土曜プレミアム・真夏の方程式 2014.06.21

ついに今夜…
前作『容疑者Xの献身』に続く映画『ガリレオ』第2弾はシリーズ史上最も切ない謎といわれ昨年公開されるや…
美しい海の町で真夏の夜に起きた不可解な事件
(湯川)あの家族は全員が秘密を抱えている。
湯川はその悲しき方程式を解き明かすことができるのか?
(節子)ごめんね。
成実。
(節子)母さんのせいで。
(節子)このことは誰にも。
お父さんにも。
一生の秘密よ。
(節子)すぐにご飯にするから。

(車のクラクション)・
(節子)成実!・
(恭平)もしもし?電車の中。
(恭平)うん。
別に。
大丈夫。
(恭平)うん。
もうすぐ着く。
今食べてる。

(恭平)分かってる。
分かってるって。
じゃあもう切るよ。
(夫)分かっとんならマナー守らんか?チッ。
電車ん中は携帯禁止やぞ。
(妻)あんた。
ごめんね。
(夫)電源切れ。
(恭平)そんなことしたらお父さんとお母さんところにメールががんがん入るんだよ。
僕の携帯の電源が切られましたって。
(夫)ああ?
(恭平)キッズフォンの仕組み知らないの?
(夫)仕組みなんか知らん。
ほら!貸さんか?
(恭平)ねえ?やめてよ。
(妻)やめんさい。
(恭平)ねえ?やめて。
(妻)もういいかげんにしんさい。
(妻)フフフ。
ごめんなさ…。
あっ。
(湯川)こうしておけば電源を切らなくても電話がかかってくることはない。
アルミホイルは電波を遮断するからだ。
これでいいでしょう?
(アナウンス)間もなく玻璃ヶ浦。
玻璃ヶ浦に到着します。

(駅員)ありがとうございます。

(湯川)どうも。
(駅員)どうぞ。
はい。
ありがとう。
はい。
どうぞ。
(節子)ねえ?ちょっと。
恭平ちゃん。
恭平ちゃんよね?
(節子)アハハ。
大きゅうなって。
いらっしゃい。
(恭平)お世話になります。
(節子)アハハ。
何を他人行儀なこと言うん?あっ。
大丈夫か?それ持ってあげよか?
(恭平)ああ。
すいません。
(節子)一人でよう来たなぁ。
大丈夫やった?
(恭平)ああ。
はい。
(重治)やあ。
恭平ちゃん。
大きくなったなぁ。
(恭平)お世話になります。
これつまらないものですが。
(重治)アハハ。
しっかりしてるな。
2年前と大違いだ。
(節子)もう4年生だもんね。
(重治)さあ乗った乗った。
(節子)こっちこっち。
(重治)うちにコーラが冷えてるからな。
(節子)ハハハ…。
(節子)よいしょ。
はい。
さあ乗って。
(重治)はいはいはい。
はい。
どっこいしょ。
ハハハ。
(成実)説明会とおっしゃっていますがあなた方の一方的な説明を聞きに来たんじゃありません。
(沢村)そうだそうだ。
(成実)玻璃ヶ浦の海を壊すことになるような開発には絶対反対です。
(広田)発言は控えてください。
後ほど質疑応答の時間を設けますので。
(足立)えー。
採掘を予定しているのはここから50kmも沖合の水深800mの…。
(沢村)50kmっちゅうたらすぐそこやろ。
(足立)これらのレアメタルはわが国にとって非常に重要な資源となり得るわけです。
(成実)でも地元の同意は得ていませんよね?
(広田)お静かにお願いします。
代わりましてデスメック開発課長の中川の方から海底熱水鉱床…。
(沢村)今度は経済効果を強調してくっぞ。
(若菜)開発が町おこしになるいうて喜んどる人もおるもんね。
(中川)えー。
デスメックの中川でございます。
私どもといたしましては今すぐ採掘を開始するというわけではなくまず詳しい調査を専門の調査機関に…。
(成実)ちょっと待ってください。
その調査自体…。
(広田)まだ説明の途中です。

