特命係長・只野仁 2014.06.21

(司会)皆様お待たせをいたしました。
(司会)それでは島崎社長よりごあいさつをいただきます。
(拍手)
(島崎浩介)本日は私の出版記念パーティーにお越しいただきましてまことにありがとうございます。
今回出させていただきました本は15年に及ぶシルバー電器社長としての経験をまとめたものです。
我が社の経営体制について解説しております。
(坪内紀子)おなかすいたわね…。
(足立和美)早く乾杯して何か食べたいですね。
ねー。
あ…そういえば島崎社長の息子さんと婚約した女性って電王堂の人なんですって?ああ…営業一課の立花有香さん。
(和美)ほらあの人。
さて話は変わりますが我が不肖の息子洋一にもやっとお嫁さんが決まりました。
(紀子)将来はシルバー電器社長夫人か。
うらやましい…。
だから私たちもこのパーティーでいい人ゲットしましょうよ。
ゲットしようにも…こんなに人がいたんじゃ誰が誰だか…。
(紀子)あなた…。
なんであなたが受付やってるの?
(只野仁)さあ…。
なんか上から「やれ」と言われて。
シルバー電器は電王堂のお得意様だからでしょう。
さっきはいなかったじゃない?遅刻しちゃって…。
はあ?あ出席者名簿見ていいですか?ダメですよ。
個人情報なんですから。
(せき払い)どういう人がいるのかちょっと見るだけよ。
じゃあちょっとだけ。
ウフフフフ。
もういいわよ!
(ドアが開く音)じゃあ僕は仕事があるんで先に。
日曜日なのに大変ね。
ああ…幸せのツーショット。
よかったら…。
勝手にツーショットにならないで!ぐあっ!いててて…。
ああ…。
好きよ…。
(君島あや)「電王堂のシンデレラ」か…。
うらやましい。
(小島エリカ)玉の輿かあ…。
(井上さおり)私も玉の輿に乗りたーい!
(佐川和男)ハハハ…若いね君たち。
玉の輿ゲットしたって幸せになれるかどうかわからないんだよ。
問題はここ。
愛があるかどうかなんだよ。
わあっ!わっ!びっくりしたなもう…。
課長の結婚生活にはちゃんと愛があるんですか?あ…あるよそりゃあ。
どうでもいいじゃないの!仕事しなさいよ仕事。
(山吹一恵)私は玉の輿なんか興味ないな。
普通の人でいい。
(遠藤雅子)希望を持たなきゃダメよ。
だからそれが私の希望なの。
僕はいいと思いますその考え方。
そうですか?みんなが狙ってるようなやつより残り物の方が…。
ゲットしやすいですしね。
そうじゃなくて!え?失踪?
(黒川重蔵)営業一課の立花有香が月曜以降会社を無断欠勤している。
上司がアパートを訪ねてみたら日曜から帰宅した形跡がないそうだ。
日曜日っていうとあのパーティーのあとか。
島崎社長夫妻から「息子の婚約者をぜひ捜し出してくれ」と泣き付かれてな。
シルバー電器は電王堂のお得意様ですからね。
それだけじゃない。
島崎社長とは大学時代からの付き合いでな。
将来の夢を語った仲だ。
なんとかしてやりたい。
警察に捜索願は出したんですか?いや出してない。
マスコミに漏れてスキャンダルになるのを島崎社長は避けたい。
そんなのんきな事言ってていいんですかね?玉の輿に乗って幸せの絶頂の女がそんな自分から姿を消すはずないでしょう。
誘拐とか何か事件に巻き込まれたんじゃないですかね。
その恐れはある。
だからこそ一刻も早く事の真相を突き止めろ。
それが今回の特命だ。
わかりました。
(島崎)お願いします。
(島崎)有香さんを捜し出してください。
わかりました。
我々にお任せください。
(森脇幸一)彼女の行方に何か心当たりありませんか?いや…。
(弘美)洋一調査会社の方よ。
有香さんを捜してくださるの。
(洋一)そうですか。
ぜひお願いします。
どうぞ。
洋一。
パーティーのあとはもう有香さんと連絡が取れなかったんだよな?ええ。
僕は仕事で先に会場を出て…。
その夜に電話した時には自宅も携帯も留守電になっていました。
社長ご夫妻はいかがですか?私たちは…。
私はこれから仕事だ。
親子そろって忙しい人ね。
それじゃ。
車で送りましょう。
私ここで買い物していきます。
そう?じゃあここでね。
はい。
じゃあ失礼します。
それが最後という事ですね。
やっぱり警察に通報した方が…。
(島崎)いや。
ここはとにかくこの人たちに任せてみようじゃないか。
お願い出来ますね?承知いたしました。
とは言ったものの雲をつかむような話だねこりゃ。
いやちょっと待ってくださいよ先輩。
うん。
ホテルで見たのが最後。
でもホテルで何かが起こったとは限らないですよね。
家に帰る途中何かのトラブルに巻き込まれたとか。
いやそれとも…。
あれ?とりあえずホテルから当たってみるしかねえだろ。
当たるってどうやってですか?お願いしますよ。
この人奥さんが家出して困ってるんですよ。
にっちょ…このホテルのロビで…妻が…男といるの…見かけたって…がいて…。
「日曜日このホテルのロビーで妻が男の人といるのを見たっていう人がいて」。
せめて男が誰なのか確かめたいと。
監視カメラの映像って録画してあるんですよね?それをちょっと見せていただけませんか?しかしそういった事にはご協力出来ない規則なんですよ。
いやいや…そこをなんとか。
娘…ママ…思って泣いつんすお…。
なんて?「ママママ」っていつも泣いてるらしいんですよ。
娘さんが?可哀想に…。
いや私にもね娘がいますんでお気持ちはよくわかりますよ。
娘さんお幾つなんですか?7歳です。
ああー可愛いでしょうね。
そりゃあもう…。
あ写真見ます?ああ見ます見ます。
ああ可愛いー!これ何年前の写真ですか?去年です。
去年です。
え?去年?プール?ああ可愛らしい。
このピースもね。
あこれ何食べてるんだろう?これ。
先週の日曜日午後3時以降だな。
親バカ!あっ目元そっくりパパに。
よしこのあとだ。
ん?うーんわかんねえなやっぱりこれじゃ…。
本人が目の前にいりゃ「こいつだ」ってわかるだろうけどな…。
いてっ…。
お前バカ野郎あきらめねえでなんとかしろよ。
いやなんとかって言われても。
なんとかするんだよ…。
(あいみん)何を見てらっしゃるんですか?ご主人様。
いや…なんでもないよ。
(りりたん)あー!エッチな写真ですね。
メッ!でございますよ。
あそうだ。
写真でも撮ろうか。
はいご主人様。
これでお願いします。
はい500円になりまーす。
商売するの?そんな事してる場合じゃないですよ。
いいから。
払うたる500円。
払うたるわ並べ並べ。
よーし。
はい123。
(3人)萌えー。
はあ…なんとかしろって言われてもさ…。
どうにもなりませんよこれは…。
もしもし先輩ですか?この男電王堂の社員かもしれませんよ。
また「電王堂の社員かもしれない」って…。
まともな社員はいねえのかっつうの。
あっ!ちょっと気を付けてよ!はあ…。
よいしょよいしょ…。
うわわ!ん?あああ…なんなのよ!
