(聖美)陽。
しっかりして。
陽。
しっかりして。
陽。
陽。
陽…。
(峻)検査室に入ります。
ここで待っていてください。
(聖美)陽。
陽…。
・
(繁郎)聖美。
聖美。
(聖美)行かないで。
陽をどこにも連れていかないで。
(陽)《ママはきっと俺の後にはもうどうやっても赤ちゃん産めない体になってたんだ》《だけどどうしてもドナーになる赤ちゃんが欲しかった》
(陽)《だから愛美叔母さんのおなかを借りることにした》《叔母さんに借りたのはおなかだけじゃない》《お前は叔母さんの子なんだよ》《パパと叔母さんの子なんだ》
(ひかり)神様。
お兄ちゃんを助けてください。
これ以上ママを悲しませないでください。
お兄ちゃんを助けて。
(波津子)ハァー。
何やってんのかしら。
(波津子)まだ手当ては終わらないの?まさか陽が血を吐くなんて。
・
(ドアの開く音)あなた。
繁郎。
どうなの?陽は。
(繁郎)落ち着いています。
今は一応。
(波津子)何よ?一応って。
原因は?原因は何だったの?
(繁郎)消化管からの出血。
ストレスからくる胃潰瘍だ。
じゃあ白血病の治療は?ハァ。
今の状態じゃ無理だ。
抗がん剤治療は。
そんな…。
骨髄移植をすれば抗がん剤に頼らなくて済むようになるわよね?そのことを訴えれば今度は倫理委員会だってノーとは言わないんじゃ?万が一委員会でゴーサインが出たとしても陽の今の状態じゃ移植はできない。
どうして?移植の前処置として致死量に近い抗がん剤を投与しなきゃならないんだ。
臍帯血移植のときと同じように前もって抗がん剤でたたいて骨髄を空っぽにする必要があるんだよ。
できないってこと?その前処置が。
今の陽にはそれだけ大量の抗がん剤に耐える力は…。
そんな。
移植が駄目。
抗がん剤が駄目。
それじゃいったい陽はどうなるの?死ぬのを待つしかないっていうの?抗がん剤の組み合わせを再検討して対応します。
それで様子を見ながら肝機能の回復に期待するしかありません。
回復するの?よくなるの?答えなさい。
はっきり答えて。
今申し上げたことが現段階で僕に言える全てです。
それじゃあの子は。
ねえ聖美さん。
そんな。
お母さま。
そんな…。
(峻)ちょうど意識が戻ったところです。
陽。
お母さんだよ。
陽。
ここって天国じゃないんだね?死ななかったんだ。
あんなに苦しい思いしたのに。
パパが言ってたわ。
おなかの中に少し傷ができただけだって。
だから…。
どっちみちそのうち僕は死ぬ。
どんどん悪くなってもっといっぱい血を吐いてさっきよりずっと苦しい思いをしてのたうち回って。
だったらいっそ一思いに死んじゃいたかった。
陽は強い子でしょう?夜になっても朝が来ればまた太陽は昇ってくる。
あなたは何度だって蘇る。
必ず元気になれるわ。
話したよひかりに。
話したって何を?あいつも苦しんでる。
血を流してる。
心の中から。
あなたいったい何をひかりに?陽はきっとひかりにあのことを。
こないだはっきり聞かれたの。
「ひかりを産んだのは叔母さんじゃないか?」って。
何も答えられなかった。
でもきっと陽は確信したのよ。
それでひかりにそのことを。
こうなることがあなたの望みだった?隠していた事実が表沙汰になってひかり自身も知ることになって。
それであなたの妹は笑顔を取り戻すことができるの?
(峻)責任の一端は僕にあります。
騒ぎが大きくなれば遅かれ早かれこういうことになるのは分かってた。
それでも僕は…。
あなたを責めることなんてできないわ。
あなたも陽も百合子さんも。
私には誰も責められない。
(ひかり)パパ。
(ひかり)ママ。
お兄ちゃん。
ひかり。
ママねあなたにお話しておきたいことがあるの。
おなかすいたでしょう?何とか言ってちょうだい。
ひかり。
ひかり。
・「おかあさんなあに」・「おかあさんていいにおい」あなたが赤ちゃんのころよく抱っこして歌ったっけ。
大きくなってひかりも一緒に歌ってくれたよね。
・「おかあさんなあに」・「おかあさんていいにおい」・「せんたくしていたにおいでしょ」・「しゃぼんのあわのにおいでしょ」ママ。
(愛美)血を吐いたって。
大丈夫なの?陽君。
倒れる前にひかりに話したらしいんだ。
母さんのこと。
(愛美)私のこと?
(峻)あの子がどうやって生まれたのかってこと。
陽君がどの程度確信を持っていたのかそこまでは分からないんだけど。
ひかりがとうとう本当のことを。
(峻)そのことだけは母さんに伝えておかなきゃと思って。
(星川)いやぁ。
(愛美)先生。
(星川)待ちなさい。
(星川)一杯飲んでいかないか?