(ドアの開く音)
(中川)えーとですね。
方法といたしましては有人探査艇やROVAUVによる…。
(成実)ごまかさないでください。
その調査段階ですでに海底をほじくり返していませんか?
(中川)聞いてください。
方法といたしましては有人探査艇やROVAU…。
(広田)えー。
ただ今帝都大学の湯川准教授が到着されました。
(湯川)ああー。
(湯川)どうぞ。
続けてください。
(中川)えー。
方法といたしましては。
(成実)あの。
先ほどおっしゃっていた遺伝子学的研究による環境保全策っていうのがよく分からないんですけど。
(中川)つまり玻璃ヶ浦にしか生息していないと分かったものに関しては何らかの保護を図ると…。
(成実)じゃあ他の場所に同じものがいたらここの生物は死滅させてもいいということですか?
(沢村)そうだそうだ。
(成実)そもそも玻璃ヶ浦の全ての生物の遺伝子を調べるなんてできるんですか?
(広田)お静かにお願いします。
(中川)ですからそれはでき得るかぎりの手段を使ってですね。
(成実)そんなできる限りなんてそんな…。
(湯川)よくないな。
そういう発言はよくない。
専門家でさえ深海生物のことは完全に把握していない。
できないことはできないと正直に言うべきです。
(小橋)そうよ。
(湯川)地下資源を採鉱すれば生物には必ず被害が出ます。
人間はそういうことを繰り返して文明を発達させてきました。
(湯川)だがその恩恵はあなたたちも受けてきたはずだ。
後は選択の問題です。
(男性)おう。
(成実)おっ。
(成実)お疲れさま。
(男性)おう。
おかえり。
(成実)ただいま。
(節子)板場に野菜があるから色出しといて。
(成実)この後集会があって。
(節子)お待たせしました。
(塚原)あっ。
これで?
(成実)いらっしゃいませ。
(節子)3階虹の間になります。
お荷物持ちましょうね。
(塚原)ああ。
お願いします。
(節子)あっ。
お客さま。
どうぞ。
(恭平)成実ちゃん。
(成実)恭平。
うわー。
大きゅうなったねぇ。
(恭平)もう分かったから。
(成実)何よ?
(恭平)うわっ。
(成実)アハハ。
でいつまでいるんだっけ?
(恭平)1週間。
うちの新しいお店がオープンするまで。
そっか。
じゃあ海でいっぱい遊べるね。

(ドアの開く音)
(成実)あっ。
いらっしゃいませ。
湯川です。
予約が入ってると思います。
(恭平)うおー。
(節子)お料理は足りましたか?いや。
おいしかったです。
本当に。
(節子)奇麗に召し上がっていただいて。
ありがとうございます。
この料理は女将さんが?
(節子)あっ。
昔東京の方で玻璃料理出してるお店で働いてまして。
ああ。
なるほど。
おいしかった。
ごちそうさまです。
(節子)お粗末さまでした。
お先に失礼します。
(塚原)おやすみなさい。
(節子)あっ。
お客さま。
ご飯差し上げましょうね。
(塚原)いえ。
結構。
(節子)ああ。
お料理お口に合いませんでした?
(塚原)いえいえ。
ごちそうさまでした。
(節子)あっ。
じゃあ。
・すいません。
この辺りで地酒が飲めるお店はありますか?
(節子)ああ。
ありますよ。
後で私がご案内します。
お願いします。
(節子)あっ。
じゃあお茶を。
(塚原)娘さんですね?
(節子)えっ?
(塚原)さっき玄関で。
(節子)あっ。
説明会でご一緒だったそうで。
お客さまも環境問題の関係で?
(塚原)川畑さん。
(節子)はい?
(塚原)私は昨年まで刑事をやっておりました。
仙波を逮捕したのは私です。
仙波英俊。
ご存じですよね?知りませんそんな人。
(塚原)昔のことをほじくり返す気はないんです。
私は。
(節子)お客さま。
何か勘違いされてます。
(塚原)待ってください。
(節子)失礼します。
(塚原)話だけでも聞いてもらえませんか?
(節子)ハァー。
(重治)どうした?
(節子)ああ。
別に。
(重治)おお。

(足音)
(恭平)ハカセ。
成実ちゃんから聞いたよ。
大学の先生なんでしょ?ハカセだからあんなこと知ってたんだ。
アルミホイル。
僕は今何をしている?新聞読んでる。
邪魔しないでくれ。
ハカセは成実ちゃんの敵なんでしょ?海を壊す人たちの味方なんでしょ?僕は誰の敵でも味方でもない。
僕は成実ちゃんの味方だよ。
いとこだもん。
実に非論理的な考えだな。
ヒロン?僕の興味は真理を追究することだ。
真理というのは人類が正しい道を進むためにこの世界がどうなっているのかを教えてくれる地図のようなものだ。
その地図をつくるのが科学の役目だ。
科学?理科のこと?嫌いなんだよね理科。

(節子)お待たせしました。
お店ご案内します。
お願いします。

(重治)恭平ちゃん。
花火やらないか?
(恭平)花火?
(重治)前にやった残りがあるんだ。
ロケット花火もあるぞ。
(恭平)やる!やる?
(女性)ほなね。
(女性)ほなね。
(小橋)やっぱネットで呼び掛けるんが一番やないかね?
(沢村)うん。
どんどん人巻き込んでデスメック追い込まな。
(若菜)私作るよ。
簡単なホームページやったらできるけん。
(希美)ああ。
それやったら私も手伝います。