只野仁大手広告代理店の窓際係長
しかしそれは表の顔にすぎない
彼には会長直属の特命係長としてさまざまなトラブルを解決するというもうひとつの顔があった
(野村俊夫)西山君。
ダメだよこの企画書。
コストと利益をちゃんと計算しなきゃ。
(西山聡)すいません。
すぐやり直します。
まったく出来の悪い部下が多いと疲れるね。
肉ばっかり付いて。
肉か。
肉か。
(久保順平)有香ちゃんまだ欠勤ですよ。
風邪治らないんですかね?他の男と婚約した女に興味はないね。
まったくですよ。
野村様の求愛を断るなんてどうかしてますよ。
お前はどうして人の心の傷をこうほじくり返すような事を言うんだ?お前は。
こうしてやろうか?ああ…ありがとうございます。
うれしいんだ…。
西山聡。
営業二課の社員です。
営業二課っつったらお前…。
失踪した立花有香の隣だな。
よーし。
こいつはどんなやつだった?それがまったくさえないやつで仕事もいまいちで。
女にもモテないようです。
それに太ってる。
でも1つ面白い情報が入ったんですよ。
なんだ?この西山聡立花有香にプロポーズした事あるんですよ。
あらら…。
もちろん有香は断ったそうなんですけど。
フラれた恨みで彼女を罠にはめてどっかに拉致ったか?最悪殺しちゃったとか…。
バカ野郎お前!縁起でもない事言うんじゃないよお前。
すいません。
あの…。
ここいいですか?あどうぞ。
あ…あっやっちゃった…。
すいません…。
あこれどうぞ。
あありがとうございます。
アハハハハ…。
あどうも…。
あ営業二課の方ですか?はあ…。
立花有香さんお元気ですか?彼女を知ってるんですか?ええ有名ですよ。
シルバー電器の社長の息子さんと婚約されたんですよね?そういえば昨日新宿で立花さん見かけたな…。
えそんなはずは…。
え?いや…今彼女風邪で休んでいるもので外出歩くはずないなと思って…。
そうですよね…。
きっと人違いでしょう。
怪しい男?有香さんと同じ部署にいる西山という社員です。
その男が有香さんに何かしましたか?彼女の失踪になんらかの関わり合いを持っている事は確かなようです。
いや…うちの社員がとんでもない事を。
いやいや…。
それは真相がわかってからの話にしましょう。
今はとにかく有香さんを捜し出す事に最善を尽くしてください。
わかりました。
つい堅苦しい会話になってしまうな。
いやあまったくな。
また昔のように「俺」「お前」で話したいな。
そうだ。
有香さんを無事見付け出したら久しぶりに一杯やろう。
そうだな。
え?デートに誘われたって誰から?この間のパーティーで会った人。
お父さんが大学の学長でその人も将来は教授になるらしいです。
アハッアハハ。
いつの間に…。
(携帯電話)はい?ああ…あなたから電話なんて珍しいわね。
(新水真由子)実はね今夜合コンがあるんだけど女性が1人足りなくなったの。
でこの親切な真由子ちゃんがあなたの事誘ってさしあげようと思ってお電話したの。
えー?どうしようかしら?男の人はね医者とか弁護士とかエリート君ばっかりなんですって。
あら…そう。
あでもあなたモテモテだから合コンなんか行く必要ないわよね?まあね。
でも人が足りなくて困ってるなら行ってあげないでもないけど。
ああやっぱりいいわ。
だって忙しいのに悪いもの。
行ってもいいって言ってるでしょ!先輩。
こんな悠長な事やってていいんですか?今のところ手がかりあいつしかいねえんだ。
有香をどっかに拉致ってるなら必ずそこに行くだろう。
あれ?あれ?あれ?なんだと?おい…森脇。
まさか…。
クソッ!ここから逃げたな。
まるで尾行されてたのわかってたみたいですね。
いやそんなはずはねえ。
一体どうなってんだ?
(一同)乾杯。
何よこれ?私に文句言わないでよ。
(瀬尾広子)田中さんは外務省にお勤めなんでしょ?
(田中)ええまあ。
佐藤さんは弁護士。
吉田さんはお医者様。
ああん目移りしちゃう…。
あの子エリートならなんでもいいみたい。
(田中)よう!島崎じゃないか。
おう。
田中。
あのこちらは?島崎。
シルバー電器の社長の息子ですよ。
(広子)ええーすごい。
残念ながらこいつにはフィアンセがいますよ。
(女性)お待たせ。
行きましょう。
見なかった事にしてくれ。
じゃあな。
(佐藤)婚約者がいるのに女遊びか。
(田中)昔からああいうやつなんだよ。
(吉田)奥さん苦労するぞ。
幸せそうなのは上辺だけだったのか…。
肩書きやルックスよりやっぱり男は中身よね?
(真由子)ああーん中身がいっぱーい。
うーん…おいしい。
合コンか…。
いい男いたのか?いるわけないじゃない。
いたら今頃あなたとここにはいません。
そうか。
残念だったな。
んーもう。
あそんな事よりねイヤなもの見ちゃったの。
どうした?婚約者がいるのに女と遊んでる男。
珍しくもないだろうそんなやつ。
シルバー電器の社長の息子だかなんだか知らないけどさ。
え?ん?どうかした?あいや…。
(携帯電話)おう森脇か。
どうした?「先輩。
西山について面白い事がわかりました」なんだ?借金?ええ。
あいつ競輪にはまって800万も借金してたんですよ。
ところが最近になって一遍に半分返したそうで。
半分っていうと400万か。
普通の会社員が簡単に手に出来る金額じゃねえな。
そうですよね。
お前よく調べたじゃんよ。
いえいえそんな。
いいねいいね…。
ありがとうございます。
いいよお前。
(アニータ)わー400万ドル?すごい話してるね。
ドルじゃなくて円。
ちなみにチリのお金って何?
