9NHK高校講座 地理「食と農業の世界地理」 2014.06.20

世界中に数多くの料理がある中で世界遺産として認定されたのは和食の持つ文化的価値です。
四季折々の自然が生み出す豊富な食材と季節を映した美しい盛りつけ。
そして正月のおせち料理のように家族や地域を結ぶ社会的な慣習などを保護し後世に伝える必要があるとして認定されたのです。
中田敦彦です。
ドミニクです。
食はその土地の環境とその環境に住む人々の暮らし方と切っても切れない関係にあります。
つまり和食は日本っていう土地で生まれてなかったら和食になってなかったって事?そうですね。
当たり前のようですけどその土地その場所の条件環境があるからこそその土地の食材がありその国の食が生まれる。
今日はそんな食と農業のお話です。
私食べる事は大好きですけど農業ってあんまり考えた事なかったかも。
そうですよね。
まずはそもそも農業ってどんなものなのか見てみましょう。
はい。
食べ物を安定して確保する方法として人類が生み出したのが農業です。
飢えの心配が減り人口が増え小さな集落はやがて都市国家になっていきます。
多くの人口を支えてきたのは二大農作物…西アジアなど降水量の少ない地域では麦類などの畑作。
降水量の多い東南アジアなどでは稲作が発達しました。
世界中にはいろいろな農業の形があります。
その農業の形を決めるのが…自然条件とは気温や降水量そして地形や土壌の事。
農業は収穫までに長い期間がかかります。
その間に例えば台風や大雪などがあるとせっかく育ててきた作物が収穫できないという事も起きるのです。
つまり100%人間の思いどおりにはならないというのが農業なのです。
大雪の被害や台風の洪水とかで野菜とかの値段がもううんと上がっちゃったニュースありましたよね。
ありました。
つい最近にもありましたからね。
自然条件は人間の努力で克服する事も可能なんですよね。
ここで問題です。
えっ何ですか?こちら。
さあドミちゃんこの写真は一体何だと思いますか?きれいなアートに見えるんですけど。
確かに。
これね拡大したものを見せます。
こちらになります。
これ説明しますね。
折り紙みたいに見える。
そう何か折り紙みたいですけど実はですねこれ南米……を衛星から撮影した写真です。
きれい。
これはね中心に集落があってここに人が住んでいてそこから放射状に畑が延びている。
すごいきれい。
ねえ。
これは?CDがいっぱい並んでるみたい。
あ〜CDショップでね。
実はですねサウジアラビアの砂漠に360度回転するアームで地下水を散水して作っている小麦畑。
小麦畑?水を回転させてまく訳ですよ。
だからこの丸い所だけ小麦が育ってる訳ですよ。
そうなんだ。
砂漠に。
そういう事をして人類はずっと自然に挑戦して農業を改革して少しでも多くの食料を得る努力をしてきたという事ですよね。
世界中にはその国の事情に合ったいろいろな農業の形があるという事でございます。
それではちょっと見てみましょう。
もともと小さな社会で自分たちが食べる分だけを作ってきた昔ながらの焼畑農業。
森林や草原を焼き払ってつくられた畑では芋やとうもろこしなどが栽培されています。
焼畑は数年ごとに転々とします。
耕作を放棄した土地が森林として回復するのを待って再び焼畑を行うのです。
今もアフリカや南米の熱帯地域東南アジアで行われています。
焼畑のメリットは森林や草原を焼く事で病害虫の駆除と殺菌ができるだけでなくその灰は天然の肥料にもなるのです。
こちらは多くの資本と最新の農業技術を投入して大規模生産を行い商品としての農作物を作る…アメリカやオーストラリアなど新大陸といわれる場所で発達しました。
トラクターやコンバインなどの大型農機具を利用して小麦や米とうもろこしなどの穀物を栽培しています。
飛行機で種を蒔いたり農薬を散布する事もあります。
少ない人数でより効率的な農業が行われています。
見渡す限り山一面に広がるのは全部田んぼ。
ここでは…南アジアから東アジアにかけての平野や棚田で多く行われる農法です。
農作業は村人総出。
降水量が多く夏に高温になるこの地域では世界のお米のおよそ90%が生産されています。
飛行機で種蒔くのすごかったですね。
あれってしっかりちゃんと蒔けてるのかなって思いますけど。
そうでも蒔けてるんでしょうね。
飛行機が去ってしばらくしてからバラバラバラバラってね。
あれはすごい。
すごい。
やっぱりすごくお金をかけてつくる農業と昔からずっと変わらない農業があるんですよね。
いろんなのがあるんでしょうね。
世界中にいろんな農業の形がある理由を聞いてみましょう。
永田淳嗣先生お願い致します。
(永田)よろしくお願いします。
違いをもたらす要因どんなものがあるか?アメリカ人とかは何だろう?大ざっぱだったり…。
性格?性格的にそっちの方が楽だからみたいな。