(男性)おっちゃん…元気しとるね?・
(従業員)いらっしゃい。
遅うまでご苦労さんやね。
はい。
どうも。
(成実)こんばんは。
(一同)おおー。
(重治)はい。
(恭平)うわー。
すごい。
おおー。
(重治)おおー。
(沢村)やったらさあんた開発に賛成しとんか?
(小橋)違うでや。
そんなこと言うとらんやろが。
(女将)何にする?お薦めは何が?
(女将)うーん。
うれしみはどうね?うれしみ?じゃあそれで。
(成実)ちょっとごめん。
湯川さん。
私緑岩荘の。
反対派の代表か。
熱心に発言してたな。
(成実)ちょっと隣いいですか?あれどういう意味ですか?選択の問題だって。
すごく無責任な言い方に聞こえたんですけど私。
無責任なのは君たちの方だと思うね。
私たちがですか?相手の言い分に耳を貸そうとせず自分たちの主張を繰り返すだけだ。
それは向こうだって。
湯川さんたちだって同じじゃないですか?僕は物理学者だ。
電磁探査のアドバイザーとして彼らに呼ばれた。
コイルを使って海底の電磁場を測定し分析する。
つまり海底を掘らずに金属資源の分布を調査できる。
環境に優しいって言いたいんですか?同じものを。
(女将)はい。
(恭平)おお。
(重治)ハハハ。
おっ。
きた。
(恭平)高っ。
高い。
(重治)たまや!
(恭平)たまや!でも開発は必ず環境破壊につながるって湯川さんがおっしゃったんですよ。
今の日本にとって資源の問題は避けられない。
選択するといっても0か100を選べと言ってるんじゃない。
お互いをよく理解し合ってベストな方法を探す。
そのための議論だろう。
全てを知った上で自分の進むべき道を決めるべきだ。
(女将)お待っ遠さん。
うれしみね。
ありがとう。
(女将)あっ。
はい。
私は玻璃ヶ浦の海を。
手付かずの海を守りたいだけなんです。
(恭平)うわっ!・
(パトカーのサイレン)
(恭平)うん。

(警察無線の音声)・
(パトカーのサイレン)・
(話し声)・
(パトカーのサイレン)
(警察官)玻璃ヶ浦…。
(パトカーのサイレン)
(橋上)じゃあホトケさんの靴回収しとって。
一番上にあるけえ。
(警察官)分かりました。
(節子)あっ。
こちらが宿泊名簿になります。
(橋上)どうも。
女将さんはゆうべは何時まで起きとったんですか?
(節子)ああ。
1時ごろまで待ってたんですけど。

(成実)特には。
朝になっても戻られなかったら…。
(橋上)あちらのお子さんは?
(節子)あっ。
おいっ子です。
(橋上)ああ。
(節子)恭平ちゃん。
朝ご飯できたら呼ぶからお部屋戻ってなさい。
(橋上)夕食んとき…。

(元山)こん人で間違いなかですか?・
(重治)うん?ああ。
(重治)間違いないです。
ところで事故なんですか?
(元山)いや。
まだ分からんのですが。
(鑑識)何かめぼしいもんあったね?
(鑑識)何も出ません。
(鑑識)分かった。
じゃあね。
(鑑識)はい。
(鑑識)そこの看板基準点にして後で測っとって。
(鑑識)はい。
了解しました。
(鑑識)高さ何ぼ?
(鑑識)5m50です。
(鑑識)おう。
ハァー。
こっから間違うて落ちたんやろなぁ。
(鑑識)じゃあ計測終わったら搬送や。
署に報告しといて。
(鑑識)はい。
(鑑識)よし。
(恭平)ハカセ。
お客さんが死んじゃったんだよ。
岩場で死体が見つかったんだって。
夜散歩に行って堤防から落ちたのかもって警察の人が言ってた。
来なくていい。
大事件じゃん。
死体だよ?でもあり得ないんだよね。
下駄が落ちてたんだって。
死体の近くに。
でも下駄じゃ絶対上れないよあの堤防。
それに夜は真っ暗だよ。
散歩なんてするかね?名探偵だな君は。
でしょ?そんなに頭がいいならもっと理科の勉強をしろ。
探偵ごっこで無駄に夏休みを過ごすよりずっとましだ。
ハァー。
理科なんて何の役に立つんだよ?ミジンコがどうとか?磁石がどうとか。
そんなのどうでもいいじゃん。
聞き捨てならないな。
もういいよ。
子供は勉強以外のことに興味持っちゃいけないんだ。

