていると思いました。
だとすれば浅野から聞いたに違いない。
じゃあ浅野に脅されたって話は嘘だったんですか…?いえ脅された事は確かでしょう。
しかしだからといってあなたはただおとなしく引き受けたわけではなかった。
そう。
あの話にはちょっと続きがあってね。
やってくれるよな?
(奈緒)わかった。
(奈緒)じゃあまず浅野さんがその札入れを欲しがってる理由を聞かせてもらいましょうか。
お前自分の立場わかってんのか?嫌ならこの石井久雄って人に浅野亘があなたの札入れを狙ってますよって教えてやるよ。
19日の3時に南急グランドホテルに行けば会えるからね。
お前…!そうなれば札入れを手に入れる事はとっても難しくなるだろうね。
(奈緒の声)で石井の象牙密輸と割り符の事を聞き出したってわけ。
脅した相手を脅し返して報酬を10倍につり上げたんですか。
あなたは実に臨機応変で勝負勘が鋭い。
スリにはぜひとも必要な資質ですねぇ。
でも杉下さんが札入れを持っているのを見た時はもうダメかなぁと思った。
しかしあなたは大胆な勝負に出た。
まず地下駐車場に行くエレベーターを最上階に上げ石井から札入れを掏り取った。
(奈緒)すみません。
そして石井がエレベーターを待つ間に階段を駆け下り…。
あらかじめ用意していた同じ型の札入れに本物の割り符と金を移した。
あなたは服装を変え再び地下で石井に接触し偽物の札入れを石井のポケットに戻した。
石井は割り符さえ本物なら札入れだけが偽物にすり替わっているとは思いもしない。
一方石井の札入れを手に入れたあなたはその中に偽物の割り符を入れそれを浅野に持って行った。
割り符の紙幣番号は割り符を割った当人同士しか知らないから浅野は札入れが本物なら当然中の割り符も本物だと信じる。
そして札入れと引き換えにあなたは浅野から報酬を受け取った。
そう。
そのとおりだよ。
石井に二度接触したのは札入れをすり替えるためだったんですね。
(携帯電話の振動音)杉下です。
(坂田)石井を確保して密輸象牙を押収しました。
ああそれからなんでか浅野まで偽物の割り符を持って受け取りに現れましてね。
ご同行を願う事にしましたよ。
(浅野)放せコラー!そうですか。
石井と浅野2人とも身柄が拘束されました。
そう。
ところであなたも承知のとおり今回の密輸象牙は何億もの利益を生み出すものでした。
それにしてはあなたの要求した300万という報酬はいかにも安いですよね。
ただで引き受けたりしたらかえって浅野は信用しないからね。
って事は金が目的じゃなかったんですか?浅野の言い方がちょっと癪に障ってね。
癪に障った?確か浅野はあなたに「ある男の札入れを掏ってきてほしいんだ」「礼は30万。
割のいいおつかいだろう」と言ったんでしたね。
スリってのはね毎回技術と経験と勝負勘そのすべてを使ってやる真剣勝負でね。
金さえ払えば犬のように喜んでご主人様に財布を運んでくると思ったら大間違いだ。
しかも断れば脅しにかかるなんて最低だね。
まあそのあたりのところをちょっと浅野に思い知らせてやろうと思ってね。
あなたは更生したわけではなかったのですか?じゃあどうしてピザ屋で働いてたの?無職じゃ社会生活営むの大変なんだよ。
住む部屋だって借りられないし。
しかしそれにしても石井に二度接触して札入れをすり替えるとは随分無茶をしましたねぇ。
陣川君のために。
僕のため…?
(奈緒)なんの事かわかんないなぁ。
浅野を逮捕させたいのなら石井から掏り取った札入れを浅野に渡し警察に密告するだけでよかった。
しかしそれだけではそもそも密輸を企てた石井の逮捕には至らなかったでしょう。
神戸君。
はい。
仮にそうなった場合この一件陣川君のした事はどうなっていたでしょう。
はっきり言って勝手に事件に巻き込まれ経理の仕事も放り出してその上上海ルート解明に向けて重ねてきた生活環境課の努力をぶち壊しにした…。
そういう印象ですね。
最悪です。
じゃあ奈緒さんは僕のために…。
だから知らないって。
奈緒さん…ホントの事を言ってください。
じゃあ言う。
陣川さんの運命の人は私じゃない。
その人はきっとどこかで陣川さんに出会うのを待ってるよ。
奈緒さん…。
奈緒さん僕ホントに…。
さようなら。
行きましょうか。
ええ。
桧原さん。
もしあなたがあなたの友達のように本当にやり直そうとしていたら陣川君の気持ちにも応えられたのかもしれませんねぇ。
今度こそ本当にやり直してくださいね。
あなたに心を寄せる人とあなたご自身をもうこれ以上傷付けないで済むように。
奈緒さ〜ん…。
まあわかってたんですけどね。
飲めばこうなるって。
元気出してください。
今日はね珍しいもの作ったんですよ。
はい。
え…?ピザ…。
ああ…ピザ嫌だ…。
それぼ…僕のほうに。
(たまき)そうですか?はい。
ソン君!はい。
ほらつげ!キミは僕の後輩だろ!あの僕の名前は…。
はぁ…早く!まいいか。
今日はソン君で。
はい飲みましょう!ああ。
どうぞ。
飲んで忘れちゃいましょう。
忘れちゃおっか!イエイ!イエイ…。
奈緒さ〜ん!なんで…。
たまきさんそろそろ…。
2014/06/19(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season9[再][解][字]
「運命の女性」
詳細情報
◇出演者
水谷豊、及川光博 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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