(アニータ)ペソよペソ。
ちなみに1ペソは0.22円ね。
いいねえペソ。
ねー先輩。
うわまぶ…。
わあお光ってるー!よーし。
西山さん。
うわっ!ちょっ…だ誰だ?「誰だ」じゃねえだろ。
わかば金融だよ。
え?か金ならこの間返したろ?半分だけやろうが。
残り半分どないしたん?きっと返すよ。
アテはあるんだ。
アテ?どんなアテだよ?あんた会社員だろ?400万もの金どうやって手に入れるんだ?言う必要は…ない。
やっぱり嘘か…。
(只野の奇声)
(物を壊す音)東京湾に沈めたろか?絶対返す!返すから信じてくれ!うおー!こいつ東京湾に沈めるんだったら重り何キロいるかな?一応ブロック2個用意しましたわ。
ブロック2個か…。
助けてくれよ。
金ならある人が払ってくれるんだ。
誰が?それは…。
ブロック3個だな。
言うよ…言うよ。
(ため息)調査結果のご報告に参りました。
ご苦労さまです。
西山という男が有香さん失踪の鍵を握る事がわかりました。
それは私も黒川会長から聞きました。
西山はですねある人物から金をもらって有香さん失踪の手助けをしていたんですね。
え?そのある人物が誰かわかりました。
一体誰ですか?
(ため息)あなたです。
フフ…何を言うかと思えば。
西山に我々の尾行を教えたのもあなたですよね?知らないな。
何なら今西山ここに連れてきましょうか?お願いです。
この事は誰にも…。
調査員の報酬の倍払う。
黙っててくれませんか?なんでも金で解決ですか。
そういうつもりじゃ…。
なら真実を聞かせてください。
あとの事はそれから考えます。
ここは?おかえりなさい。
この人は?
(島崎)私たちの出会いは半年ほど前でした。
(島崎)洋一が「結婚したい人がいる」と言ってこの人を連れてきた時です。
(島崎)なんて素敵な人なんだろうと思った。
洋一に嫉妬を感じました。
だからって息子の婚約者を取るなんて…。
(有香)いえ私が先にこの人に「好き」って告白したんです。
え?ダメだよ!君は洋一の…。
洋一さんが女遊びばかりしているのは知っています。
え…?でも私は…将来の社長夫人の座に目がくらんで見て見ぬフリをしようとしてました。
でもあなたの…温かくてまじめな人柄に触れるたび私は自分自身のいやらしさを思い知らされて…。
そんな…。
買いかぶりだよ。
もう…このままじゃいられない。

(島崎)私たちは恋に落ちたんです。
罪の意識はなかったんですか?ありました。
でも打ち消そうとしたんです。
復讐のために。
「復讐」?洋一は私の…息子ではないんです。
え…?
(島崎)偶然妻の日記を見て私は知ってしまったんです。
(島崎)洋一が妻の不倫で生まれた子どもだという事を。
ずっと…洋一が自分の息子だと信じ込まされてきたんです。
ずっと妻にだまされていたんです。
でも妻を憎むというより自分に腹を立てました。
何も知らず仕事と家庭を大切にして浮気のひとつもせずまじめ一筋。
そんな人生に誇りを持っていたバカな自分にね。
私は…この人と付き合う事で自分をだました妻とそしてだまされていたバカな自分に復讐しているんです。
あの島崎がか?「すべてを捨てて2人だけの生活を始めよう」。
島崎さんは彼女にそう言ったそうです。
そんな事が公になれば家庭は崩壊。
社長の地位も危なくなるな。
ええ。
そこで有香が失踪するという形にした。
それは彼女からの発案だったという事です。
西山は有香さんに頼まれて失踪の手伝いを金で請け負っているだけでした。
島崎はこれからどうするんだろう。
さあ…。
どちらにせよこの件に犯罪は絡んでいません。
あとは本人たちの問題ですから。
そうだな。
しかし…俺は島崎が少しうらやましい。
(弘美)嘘でしょ?嘘だって言って。
本当だ。
よくもそんな事が…。
(洋一)母さんや俺にすまないと思わないのか?このとおりだ。
開き直って…。
どうするつもりだよこれから。
私は家を出る。
社長も辞任するつもりだ。
(弘美)お金はどうするつもり?離婚するんならこの家を身ひとつで出ていってちょうだい。
望むところだ。
どこか田舎でも行って有香と2人のんびり暮らすよ。
言っとくけどあなたの退職金は慰謝料としてもらうわよ。
ああ。
ただし自分のために少しずつためた3000万のへそくりは持っていく。
3000万!?そんなお金…私たちに黙ってためてたのね…。
そのぐらいの権利はあるだろう?もし不満なら裁判でもなんでも起こしてくれ。

(真由子)「シルバー電器社長の島崎浩介氏が今日突然辞任を発表しました」「健康上の理由によるものという事ですが経営者として高い評価を受け今後の活躍も期待されていただけに財界からは引退を惜しむ声が上がっています」おかえりなさい。
(島崎)ただいま。
あそれ…そこに置いてくれ。
(西山)はい。
新しい社長に社長室を明け渡してきたよ。
15年の社長生活で終わってみればたったこれだけの荷物だ。
君にはいろいろと世話になった。
いや十分な報酬をいただきましたから。
それじゃ。
ありがとう。
さていよいよ2人だけの生活の始まりだ。
ええ。
えっ?婚約解消?そう立花さん急に留学する事が決まって結婚をやめてアメリカに行くんだって。
えーもったいない。
(上村真樹)玉の輿棒に振るなんて。
あ待って!そうなるとあの御曹司って今フリーって事じゃない?そうだ!