(西口)元山さん。
ちょっホトケさんの部屋来てもらえんですか?
(成実)右です。
あっ。
こちらです。
(重治)どうした?
(元山)何か?
(橋上)実はホトケさんの荷物にこれが。
(元山)警視庁の人間やったんか。
(多々良)あり得ねえな。
塚原さんが酔っぱらって堤防から落ちた。
そんなバカなまねあの人は絶対にしない。
(草薙)管理官。
(多々良)初動捜査で思い込みは絶対に駄目だ。
後にしろ。
(多々良)俺なら他殺も視野に入れる。
(草薙)他殺?
(多々良)玻璃ヶ浦に行ってきてくれねえか?
(草薙)あっ。
(美砂)何で?
(草薙)何でってお前。
ホントに言葉の使い方知らないな。
どうして私が行かなきゃいけないんですか?
(草薙)ここ使っていいから。
玻璃ヶ浦なんて知らないし。
あの。
書かなきゃいけない書類…。
(草薙)いいか?これはお前にしかできない非公式な任務だ。
はい?
(草薙)宿泊名簿のコピーだ。
塚原さんが泊まってた宿にはもう一人客がいた。
ハァー。
(恭平)あっ。
ハァー。
まだ探偵ごっこか。
この下に死体が?現場はもっと向こうだよ。
確かに下駄で上るのは難しいな。
えっ?ねえ?ここがどうして玻璃ヶ浦っていうか知ってる?玻璃ってどういう意味だ?この辺りが火山地帯だからだろ。
玻璃というのは火山岩に含まれる非結晶物質だ。
ブー。
水晶のことだよ玻璃は。
水晶?夏太陽が真上に昇ったとき海の底が照らされてきらきら光る水晶が幾つも沈んでるように見えるんだって。
だから玻璃ヶ浦って名前が付いたんだよ。
それだけ海が澄んでいるということか。
見たいなぁ海の中。
潜って見たらいい。
200mぐらい沖なんだよ。
そんなところまで泳げないよ。
船で行けばいいじゃないか。
船は酔っちゃうから。
フッ。
だから地図が大事なんだ。
真理へ続く道が分からなければ諦めるしかない。
それが今の君だ。
(成実)ねえ?どうしてうち泊まったんだろ?塚原さん。
(節子)えっ?
(成実)他にも旅館はあるのに。
(節子)さあ。
分からん。
(成実)手どしたの?
(節子)うん?
(成実)大丈夫?
(節子)あっ。
これ?ちょっと擦りむいちゃった。
よいしょ。
ああ。

(ドアの開く音)
(成実)おかえりなさい。
この町は必要なときに限ってタクシーがつかまらない。
ハァー。
フゥー。
(成実)何ですか?これ。
実験材料だ。
実験?ペットボトルはないかな?できれば丸いやつ。
1.5リットルくらいのものが5〜6本あればありがたい。
あると思いますけど。
何に使うんですか?海の中を見る。
海の中?・
(ドアの開く音)
(成実)いらっしゃいませ。
あの。
こちらに湯川…。
いた。
先生。
岸谷君。
お疲れさまです。
あっ。
どうぞ。
お上がりください。
すいません。
失礼します。
何しに来たんだ?捜査です。
事件があったでしょ?捜査?警視庁の君が?お話いいですか?何か作るんですか?理科嫌いの少年に科学とはどういうものか分かってもらうための装置だ。
少年?湯川先生子供苦手じゃないですか。
苦手じゃない。
嫌いなんだ。
子供に近づくとじんましんが出るんでしょ?あの子の場合はなぜかかゆくならない。
何で?論理的な子なんですか?超ませがき?僕に何の用だ?用件を言ってくれ。
先生。
これはとっても不思議な事件です。
常識ではあり得ません。
こちらのお客さんが亡くなられましたよね?塚原正次さん。
実は塚原さん警視庁の元刑事だったんですよ。
これで驚くのはまだ早い。
驚いてない。
塚原さんは当初堤防から岩場に落ちて脳挫傷で亡くなったとみられてました。
ところが司法解剖の結果死因は脳挫傷ではなく一酸化炭素中毒でした。
(元山)《ああ?》
(橋上)《何ち?》
(元山)《えっ?ちゅうことは》塚原さんは亡くなった後で岩場に落ちた。
つまり他殺の疑いが出てきたわけです。
でも屋外で一酸化炭素中毒死させるなんてできませんよねぇ。
なぜ?車の中で練炭をたいて中毒死させることだってできる。
その場合は塚原さんに眠ってもらわなければならないが。
尿から睡眠導入剤の反応が出てるじゃないか。
さすがです。
私が説明する必要もありませんね。
帰ってくれ。
そもそも。
そもそも塚原さんはなぜ玻璃ヶ浦に来たのか?岸谷君。
さてここで新たな人物が登場します。
仙波英俊。
15年前東京で起きた殺人事件の犯人です。
平成10年2月15日。
東京都杉並区荻窪の歩道橋で女性が死んでいると通報がありました。
夜10時ごろです。
所持品から被害者は40歳無職の三宅伸子さんだということが判明。
その前の晩三宅さんはなじみの店で仙波英俊と会っていたのですがそのときどうやら2人はもめていたらしいと。
捜査員が仙波のアパートを訪ねたところ仙波は逃走し彼の所持品から血の付いた包丁が見つかりました。
そしてそのとき仙波を逮捕したのが塚原さんだったんです。
殺害動機は金銭トラブル。
平成18年に刑期を終え満期釈放で出所しています。
その後。
あっ。
その後仙波の行方は分かっていません。
それと塚原さんがここに来た理由と何の関係があるんだ?いい質問です。
実は仙波は玻璃ヶ浦の出身なんです。
(西口)《塚原さんらしき人物が事件当日の朝東玻璃の海岸近くの路上におったそうです》《で住所は玻璃市東玻璃1108番の空き家》
(西口)《家主は仙波英俊》
(橋上)《仙波!?》
(元山)《仙波っちゅうと》
(橋上)《あの仙波ね》今はもう誰も住んでいませんがその仙波の家を塚原さんは訪ねてたんですよ。
玻璃ヶ浦に来たのは説明会に参加するためだけじゃなさそうです。
(氷が当たる音)
(節子)失礼します。