東南アジアは?細かい作業が好きだからみたいな。
最後にはそれが利いてくると思うんですけれども。
でもやっぱり最初は自然条件で大きく決まってきます。
それからもう一つはやっぱりそれぞれの農業が行われてる社会条件。
社会条件って何ですか?一つ例を挙げると…たくさんの人が住んでるかどうかという事と農業の形に関係があるんですか?そうですね。
人口密度と言ってもいいかもしれませんけどどれくらい人がある場所に集中しているとかいないとか…ていう事が農業の形に影響してくるという事ですね。
今見てきた世界のいろいろな農業をですねどれだけ多くの人土地それから肥料や農薬あるいは機械といった資本を使っているかという点から比べてみましょう。
企業的穀物・畑作農業は人はとっても少ないんですね。
だけどもやたらと広い土地を耕作していて飛行機とかですね大型の機械とか資本をたくさん使っている。
そういうのをいうんですね。
お金と土地は使うが人は使わない。
次にですね…たくさんの人を使って…。
使いました。
全体としての土地はそんなに広くない。
肥料や農薬なんかは使う事が多いんですけれども大きな機械とか使っていないので資本は中くらいと。
じゃあ対照的ですねアメリカ的なものと。
最後にですねこの焼畑農業。
もともと人が少ない所で休んでる土地を含めるととても広い土地を使うんですけれども肥料や農薬とかあるいは機械はほとんど使いませんから資本はとても少ない。
そういう農業となるんですね。
ただ企業的な穀物畑作農業というのはですね同じような質のそろった農産物を安く大量に生産できるという事で貿易がどんどん自由になってくると世界中に輸出されるようになってきてるんですね。
はぁ〜。
ただ安いものが大量に入ってきたら各地で伝統的に行われてきた農業ってのは大打撃なんじゃないですか?そうですよね。
だから人手をたくさん使うような農業っていうのはですねなかなかそういう大規模な農業に太刀打ちできなくて衰退していくっていう事になりかねない。
なるほど。
それと一緒に育まれてきた風土とか文化っていったものも消えていく事になるかもしれない。
えっじゃあせっかく世界遺産になった和食も消えちゃうって事ですか?あ〜確かに。
日本の農業も衰退し始めたりしてるんじゃないですか?そうですね。
その辺りのお話をしてみたいと思うんですけれども。
日本人というのは当たり前だと思ってるかもしれないですが…世界のいろんな農業と比較してなかなかすごいところがあるんですね。
すごいところってどこだろう?そのすごさを3つの特徴から示してみたいと思います。
まず安定性という事なんですが…豊作とか不作とかたまに聞きますけども。
畑作の場合だと取れない時はいつもの年の半分ぐらいにどんと減ってしまう。
激減する事がある。
ところがお米はですね今年は豊作だと言ってもプラス10%ぐらい。
今年は不作だって言っても9割ぐらい。
変動の幅が狭いんですね。
そういう事ですね。
2つ目が持続性。
同じ田んぼで500年も1,000年もですね毎年稲を作り続ける事ができる。
1,000年作れるってすごいですよね。
すごい。
田んぼはなぜ1,000年もの間同じ場所で作り続けられるのでしょうか?実はその秘密は田んぼに毎年水を張る事なのです。
苗を植える前に田んぼに水を張り雑草ごと土と水を混ぜる作業を行います。
こうして田んぼには水と共に新しい栄養分と酸素が運ばれ軟らかくなった土に行き渡ります。
つまり毎年水を張る事でリセットされ栄養豊富な新たな田んぼとなって稲を育てるのです。
さて田んぼのすごさ3つ目は…えっ一粒から?ドミちゃん分かります?おっいいね。
1個から100個できたらすごいよ。
100倍っていうだけでもすごいんですけど。
実はですね1,000倍以上取れるんです。
1,000倍?すごい。
つまり4粒のお米でお茶碗1杯分という事。
小麦というのが大体100倍ぐらいというふうにいわれてますから。
じゃあ小麦の10倍も生産性がある?はい。
だからどれだけお米が優れているかというのは分かると思うんですけれども。
お米の底力ってやっぱりすごいですね。
すごいね。
中田さんとかドミちゃんとか一日に3食お米の御飯って今食べてますか?すごい白米とか大好きなんですけど…本当一日2食?お米。
米いけます。
食べてる方だね。
いや僕…それぐらいですね。
確かに今お米の再評価っていうのが高まってはきてるんですけれどもやっぱり昔に比べるとねみんなが食べるお米の量ってだいぶ減ってきてるんですよね。
3食お米の日本家庭って少ないでしょうね。
そうですよね。
水田稲作を中心にしてきた日本のこの農業というものは今いろんな意味で難しい事態に直面してるんですね。
農業を主な仕事とする人はこの40年でほどに減少。
しかもその担い手は65歳以上が60%を超えている状態です。
つまり農業から若者がいなくなっているのです。