(佐川)あー無理無理…。
君たちがねお嫁さんに立候補してもその列のずーっと後ろに並ぶ事になるんだよ。
ハハハ…。
もう課長!私は留学って嘘じゃないかと思うな。
本当に好きな人と手に手をとって駆け落ちしたのよ。
駆け落ちって憧れちゃうのよね。
妄想はいいから仕事しなさい。
おはようございまーす。
あ只野さん。
あの駆け落ちするんだったら新しい部屋の敷金礼金と当面の生活費でとりあえず100万円は用意しといた方がいいですよ。
もう…なんで人の夢壊すんですか!
(携帯電話)
(一恵)うわー!
(ノック)失礼します。
悪霊退散!また何か新しい事件ですか?いや…。
立花有香がまた失踪したそうだ。
え?島崎が家を出て2人で暮らしを始めた。
その矢先有香が突然マンションから姿を消したんだ。
どうして…。
島崎にもまったくわけがわからんそうだ。
それは気が気じゃないでしょう。
でもシルバー電器の社長を辞めた人のために働く必要がありますか?だからこれは特命じゃない。
個人的な依頼だ。
島崎のために有香を捜してやってくれないか。
会長は島崎さんに幸せになってほしいんですね?わかりました。
何か心当たりありませんか?
(島崎)さあ…。
手がかりがない事には捜しようもありませんから。
それが…おかしいんですよ。
何がです?2人で生活するために持ってきた3000万円の預金通帳が見当たらないんですよ。
え…?どこにいったのやら…。
それって…彼女が持ってったんじゃないですか?え?ハハハハ…。
何言ってるんですか。
そんなわけないですよ。
おかしいなあ…。
ここに入れといたんだけど。
確かここだったっけな…。

(島崎)おかしいね…。
何かわかったか?いや。
有香の足取りはさっぱりですよ。
そうか…。
(野村)ったく何考えてんだ西山のやつ。
(久保)まったくですよ。
うちの迷惑考えてないんですから。
どうかしたんですか?いやねうちの課の西山ってやつがね急に辞めちゃったんですよ。
って只野かよ。
なんだよ…。
(久保)たまってた仕事ほっぽらかしてとんでもないやつですよ。
(野村)しょうがないから全部お前が引き継いでくれ。
(久保)ありがとうございます。
(野村)いやうれしいんだ?
(西山)あ…。
お前ら。
よう。
なんの用だ?金の話だよ。
借金なら返したろ?ほっといてくれ。
借金とは別の金だ。
島崎さんの3000万。
なんの事かな?島崎さんのなけなしの金取って2人で逃避行か。
この間はすっかりだまされたよ。
島崎さんとあんたの事祝福しそうになっちまったもんな。
こいつ黒川会長の指示で私たちの事調べてた男よ。
いつから島崎さんをカモにするつもりだったんだ?最初は好きだったわ島崎さんの事。
でも付き合ってるうちにわかったの。
いい人すぎるのもつまらないなって。
あんた前にこいつのプロポーズ断ったんだろ?あの頃は洋一しか眼中になかったから。
でも目が覚めたの。
私にふさわしいのは洋一でも島崎さんでもなくこの人だって。
失踪を手伝うフリしながら2人で島崎の金を取って逃げる計画を立ててたんだ。
ひでえ…。
あのな島崎さんはあんたと残りの人生を過ごす事だけがたったひとつの希望だったんだぞ。
あんたに逃げられてまるで…抜け殻みたいになってた。
あいにく私はあの人と人生を浪費するつもりはないわ。
お前の罪はな金を取った事より島崎さんに夢を見させておいてその夢をいきなり奪った事だ。
悪いけどもう行っていいかな?なんだとこの野郎!あいたっ…。
森脇!おい?先輩なんかこいつ強いですよ。
え?見かけで判断してもらっちゃ困るな。
俺は空手三段柔道二段だ!ハアー…ふんっ!なんだよお前…。
この間は弱いフリしてたってか?やくざだと思ったからだよ。
やくざはバックに組織があるからけんかしない事にしてるんだ。
なんだか妙な事にばっかり頭の回る野郎だな。
ねえこの男もやっちゃって。
どうする?やるか?おめえみたいなバカもほっとけねえだろ。

(西山)ふんっ!なんて脂肪だ…。
く…くさい。
息が出来まい。
キャッ!イヤッ!フンッ!ほあたあ!やった!これで目覚ませ。
私をどうするつもり?島崎さんの金を返せ。
それだけでいい。
どこだ?ねえあの3000万私とあなたのものにしない?あなたとなら退屈しないで暮らしていけそうな気がするの。
あんなやつダメよ。
ね?いいでしょ?そうしましょ?悪いけどなこう見えて俺は女の趣味はいいんだよ。
先輩ありました。
よし行くか。
金はそっくり取り返しました。
あの…まあ…人生まだまだこれからですよ。
きっといい事もあるでしょう。
それでは私はこれで。
ゼロからの…スタートか。
なんだか若い頃に戻ったみたいだ。
(黒川)俺たちがやった事はよかったのかな?彼が何もかも失うように後押ししてしまったような気がする。
でも…ほんのわずかな間でもいい夢が見れたんですから。
「若い頃に戻ったみたいだ」…彼はそう言ったんだな?ええ。
俺は信じるよ。
すべてを失ったからこそ新しいものを何か見付ける事が出来る。
若い頃と同じように彼にはそれがきっと出来る。
あ只野さん。
食事行かないんですか…?こういう只野さんも素敵。
(いびき)もうっ!『シングルベッド』
(輝美)どう?あなた好みでしょ。
(梶原剛司)ああいかにもスケベなお前向きだ。
ねえ…いつ奥さんと別れて私と一緒になってくれるの?私むちゃくちゃ尽くすわよ。
だったらどれほど尽くしてくれるのか調べてみようじゃないか。
ん?
(輝美のあえぎ声)
(携帯電話)お前か。
ああ会議が長引いてなこれから帰るから先に寝ていなさい。
ああそんなもの作らなくていいから。
大丈夫。
ああ。
あっ…ああ…。
はあ…はあ…はあ…。

(佐川和男)単なる目の錯覚だよ目の錯覚。
(井上さおり)庶務の女の子の中にも見たって人いるし。
(小島エリカ)噂じゃ何年か前あそこで自殺した人がいるって。
(佐川)嘘嘘そんな事はありません。
ねさあ仕事しましょう。
仕事しましょう。
(只野仁)あらなんか皆さん朝から随分楽しそうですね。
(山吹一恵)何のんきな事言ってるんですか。
夕べもまた出たらしいんですよ。
出た?月が?