(節子)こちらにお茶置いときますので。
はい。
(成実)ねえ?何話してたの?
(節子)うん?話って?
(成実)だからどうして警視庁の人が…。

(掃除機の音)つまり君は仙波が塚原さんを殺したかもしれないというのか?自分が逮捕されたことを恨んで。
あり得ますよね?君が今長々としゃべった話はただの臆測だ。
全て見当違いかもしれない。
だから先生の力を借りたいんです。
まず塚原さんはいったいどうやって殺されたのか?それを解明してほしいんです。
そんな暇はない。
あっ。
大事なこと言い忘れてました。
実は塚原さん私たちの上司の多々良管理官の先輩なんです。
管理官は直々に草薙さんに今回の真…。
興味ない?あした大事な実験を控えてるんだ。
ハァー。
先生には情ってもんがないのかな?長い付き合いなのに。
大して長くない。

(鑑識)正常に稼働してますね。
ボイラーも問題ありません。
(恭平)ボイラーを調べてる?・
(鑑識)不完全燃焼も…。
(恭平)不完全燃焼がどうとか言ってる。
(恭平)お父さん。
これって変死事件っていうんだよね?
(橋上)路上駐車しとって中に人が乗っとったとか?
(恭平)大丈夫。
怖くなんかないよ。
宿題もちゃんとやるから大丈夫。
じゃあね。
推理が当たったな。
ただの事故死じゃなさそうだ。
(恭平)でしょ?だがそんなことはどうでもいい。
あした海に行くぞ。
えっ?携帯電話を忘れるな。
(鑑識)何も異常なかったけえ。

(音楽)すいません。
こんなときに。
(早苗)仙波英俊。
聞いたことがあります。
ホントですか?
(早苗)はい。
塚原が退官した日ビールで乾杯して私が聞いたんです。
一番印象に残ってる事件は何だったって。
そしたら塚原が仙波の事件だと。
悔いが残るって。
悔いが残る?どういうことでしょう?
(早苗)それ以上は話してくれませんでした。
(従業員)失礼いたします。
ご主人さまのご遺品はお飾りいたしますか?
(早苗)書斎に用意しておりますので。
お願いします。
(従業員)はい。
かしこまりました。
(恭平)ねえ?ハカセ。
どこまで行くの?泳ぐのも駄目。
船で行くのも駄目なら歩くしかない。
(恭平)あっ。
お疲れさまです。
(草薙)おう。
じゃあこれあとよろしく。
(刑事)分かりました。
塚原さんの書斎にあったものです。
ページの端が折られてます。
(草薙)簡易宿泊所?それに漫画喫茶も。
(草薙)漫画喫茶。
簡易宿泊所。
(草薙)つまり塚原さんは仙波を捜してた?ああ。
いってきます。
(草薙)ああ。
(恭平)うん。
(恭平)よいしょ。
ああ。
(恭平)うん。
ああ。
(恭平)うん。
うん。
うん。
ハァー。
ハァー。
(恭平)うわー!すげえ!うわー。
すげえ。
すっげえ!ねえ?何すんの?200m先の海底を見るにはこの方法がベストだ。
ハカセ。
仕事はいいの?無意味な討論は時間の無駄だ。
(中川)安定的な供給はわが国の経済発展に…。
(若菜)出た経済効果!
(成実)大事なのはそこですか?ここの海をどう守っていくか…。

(男性)大事なんはそこよ。
(男性)もっと経済効果んことを教えてくれんかね?
(一同)そうじゃ。
よし。
いくぞ。
テスト。
うおー!すごーい!うわー。
距離は?えっ?距離だ。
メーターを見ろ。
1・3・5。
135mか。
よし。
回収だ。
回収?もう少し圧力を上げてみる。