(峻)病院に戻りますので。
甘いなぁ私も。
(愛美)峻のこと許してくださるんですか?結花ちゃん。
あれからどうして?報われない役回りだよ親なんてものは。
子供の幸せを願っているだけなのに当の本人は親の身勝手としか受け取ってくれない。
今になってよく分かる。
君たちのお母さんの気持ちが。
私たちのお母さんの?聖美さんがよく言っていた。
お母さんは支配者だ。
娘を自分の好きなようにコントロールしたいだけだって。
男親と女親の違いはあるんだろうがお母さんも結局は私と同じ。
ただ娘がかわいくて幸せを願っていただけ。
まあもちろん言うことを聞いて私と一緒になるべきだったなんて言うつもりはないよ。
(愛美)先生ったら。
(星川)うん。
ああ。
もし本当に結花ちゃんと峻が結婚したら私たち家族になっちゃいますね。
(星川)家族?やっぱり子供は絶対つくってほしいな。
そしたら私たちその子のおじいちゃんとおばあちゃんですよ。
おじいちゃんとおばあちゃん。
それもいいかもしれないな。
(陽)《頼むから消えてくれ》《俺の目の前からいなくなってくれ》《早く行っちゃえよ。
本当の母親のとこ行っちまえ!》ひかりに話す?ある程度のことを陽から聞いてしまったのは間違いないわ。
でもあの子がそれをどう受け止めているか。
ちゃんと私たちの言葉で補って誤解のないように伝えてあげないと。
うん。
まあ誤解のないようにって言ったってさ…。
ひかり。
いつからそこに?こっちへいらっしゃい。
さあ。
言わないで。
何にも言わないで。
聞いたら分からなくなる。
どうしたらいいのか分からなくなっちゃう。
お兄ちゃんの言ったことが本当だったらひかりはこのうちの子じゃなくなるの?パパとママの子じゃなくなるの?せっかく仲良くなれた叔母ちゃまも叔母ちゃまじゃなくなっちゃうの?自分が誰なのか。
きっと私分からなくなっちゃう。
ひかり。
お兄ちゃんはひかりに何て言った?お前が生まれたときのことをどういうふうに話したんだい?大事なことだから勘違いがあっちゃいけない。
だからパパもママも勇気を出してホントのことを話そうって。
お兄ちゃんは。
お兄ちゃんは…。
・
(峻)院長。
繁郎伯父さん。
どうした?峻君。
(峻)陽君が。
姿を消しました。
何だって?お兄ちゃんが?陽。
陽。
(百合子)ったく何やってたのあなたたちは!
(百合子)気付かなかったで済まされると思ってるの?
(看護師)申し訳ありません!
(看護師)まさかあの体で病院から出るなんて思ってもみなくて。
何があった?
(百合子)私の監督不行き届きです。
(峻)僕も油断してました。
そんなことどうだっていい。
早く陽を捜し出して。
(百合子)産科と内科に連絡して。
(看護師たち)はい!
(百合子)急いで!
(看護師たち)はい!ひかりは家に戻ってなさい。
私も捜す。
お兄ちゃんの秘密の場所。
秘密の場所?教えてもらった抜け道とか隠れ場所とか。
小さいとき病院の中で遊んでて。
よし。
パパと一緒に来なさい。
あっ。
(弘明)話は聞いた。
こっちには見当たらない。
(峻)はい。
(弘明)ハァー。
ひかり。
おいで。
(百合子)失礼します。
(百合子)失礼します。
(峻)陽君?パパ。
・どうした?これって。
まさかここから外へ?ハァー。
陽。
陽。
どこにいるの?陽!流れてしまえ。
俺の血全部。
陽がいなくなった?あんな体でいったいどこへ?病院中くまなく捜しました。
でもどこにも。
どうして?陽の無事を願ってお母さんにお参りしてきたところなのに。
お母さん?あなたのお母さんよ。
私の?忘れたの?お命日でしょ。
あなたたちが結婚した日じゃないの。
ああっ。
だから思い切って初めてお母さんのお墓参りを。
母のお墓に行ってくださったんですか?お位牌の代わりにずっとこの観音様を拝んでた。
毎日うちのご先祖さまと一緒にね。
母のために毎日?せめてもの罪滅ぼし。
申し訳ないと思ってたのよ。
嫁にくるなら母親と縁を切れだなんて。
そんな残酷なことをしといて朝晩のお焼香一つで許されるわけがない。
だから一度はお墓へ行って手を合わせたいって前々から。
私はどんな死に方したって構いません。
極楽なんか行けなくたっていいんです。
だからどうか陽をお守りください。
陽の命だけは…。
お母さま。
愛美?
(呼び出し音)あっ。
ひかりちゃん。
よかった。
出てくれて。
ごめんね。
あれからメールも電話もちっともお返事できなくて。
でも峻からあんたのこと聞いてどうしても心配で。
何とか言って。
一言でいい。
声を聞かせてちょうだい。
ひかりちゃん。
私よ。
私よ愛美。
2014/06/20(金) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #59[字][デ]【愛すべき命篇〜失踪…】
陽(上遠野太洸)のドナーとして認められず落胆したひかり(小林里乃)は愛美(三輪ひとみ)のもとへ。聖美(東風万智子)は自分の罪が皆を苦しめていると心を痛め…。
詳細情報
番組内容
陽(上遠野太洸)は、10年前に何があったのか、自分の憶測をひかり(小林里乃)に話すが、その直後に吐血し、容態が悪化する。聖美(東風万智子)は繁郎(原田龍二)から、今のままでは陽に骨髄移植を受ける体力がないと告げられ、言葉を失う。
その後、聖美は意識が戻った陽から衝撃的な話を聞く。ひかりがどうやって生まれたのか、妹に伝えたというのだ。兄の話に深く傷ついたひかりは聖美を拒絶。
番組内容2
ついに聖美は、ひかりに事実を打ち明けようと決意するが…。
その矢先、陽がとんでもない行動に出てしまう。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:西本淳一(東海テレビ)
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
ご案内
東海テレビ昼ドラをもっと知りたい方に!
【公式サイトURL】http://tokai−tv.com/seibo/ 昼ドラ公式ツイッターアカウント@hirudoraTokaitv、LINEアカウント@hirudora、YouTube東海テレビ公式チャンネルも好評配信中!
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32724(0x7FD4)
TransportStreamID:32724(0x7FD4)
ServiceID:2080(0×0820)
EventID:10911(0x2A9F)