(上村真樹)そうじゃなくて地下にある資料室の幽霊です。
なんですか?それ。
そもそも3か月ぐらい前の話なんですけど残業中のあるカップルが地下の資料室に行くと…。
(女性)あっ…ダメよこんな所で。
誰も来やしないさこんな時間に。
それに今月は財布ん中も厳しくてさ。
もうケチ…。
こういう場所でするのも悪くないだろ。
そうよね…。
(棚が揺れる音)ああ…。
ああ!いや!
(2人の悲鳴)それ以来地下の資料室で同じような体験をする人が何人もいたらしくて…。
でどうなったんですか?どうって?その2人は最後までやっちゃったんですか?
(君島あや)最低…。
(遠藤雅子)結局興味はそっちかよ。
はいすいません。
あ只野さん。
はい。
私がもし同じような目に遭ったら私の事…助けてくれますよね?僕がですか?はい!うわっうわうわー!
(さおり)本当頼りにならない男…。
でもそんな怖がりなところも可愛いかな?なんて…。
山吹君…。
(黒川重蔵)営業三課の梶原部長だ。
ここんところ階段から突き落とされそうになったり倉庫に閉じ込められたり彼の周りで不審な出来事が相次いでいる。
夕べもマンションのオブジェが倒れてきて危なく大けがをするところだったらしい。
誰かがオブジェに細工をした可能性があるって事ですか?いやそれはわからん。
梶原がいる営業三課はテレビ局を担当する電王堂の要の部署だ。
(黒川)万が一やつの身に何かがあったらうちが仕切ってるジャパンテレビのスペシャルドラマにも大きな影響が出る。
つまり梶原部長の事故が偶然かそうでないか。
もしそうでないなら狙ったのは誰か。
それを調べろって事ですか?それが今回の特命だ。
わかりました。
(足立和美)十字架に盛り塩なんていくらなんでも節操なさすぎですよ。
(坪内紀子)もう…いいから手伝って!和美ちゃんだって資料室の幽霊に取り憑かれたくないでしょ。
(和美)でも効きますかね?これ。
売店で買ったお塩ですよ。
何もしないよりマシだわ。
そうでなくても私遺伝的にそういうのを感じやすい体質だから。
ああ…はあ…。
僕も感じやすいんですよね。
特にここが…。
ああっ!あれが梶原部長か…。
いかにも仕事が出来そうな顔してんなあ。
(森脇幸一)でもそれだけにかなり敵は多いようです。
一連の事故が偶然じゃなければ容疑者絞り込むのには骨が折れそうだな。
ああそういえば先輩地下資料室に幽霊が出るって話知ってますか?ああ知ってるよ。
あんなの嘘に決まってんだろ。
そうですよね…。
どうしたんですか?いや…なんか誰かに見られてるような気がしてな。
これですか?はいこれです。
どうもすいません。
はい…。
違うな…。
気のせいだな。
(スプレーの噴射音)ああ…。
おいどういうつもりだ!すいません…。
新品のスーツをどうしてくれる!ごめんなさい…あの…直ちにすぐに…すいません…。
お前は?総務二課の只野係長と申します。
ただの係長だと?お荷物部署の総務らしくろくな人材がおらんな。
すいません不注意でした。
(林)部長コスモ製薬の田宮様がお見えになりました。
これはこれは…。
あっ林君お鞄をお持ちして。
さあさあどうぞ。
わざわざお運びいただいて申し訳ありません。
(田宮)本日はよろしく。
(梶原)あっこちらこそ。
さあどうぞ。
どうぞどうぞ。
(梶原)エリにもやろうな。
連日連夜高級クラブのはしごね…。
豪勢なもんだ。
営業三課といえば花形ですからね。
梶原部長の金の流れをきっちり洗い出せ。
もしやつが不正に手を染めているとしたら今回の事故はそれ絡みで仕組まれた可能性がある。
お待たせしましたー!マユミですー。
昨日東京さ出てきたばっかりだあ。
よかったら私とアフターしねえか?梶原部長どこに向かってるんですかね?おそらく愛人とこでも行くんじゃないかな。
愛人?ああ。
梶原部長は半年前新築のマンションを買ってる。
だがローンを組んだ形跡はなし。
におうだろ?えっ…俺?バカ野郎いいんだよお前ボケなくても…。
でもにおいますね。
だろ?バカ…。
(衝撃音)
(梶原の悲鳴)しまった…。
大丈夫ですか?
(梶原)ああ…。
いきなりそれが落ちてきて…。
もう大丈夫ですよ。
気を付けて。
どうも失礼します。
おう…悪いね。
女がいた。
お前そっちから回れ。
逃がすなよ。
はい。
どこ行っちまった…。
先輩!女どうした?こっちには誰も来ませんでした。
何?なんだよ…。
どこへ行っちまった…。
先輩…先輩これ…。
人毛だぞこれは…。

只野仁大手広告代理店の窓際係長
しかしそれは表の顔にすぎない
彼には会長直属の特命係長としてさまざまなトラブルを解決するというもう1つの顔があった
(あいみん)はいあ〜んしてください。
あ〜ん。
あ〜ん。
(りりたん)おいしいですか?ご主人様。
おいちいでちゅ。
悪いけどオムライス作ってきてくれるかな?あのケチャップでハートマーク描いたやつ。
(りりたん・あいみん)かしこまりましたご主人様。
ねお願い。
よしじゃ報告。
梶原部長でちゅが…。
バカ野郎…CIAのエージェントかもしれないだろあいつは…。
すいません。
梶原部長ですがあれだけ札びらを切ってるにもかかわらず会社の金に手を付けてる形跡がないんですよ。
あれ?そうなの?ただ妙な噂が…。
なんだ?梶原部長スポンサーから個人的にかなりの額の現金をもらってるって話なんです。
スポンサーから裏金か?なんだそれ普通逆だろ。
うーん…。
どうかしたんですか?いや…昨日の事故だけどよあの女どうやってあそこから抜け出したのかと思ってな。
現場に着いた時女は消えていた。
それにあの髪の毛はなんだ?梶原部長の身に起こった事件は幽霊の仕業だっていうんですか?ひょっとして今回の特命…ヤバくないですか?バカ野郎お前!ビビッてんじゃねえ!小学生かバカ野郎。
あっ…。
お待たせしましたご主人様。
ああありがとうありがとう。
ああっ…今この人にたたかれた。
痛いよ…。
よしよし。
痛かったんですねご主人様。
もうー!暴力はダメですよご主人様。
だって…。
(あいみん・りりたん)メッ!すまんがこれ地下の資料室に返してきてくんないか?えっ私がですか?でもほら…地下の資料室って…。
なんだまだあんな噂気にしてんのか。
幽霊なんか出るわけないだろ。
頼んだよ。
みんなの薄情者…。
こんな時只野さんがいてくれたらなあ…。
もう…。
はっ…!