(女性)うん?うちには来たことないね。
残念だけど。
うん。
あっ。
だったら。

(男性)姉ちゃん。
捜しもんかい?俺が捜してやるよ。
(女性)うるせえなもう。
テスト。
154m。
回収。
(沢村)こん海こそ玻璃ヶ浦の資源なんぞ。
(女性)海海海ち奇麗な海だけじゃ食ってけんのよ!
(広田)落ち着いてください。
まだデスメック側の説明が…。
(成実)今だけじゃなくて将来のことも考えて…。
ねえ?ハカセ。
これでどうやったら海の底が見れるわけ?自分で考えろ。
分かんないよ。
分からなくても自分で考えろ。
答えを知ったときの喜びがより大きくなる。
テスト。
回収。
はい。
少し角度が浅いか。
(中川)皆さん。
席に着いてください。
きちんと説明しますから。
皆さん。
うわー。
(成実)うわっ。
(男性)その写真の男。
えっ?何か知ってるんです…。
うわっ!
(恭平)188m!もう少し水量を増やしてみるか。
回収。
ハカセ。
まだやるの?宇宙ロケットもペットボトルロケットも同じだ。
テストは何度でも繰り返したい。
(従業員)この人じゃなくてこの人捜してた人なら知ってますよ。
あれいつだったっけな?それってこの人ですか?
(従業員)ああ。
うん。
そうそうそうそう。
何かもう熱いおっさんでさ。
防犯ビデオのデータある分全部見せてくれってしつこくてさ。
あれ参ったよ。
私にも全部見せてもらえますか?
(恭平)えっ?重り外しちゃっていいの?それはテスト用だ。
携帯?マジで?出るのは後にしろ。
本番だ。
いくぞ。
本番。
本番。
距離は?203m。
203m!出ろ。
えっ?電話に出るんだ。
あっ。
テレビ電話?見えない。
うん?見えない。
えっ?うん?うん?うん?うわー!すごい!うわー!
(恭平)うわー。
アハハ。
奇麗。
(恭平)うわっ。
奇麗。
うわー。
すごい。
えっ?実験成功だな。
うわっ。
魚いっぱいいる。
うわっ。
うわー。
速え。
僕にも見せてくれないか?うわっ。
うわー!ヘヘヘ。
うわー。
すごい。
うわー。
うわー。
ひゅー。
ねえ?何で思い付くの?物理学者って毎日あんなことやってるの?そんなわけないだろう。
(鑑識)玻璃113。
上に何かあったね?
(鑑識)いやー。
特に詰まった形跡はのうて異常ありません。
(鑑識)分かった。
署に戻ってスモークの準備とガス関係も要請すっか。
113了解。
(鑑識)112了解。
何を調べてるんだ?
(恭平)えっ?上に何かあるのか?煙突だよ。
煙突。
(恭平)しゅー。
ハカセ。
ハカセ。
これ飛ばす?ひゅー。
ただいま。
プシュー。
(成実)うわー。
恭平!
(重治)ハハハ。
(成実)うん?何?これ。
(恭平)これで海の中を見たの。
(成実)海の中?
(恭平)それでここにハカセの携帯を入れてプシューって飛ばしたんだ。
(成実)これって。
(恭平)うん?
(成実)こういうことだったんだ。
(恭平)ねえ?返して。
ねえ?返して。
(成実)おおー。
すごいすごい。

(恭平)めちゃめちゃ奇麗だったよ。
マジで感動しちゃった。
(成実)あっ。
へえー。

(重治)よくは分からんがさすが物理の先生だ。
なあ?
(節子)ねえ?恭平ちゃん。
湯川先生何か言ってなかった?あの。
人が死んで気持ち悪いとか?
(恭平)ううん。
何にも。
(節子)そう?
(恭平)ねえ?夕飯ハカセと一緒に食べてもいい?
(重治)ハカセ困っちゃうんじゃないか?
(恭平)えー!いいじゃん。
ねえ?いいよね?ねえ?いいじゃん。

(恭平)ハカセ。
持ってきたよ。
シッ。
(恭平)伯父ちゃん20分くらいでお風呂から上がってくるよ。
それまでに戻さなきゃ。
この建物はとても興味深い構造をしている。
(恭平)えっ?行くぞ。
(恭平)ハカセ。
虹の間じゃないの?
(恭平)現場は虹の間だよ。
待て。
中のものには触るなよ。
触るな。
(恭平)「かいばら」の間?「うなばら」だ。
(恭平)あっちい。
何を調べるの?
(嗅ぐ音)
(嗅ぐ音)どうしてみんなには内緒なの?掃除は行き届いてるようだな。
花火をやったときあの窓は閉まってたのか?花火?伯父さんとやったんだろ?
(恭平)ああ。
閉まってた。
どうして覚えてるんだ?
(恭平)やる前にちゃんと調べたから。
ロケット花火が部屋に飛び込んだら危ないって。
伯父さんがそう言ったのか?他にも飛び込みそうなところは全部ふさいどこうって。