農業が一概に魅力がないのかっていうとどうなんだろうなっていうのもありますよね。
実際僕ロケでれんこんを作ってる農家さんに行った事があるんですけどそれは若い方がやっててどうしてそのれんこん農家を今やってるのかっていったら…。
その方バンドマンもやってるんですけど。
れんこん農業だと好きなタイミングでれんこんを掘ればいいお金になると。
僕は思ったんですけども。
実はちょっと面白い取り組みがあるって聞いてるんで私ちょっと調べてみました。
トリプルGが…
(ドミニク)
2013年7月に画期的な車がデビュー。
…ってこれ車?実は農業用のトラクターなんです。
エアコンの効いた革張りシートの運転席で音楽を楽しみながら農作業ができる。
このトラクターをデザインしたのはあの跳ね馬マークで有名なイタリア車の元デザイナー…
いろいろ調べてみるとひょっとしてこれもうかるなこれ俺が入ってく意味あるんじゃないかなと思って頂いたり。
もう疑いもなく今の農業以外の方たちに農業に入ってきてもらわないと農業なくなるという事です。
だからそれ以外の人たちに…
ここは子供の職業体験施設。
若者にもっと農業に参加してもらうために子供の頃から農業に興味を持ってもらう作戦なんだとか
この大きさといい迫力といいかっこいいと思います。
そしてもう一つ注目すべきものが…
いや…いきなりどうした?いやいやいや。
いやいやいやっていうか…。
これ実は世界的デザイナーの滝沢直己さんの作品なんですよ。
作品の説明はさておき。
どうですか?どうですか?っていうかかっこいいね。
いいでしょう?で実はここにクッションが入ってるんですよ。
膝にね。
次にここ。
スマホが汚れないようのポケットです。
はぁ〜スマホ入れれるの?今っぽいね〜。
すごいですね。
あのトラクターに乗ってたらかっこいいよね。
かっこいいですか?そしたら若者が農業に興味持ちそうですよ。
農業にとって畑や田んぼっていうのはほかの仕事にとってのオフィスとかショップとかそういう位置づけになる。
って事はやっぱりファッションが楽しめるとか働く場所の環境が快適だとかそういう事も若者を引き付けるには重要なんじゃないかって…。
やり方しだいでこれからも農業っていうのはどんどん楽しくなっていきそうですね。
そうですね。
人類にとって食料というのはなくてはならないものですがそれを生み出すのが農業という事ですね。
ですからこれからも世界のいろんな場所の人たちが工夫とか努力を重ねながら多様な農業が私たちの生活を豊かにしてくれるといいと思います。
分かりました。
先生今日はありがとうございました。
今日いかがでしたか?焼畑っていうのも初めて知って本当に勉強になりました。
なりました?一番入ってきたのが焼畑?あんな農業のしかたがあったんだって。
確かに。
ほかの国の農業のしかたって想像した事ないですもんね。
いろんな農業のやり方があってそれでいろんなおいしいものができてると。
食べ物に感謝です。
ねえ。
これからもおいしいもの食べ続けたいもんね。
これからもいろんな人が農業を頑張ってくれる事を祈ってます。
という事でこれからも世界中のあんな事こんな事…。
(2人)いっぱい知っちゃおう!しかし気象に収穫が左右されるなど今も農業は…つまりその地域の人口密度と歴史的背景によって農業の形が決まるのです。
水田稲作のすごさは3つ。
毎年収穫量があまり変わらない安定性。
1,000年も同じ場所で作り続けられる持続性。
そして1つの田んぼからの収穫量の多さ生産性です。
2014/06/20(金) 14:40〜15:00
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 地理「食と農業の世界地理」[字]

人・モノ・情報が地球規模で行き交う現代。国や地域を越え、多様な社会や文化を理解し合うことが不可欠。“世界の今”を読み解く「地理」は、未来を切り開く力となる。

詳細情報
番組内容
農業は、人類の生存に欠かせない食料を生産するとても大事な産業だ。今回は、農業という産業が抱える課題や可能性について、地理的視点で考えてみよう! 「食と農業の世界地理」 <学習のポイント> (1)そもそも「農業」とは? (2)農業のかたちを決める多様な要因 (3)稲作の深い話
出演者
【講師】東京大学准教授…永田淳嗣,【出演】中田敦彦,ドミニク,【語り】安元洋貴

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
バラエティ – その他
趣味/教育 – 大学生・受験

映像 : 480i(525i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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