(棚が揺れる音)ああっ…!ああ…はあ…はあ…。

(悲鳴)山吹さん。
あなた本当に見たの?まさか自分の部下がこんな目に遭うなんてね…。
目の錯覚って事はないんですか?ありません…。
私…本当に見たんです。
ちょっと…なんとかしなさいよ。
僕がですか…?こういう時にどうにかするのが総務の仕事でしょ。
このままじゃ私安心して仕事出来ないわー。
ええー?何よその顔。
少しは働きなさいよ。
(久保順平)聞きましたか野村様。
これはチャンスかもしれませんよ。
(野村俊夫)チャック?
(紀子)くわばらくわばら…。
今や資料室の幽霊は女子社員の話題の的。
もし野村様が幽霊の正体を暴く事が出来たら坪内様は野村様の事を…。
いやしかしなうちのおばあちゃんがいたこだったんだけどな…。
いたこ?うんだからそういう事に遊び半分に首を突っ込んじゃいけないっていう風に俺は育てられてるからそういう事はちょっとな。
野村様…まさか本当に幽霊を信じてるんですか?そんなわけないだろお前。
なんで俺がそんな幽霊を怖がらないといけないんだ。
すいません本当に。
(久保)野村様!あちあち…。
(一恵)どうして私があんな目に…。
只野さん…私怖い!只野さんのバカ…。
山吹君…。
あの…。
(川島亜紀)何か?そのお花…ひょっとしてここで自殺したとかいう噂の女子社員のお知り合いの方ですか?いえ。
じゃあどうして?いろいろと妙な噂が流れてるものですからほんの気休めでもと思って。
失礼します。
梶原部長の事故といい地下室の幽霊騒ぎといいこのところ妙な事が起こりますよね。
なんだか落ち着かねえ3か月…。
待てよ。
そうだよ。
梶原部長の事故と地下室の幽霊騒ぎ…これどっちも3か月ぐらい前から起き始めてる。
もしかしたら関係あるかもしれねえな。
先輩…。
念のため川島亜紀っていう女子社員を洗え。
川島亜紀ですね。
(アニータ)オラ…。
アニータどうしたの?その格好。
制服忘れたね。
店長にすごーく怒られたよ。
あっ…。
あっあっ痛っ…。
うん。
さあ…。
(泣き声)どうしたの?あなたの下半身私の国に似てるね。
私国思い出しちゃった。
(新水真由子)ったくもうなんなのよさっきのあれ!生本番中に急に叫び声出すなんて。
(瀬尾広子)いやー!ああー!だって本当に見えたんですってば。
2カメさんの後ろに白い手のようなものがぬう…。
ああ…。
だからってコメントすっ飛ばしてどうすんのよ。
大体ね幽霊なんているはずないでしょ。
けどこのテレビ局元はお墓だったっていうし。
呪われたりしたら広子超困っちゃう…。
もう困っちゃうのはこっちの方よ。
なーにが幽霊よ。
(飯村)新水さん新水さん。
うん?見てくださいよこれ。
アナウンス部の忘年会の時の写真なんですけども…。
うん。
マジ写ってるんですよ幽霊が。
嘘…。
(飯村)ほらここ。
(飯村)僕の後ろに女の霊が…。
うわ…。
これ私じゃん。
嘘…。
それじゃ部長よろしくお願いします。
ああ任せておけ。
スポンサーの方には俺から話を通しとく。
あっおい誰か…どうなってるんだ?おい。
(携帯電話)もしもし。
「こ…ろ…し…て…や…る…」「こ…ろ…し…て…や…る…」や…やめてくれ。
ああ…うう…。
あっああああ…。
今度はエレベーターに閉じ込められたって事ですか?ああ。
だがどうも引っかかる。
助け出された時梶原部長の取り乱し方が尋常ではなかったようだ。
女だ…女が私を殺そうと…。
女?だが助け出された時エレベーターの中には誰も人はいなかったそうだ。
つまり消えてしまったと。
幽霊みたいに。
幽霊?まさかお前梶原部長の一連の事故は会社を騒がせている幽霊の仕業とでも言いたいのか?その可能性はあります。
本当にこんなもんで…大丈夫なのか?
(久保)心配ございません。
この神社のお守りはよく効くって噂ですから。
(野村)でもお前これ…安産のお守りだぞ。
(久保)そんな事よりしっかり頼みますよ。
(久保)幽霊の正体を暴けば坪内様の心はきっと野村様の元に…。
まあそれは…まあそうなんだけどな…。
(物音)
(久保)ああ…ああ…。
(野村)なんだよお前空調かよ!お前驚かしやがってこの野郎っと…。
(久保)なんなんですかあんた…。
(野村)しかしまあ…あれだなさすがの幽霊も俺様の貫禄にビビッて逃げ出したようだな。
さすがは野村様。
すば…。
なんだろう?これは…。
(棚が揺れる音)
(野村・久保)ああああああ…。
(悲鳴)ありがとうございまーす…。
(野村・久保の悲鳴)どうかしたんですか?ああー!なんかいた!なんか出た…!ああああああ…。
どうなってやがる…。
(真由子の声)どうなってるのー?これ…。
ほらほらほらほら…。
あなたって…まるでろくろっ首みたーい…。
ほらーっ!