(恭平)《おおー。
すごい。
おおー》
(重治)《たまや!》
(恭平)《たまや!》
(重治・恭平)《おおー。
うわっ》
(重治)《きたきた。
たまや!》
(恭平)《たまや!》
(恭平)それがどうしたの?この旅館は伯母さんの実家なんだって?うん。
でもおじいちゃんが死んじゃって東京にいた伯父ちゃんが脱サラして後を継いだんだって。
何年前だ?えっ?家族で東京から引っ越してきたんだろ?成実ちゃんが中学生のときって言ってたかな。
成実ちゃんは今幾つだ?もうアラサーだって。
もらい手がいないって昨日伯父ちゃんが言ってた。
じゃあ14〜15年前か。
ねえ?ハカセは独身?ねえ?どうなの?ねえ?伯父さんは何の仕事をしてたんだ?自動車エンジンの開発だって。
エンジン開発か。
何してんの?何かあるの?どうかしたの?返しておいで。
亡くなった塚原さんも仙波を捜していたようです。
仙波は出所後ホームレスになったみたいで目撃した人の証言によると何かの病気ですごくやつれていたようです。
病気。
どうしたんですか?先生。
急に捜査状況知りたいなんて。
続けてくれ。
ハァー。
でも5月ごろから仙波と塚原さんの姿はぱったり見掛けなくなったって。
私たちは塚原さんが仙波を捜し当てたと踏んでいます。
草薙さんが言うには見つけた仙波がそんな状態だったら塚原さんはどこかの病院に入れてやったんじゃないかって。
そこまでしてやる理由が塚原さんにあったということか?ああ。
今都内の病院を当たっています。
先生。
ここの家族のことは何か調べているのか?ここの家族?緑岩荘を経営する川畑家のことだ。
奥さんは玻璃ヶ浦出身で昔東京で働いていた。
えっ?ちょっと待ってください。
そして彼らが東京から引っ越してきたのが今から14〜15年前。
仙波英俊が殺人事件を起こした年とほぼ重なる。
(節子)ビール飲む?
(重治)うん。
(成実)ああ。
いい。
お母さんも飲むでしょ?
(電子音)川畑さんの家族が東京にいたころの住所は北区王子本町。
夫の重治さんが勤めていた自動車会社の社宅です。
記録上では。
記録上では?事件当時重治さんは名古屋の工場に単身赴任をしていました。
妻の節子さんは娘の成実さんが私立中学に合格したため2人で東京に残ったようです。
そして。
えー。
節子さんと成実さんは重治さんの単身赴任中は社宅より通学の便利なところへ引っ越ししたようですが。
その家がどこにあったかは分からない。
はい。
会社の記録にはありませんでした。
突き止めてくれ。
それが分かれば僕の仮説の実証に大きく役立つはずだ。
仮説?15年前事件当時仙波英俊はどこに住んでいた?江戸川区船堀です。
殺された三宅伸子は?江東区木場。
(草薙)でも犯行現場は杉並区荻窪。
そこだけずいぶん離れてんな。
当時仙波は貸した金を返す返さないで口論になって三宅伸子を刺したと供述してるらしいが。
何でそんなとこで口論するんだ?不自然だな。
その4つの場所を結び付ける理由こそが仙波英俊と川畑家の接点なんだ。
塚原さんはそこに気が付いた。
だから玻璃ヶ浦に来た。
(草薙)湯川。
お前誰が塚原さんを殺したか分かってんじゃないのか?誰なんだ?川畑重治だ。
だが仮説は実証して初めて真実になる。
だからこのことはまだ地元警察には伏せておいてほしい。
この事件はかなり厄介だ。
慎重に捜査を進めなければある人物の人生が大きくねじ曲がる危険性がある。
ねじ曲がる?・
(ノック)・
(広田)湯川先生。
よろしいでしょうか?お疲れさまです。
どうも。
(広田)電磁探査についてコメントを頂きたいんですが。
資料に書いてあるとおりですが。
(広田)ああ。
ここの地元新聞のためのもので。
先生ご自身の苦労話など伺えたら。
苦労話?
(広田)ええ。
苦労などしてはいません。
苦労話を集めたいのなら私よりもあなた方の方がふさわしいのでは?
(沢村)聞きたいんやけど。
だいたい…。
(中川)ああああああ。
後で質疑応答がありますので。
(シャッター音)
(成実)結局住民の声なんか無視して掘削が始まるんですね?この船は調査船だ。
掘削用の船じゃない。
(成実)海の自然にとっては同じことです。
調査も掘削も。
(シャッター音)これはAUV。
自律型無人探査機。
海底の地形を全てインプットして海底にぶつかることなく一定の距離を保ちながら移動し調査ができる。
つまりこの探査機は環境を傷つけることはないということだ。
説明を聞いてなかったのか?
(成実)私たちの勉強が足りないっていうんですか?開発か環境保護か。
大事な問題に関わってるんだろ?君は。
全てを知った上で自分の…。
(成実)自分の進むべき道を決めるでしょ?勉強してもらわないと困る。
(シャッター音)
(成実)ハァー。
湯川さんと話してると疲れます。
僕も疲れる。
(成実)あっ。
そういえば恭平に海の中見せてあげたそうですね。
すっごい喜んでました。
彼の勉強になればと思っただけだ。
湯川さんは感動しなかったんですか?玻璃ヶ浦の海の中を見て。
素晴らしかった。
でしょ?水晶の海へようこそ。
えっ?君のブログを見させてもらったよ。
あれはいつからやってるんだ?10年くらい前からです。
海は玻璃ヶ浦の宝です。
私はその宝の番人です。
ここで生まれ育ったわけでもないのにどうしてそこまで思い入れることができる?海が好きだからです。
おかしいですか?まるで誰かを待ってるかのような文章だ。
君はその誰かが帰ってくるまでこの玻璃ヶ浦の海を守ろうとしているように僕には思える。
アハッ。
さすが物理学者。
すごい深読み。
(シャッター音)ちょっ。
何なんですか?急に。
申し訳ない。
実にいいアングルだったもので。
ほら。
美しい。
失礼します。
(米山)川畑成実さんの住所は北区王子本町ですね。
それは父親の社宅の住所です。
実際はこちらに通学するため便利な場所に住んでいたらしいんです。
(米山)何か事件があったんですか?
(米山)まっこれ以上は。
1年で転校していった生徒ですし。
そうですか。