(真由子)ああーっ!でうちの梶原部長の事調べてくれたか?現場での評判は最悪ね。
部長さんスポンサーにベッタリで陰では「スポンサーの腰巾着」なんて言われてるわ。
そんなに評判悪いのか…。
うん。
あっそのくせ上昇志向はかなりのものらしくて何年か前梶原の部下の女子社員が梶原とそのスポンサーの板ばさみにあって会社の地下室で自殺したって話よ。
自殺…。
先輩の勘ドンピシャです。
幽霊騒ぎは川島亜紀っていう女子社員が仕組んだのに間違いありません。
どういう事だ?地下資料室で自殺したっていう噂の女子社員は川島亜紀の姉さんだったんですよ。
なんだと?名前は浅岡有紀。
腹違いの亜紀の姉です。
浅岡有紀は5年前仕事上のストレスから問題の地下資料室で手首を切って自殺したそうです。
しかも妹の亜紀は現在施設管理部所属です。
なるほどね…。
施設管理部ならコンピューターでエレベーターを外部から操作する事も可能って事ですね。
おそらく梶原部長がエレベーターに閉じ込められたのは…。
どうやら本人に直接聞いてみるのが一番よさそうだな。
でも素直に話しますかね?うん…。
あとで会おう。
はい。
うわっ!ああっ…。
会長何か?このファイル資料室へ戻しといてくれないか?資料室というと…地下の?君までつまらん噂を信じてるんじゃないだろうな?いえ…とんでもない。
かしこまりました。
これでいいか?どうも。
いかにも出そうって感じですね…。
いや…やめてよそういう事言うの。
この前まで幽霊なんて全然信じないって顔してたくせに。
だってー…。
とにかくさっさと済ませて帰りましょう。
(和美・紀子の悲鳴)なんなのよこれ…。
(和美)先輩…。
えっ…えっ…ちょっともじょもじょしないでよ。
もじょもじょなんてしてないですよー。
だって…。
(和美・紀子の悲鳴)やっぱり君の仕業だったのか…。
なんで…?悪い俺は幽霊なんか信じないタチでね。
人間の耳には聞き取れない重低音の震動でポルターガイスト現象を起こし消えるインクで血糊を演出したってわけか。
はあ…。
さあどうしてこんなマネをしたのか聞かせてもらおうか。
その墓…亡くなったお姉さんの?
(亜紀)私が初めて姉の事を知ったのは父のお葬式の時でした。
優しい姉でした。
当時進学をあきらめた私の事を知って私のために学費を出してくれたんです。
(亜紀)どうしてそこまでしてくれるんですか?私の事恨んでるんじゃないんですか?
(浅岡有紀)恨む?だって私のお母さんが有紀姉さんからお父さんを奪ったんでしょ?だとしても私たちには関係ない。
それにたとえ母親が違ってもたった2人きりの姉妹じゃない。
(亜紀の声)だけど…5年前…。
お姉ちゃん…どうして…。
確か君のお姉さんは上司とスポンサーの板ばさみになって亡くなったって聞いてるけど…。
違います!姉はそんな事で自殺をするような弱い人間じゃありません。
なんか他に理由があったっていうのか?遺品の中にあった姉の日記に書いてありました。
当時直属の上司だった梶原部長は担当する番組スポンサーの気を引くために彼らに姉の事を抱かせようとしたんです。
出来ません!いくら部長の命令とはいえ…。
いいだろう?別に減るもんじゃないし。
(梶原)相手は君の事気に入ってるんだ。
スポンサーに気に入られるいいチャンスじゃないか。
それとも何か?相手のご機嫌を損ねて会社をクビになりたいか?
(亜紀)もちろん断る事は出来ました。
でも梶原部長の機嫌を損ねれば間違いなく会社はクビにされる。
(亜紀の声)悩んだ揚げ句に…自らの命を…。
私は梶原部長に思い出してほしかった。
出世の道具にしようとして死に追いやってしまった姉の事を。
そして姉の墓の前で手を合わせて詫びてほしかった。
それで君は亡くなったお姉さんの幽霊のふりをして梶原を脅したってわけか。
ああっ…。
大丈夫ですか?先輩!女どうした?こっちには誰も来ませんでした。
こ…ろ…し…て…や…る…。
姉の死を忘れてのうのうとしている梶原部長が許せなかった。
(亜紀)これじゃあまりにお姉ちゃんが可哀想すぎる。
でも私に出来る事なんて…これくらいしかなくて…。
泣いていいんだぞ。
もう1人で我慢する事なんかない。

(黒川)一連の出来事を計画したのは梶原部長に謝罪をさせるため。
そういう事か?はい。
あの…なんとか彼女の事を大目に見てやっていただけませんか?大した実害も出てないわけですし…。
それは出来んな。
彼女の気持ちは理解出来る。
だがオブジェを押し倒したりエレベーターの中で首を絞めたり明らかに殺人未遂だ。
いや…その事なんですが…それはどうやら彼女の仕業じゃないようなんですよ。
何?彼女の目的はあくまでも梶原に謝罪をさせる事でそんなに危険な事をした覚えはないそうです。
それに女の力じゃあんなに重たいオブジェは動かせません。
だったら誰が梶原を狙ったんだ?ぶっ!何やってんだ俺…。
(久保)本当にこの世に幽霊が存在するとは…。
言うな久保。
聞きたくない聞きたくないぞ俺は。
(野村)あれは夢だ夢だったんだ。
(久保)そうですよね。
うわっ!
(野村・久保)ああっ!なんだよお前只野かよ!お前…脅かすなバカ野郎お前…。
どうかしたんですか?随分おびえてるようですけど…。
何を言ってるんだお前は。
あっ…あれ…どうも初めまして…。
おい誰に…誰に向かって今言ってんだ?お前。
誰って野村さんがおんぶしている女性にですよ。
あ…なんか悲しい事でも…。
ああー!ああっー!はあ…ああ…。
どうしたの?最近ちっとも元気がないじゃない。
うるさい…。
(携帯電話)もしもし。
はあ…なんだあんたか。
ちょうどいい。
こっちも話がある。
おおう…ああ…気持ちいい。
おい…。
先輩ここって…。
ああ…やっこさん随分と物騒なお友達を持っているようだな。
(千崎)梶原さんしばらく手引きたいっちゅうのはどういう事です?
(梶原)このとおりだ。
スポンサーの弱み探して俺たちが脅す。
そこへあんたが仲介役として現れて話まとめる。
スポンサーに恩は売れるし金にもなる。
おまけにあんたも出世出来るってわけだ。
お互いこんなおいしい話はねえだろう。
それはわかってる。
だが…。
(千崎)あんたまさか女の亡霊とやらにビビッてるんじゃねえだろうなバカくせえ。
しかしこのところどうも誰かに見張られてるような気がして…。
ならまた始末してやるよ。
5年前みたいにな。
静かにしろ!
(有紀の悲鳴)
(千崎)あのOLもバカな女だったぜ。
仕事で男に抱かれるのがイヤで揚げ句の果てに俺たちの関係までバラそうとしやがった。
可哀想に…。
これじゃ死んでも死にきれねえぜ。
なんだてめえは?君は…。
(亜紀)今の話は本当なんですか?私のお姉ちゃんになんて事をしてくれたのよ!森脇!はい!なんじゃお前ら?彼女はどこだ?ここがどこかわかって…。
やかましい!なんじゃこりゃ!うわっ!彼女はどこだ?知らねえよ…。
彼女はどこだ?知らねえよ!あっやめろ…よせ…来るな!やめろやめろやめろ…来るな…やめろ来るな…。
やめろ来るな…うわーっ!やめろ…わかったわかった話す…全部話すから…。
どうしたんですかね…?知ってる事全部言うからやめてくれ…ああ…。
それじゃ聞かしてもらおうか。
どこだ?どこだ?
(梶原)まさかあの浅岡有紀の妹だったとはな。
(梶原)どうりでよく似ているはずだ。
(千崎)姉妹そろってバカな女たちだ。
姉貴の復讐?そんな事考えなきゃもうちっとは長生き出来たのにな。
絶対に許さない!お姉ちゃんを出世の道具にしようとしただけじゃなく自殺に見せかけて殺すなんて!
(梶原)ほざけ。
結婚相手を探しに会社に来ているような腰かけOLが。
俺たち男は地位がすべてなんだ。
使えない女を道具にして何が悪い。
死んでも許さない…。
(梶原)好きにしろ。
ただし化けて出るのは昼間にしてくれよ。
こう見えても俺は早寝早起きなんだ。
ハハッ…。
(千崎)それにしてもただ殺しちまうにはもったいねえような女だな。
おう。
ちょっと…やめて!このケダモノ!あっ!ったくどうしようもねえやつらだな。
盛りの付いた犬より手に負えねえぜ。
なんだ?てめえは。
さあな…。
そのハンカチ…まさかお前あの時の…。
あっすいません…。
係長か?係長?何が「男は地位」だ。
汚ねえ手使わなきゃ出世出来ないなんてそれはお前が無能だって事だろう。
なんだと?中途半端に出世したせいでくだらねえカン違いしやがって。
てめえじゃ大物気取りのようだが実際やってる事はスポンサーの腰巾着だろうが。
てめえが引き起こした罪の深さ思い知らせてやるぜ。
係長のぶんざいで言わせておけば…。
こいつらも始末しろ。
おい!
(手下たち)へい。
先輩!死ねや。
お前…只野か…。
どうして…?俺にはもう守るもんなんてなくなっちまった。
来いや。
おらっ!
(殴打する音)
(激突音)
(殴打する音)
(殴打する音)あっ…。
(激突音)森脇!うわーっ!森脇!いってえ…。
こら…。
恩師千崎…。
あっ…。
なんで…?ま…待て…取り引きしよう。
あっそうだお前にスポンサーを紹介してやる。
(梶原)俺が紹介すれば一発だ。
スポンサーすごいぞ。
そうなりゃお前も課長…いや部長だって夢じゃない。
悪い話じゃないだろう。
悪いが俺にはそこまでして出世する理由は何もないんでね…。
いいから俺の話を聞いてくれ。
このバカめ…。
フフッ…。
うっ…あっお前は…。
お姉ちゃん?アアーッ!やめろ!ああ…。
大丈夫?はい…。
梶原のやつ一体どうしちゃったんでしょうかね?さあな…。
きっとお姉ちゃんだと思います。
お姉さん?さっきお姉ちゃんの気配がしたんです。
そうか…。
亡くなったお姉さんが守ってくれたのかもしれないな。
これで少しはお姉さんの供養になったかな?ありがとうございます。
フンッフンッフンッ…。
(あえぎ声)私を天国に行かせて…。
梶原もとんだメッキだったってわけだ。
警察にはすべて話した。
これであいつもおしまいだ。
しかしこの会社もよく梶原みたいなやつを入社させましたね。
人間誰しも新人の頃は高い志を持ってるもんだ。
だが社会の欲にもまれているうちにいつの間にか梶原のような人間が生まれてしまう。
俺たちも十分気を付けんとな。
ところで川島亜紀の処分だが実害もないところから不問にする事にした。
えっ…どうして?この間はあんなにかたくなに反対してたじゃないですか。
実はな夕べバーで飲んでたら…。
ここよろしいですか?本当ですか?他人の空似かと思ったが気が付いてみたらいつの間にか消えていた。
あっ…あの…川島亜紀さんですよね?はい…。
夕べエンゼルホテルに忘れ物をされたとかで総務宛にこれが届いてるんですが。
エンゼルホテル?はい。
これは…。
お困りだったでしょう?よかったですね。
これは…姉の物です。
遺品の中にも見付からなくてずっと探してたんです。
あなたがホテルに忘れたんじゃないんですか?そんなホテル行った事もありません。
でも本当によかったー。
ありがとうございます。
って事は夕べ俺が一緒だったのって…。
フンフンフンフン…。
私を天国に行かして…。
きゃー…。
『シングルベッド』2014/06/21(土) 01:46〜03:30
ABCテレビ1
特命係長・只野仁[再][字]

「花嫁の体は蜜の味…富豪父子がハマる罠」
「幽霊OLも昇天する…絶叫の地下資料室」

詳細情報
◇番組内容1
電機会社社長・島崎の息子の婚約者・有香が失踪する。島崎の友人でもある黒川は、只野に有香を探すように命じる。捜査をする内に、電王堂の社員・西山という男が浮上する。
◇出演者1
高橋克典 櫻井淳子 永井大 蛯原友里 田山涼成 近江谷太朗 斉藤優(パラシュート部隊) 三浦理恵子 梅宮辰夫
【ゲスト】綿引勝彦 辰巳智秋 川村ひかるほか
◇番組内容2
相次ぐ不振な出来事に巻き込まれている営業三課・梶原の周辺を探るよう黒川に特命を受けた只野は、捜査の過程で電王堂の資料室での幽霊騒動に結びつき、意外な事実を掴む。
◇出演者2
高橋克典 櫻井淳子 永井大 蛯原友里 田山涼成 近江谷太朗 斉藤優(パラシュート部隊) 三浦理恵子 梅宮辰夫
【ゲスト】佐藤寛子 名高達男

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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