(生徒たち)1・2・3・4。
2・2・3・4。

(生徒)1・2・3・4。

(生徒たち)1・2・3・4。
2・2・3・4。
成実さんは何か部活動はされてましたか?
(重治)よかったな。
恭平ちゃん。
ハカセとお揃いで。
これよかったら。
自家製です。
あっ。
いただきます。
(重治)恭平ちゃんは夏休みの宿題はやってんのかな?やってるけど。
自由研究とかさ何やればいいのか全然分かんない。
(重治)ハハッ。
海の中を見たじゃないか?
(恭平)えっ?成功するまで何度も計算して何度も実験した。
(恭平)うん。
自由研究のテーマになり得る体験だ。
(恭平)そっか。
好奇心は人を成長させる最大のエネルギー源だ。
(恭平)好奇心?例えばこれは何でできている?
(恭平)紙?そう。
紙だ。
紙なのになぜこの底の部分は燃えない?不思議だと思わないか?
(恭平)不思議。
どうして燃えないの?この鍋の中には何が入っている?
(恭平)貝とエビ。
それと?野菜。
他には?
(恭平)お汁。
そう。
だし汁。
すなわち水だ。
水は何度で沸騰する?100℃。
理科の実験でやった。
水は100℃で気体になる。
逆に言えば液体の状態を保っていればこれ以上高温になることはない。
つまりこの紙鍋の中にだし汁が残っているかぎりどれだけ熱しても燃えないんだ。
へえー。
また一つ成長したな。
じゃあさこれは燃えないの?例えばこの上に置いたらどうなるの?熱で水が蒸発するでしょ?乾いちゃってすぐ燃えるよね?どうかな?
(恭平)やってみていい?どうしたの?食べよう。
エビフライが冷めてしまう。
(成実)また東京に行くことあったら。
うん。
連絡するね。
じゃあね。
はーい。

(通話の切れる音)・
(不通音)ハァハァハァハァ。
成実。
どうしたの?
(成実)「成実はどこに住んでたっけ?」って聞かれた。
(節子)えっ?誰に?
(成実)警察が来たんだよ。
(節子)だから誰に?誰に聞かれたの!?
(成実)ユカリ!中学校のときのテニス部の!
(節子)成実。
ほら。
(成実)お母…。
もう無理だよ。
えっ?成実。
ねえ?ねえ?あのことは秘密でしょ?ねえ?一生の秘密でしょ?もう無理だよ!
(節子)成実。
(成実)やめて。
(節子)成実。
成実。
(成実)秘密になんてできないよもう。
(節子)成実。
(成実)触んないで。
(節子)落ち着いて落ち着いて。
ねえ?話…話を。
話を。
(成実)やめて!・
(重治)何を騒いでるんだ?
(重治)ハァー。
(重治)節子。
湯川さん気付いてるよ。
もう無理だ。
場所が特定できました。
事件当時川畑節子さんと成実さんが住んでいたのは荻窪にあった借家です。
三宅伸子さんが殺害された現場のすぐ近くでした。
川畑。
川…川畑家が玻璃ヶ浦に引っ越してきたのは事件の2週間後だったそうです。
仙波と川畑家の接点が見えてきたな。
仙波の行方は?病院を片っ端から当たっていますがまだ。
でもこれで仙波が見つかれば川畑重治犯人説が実証できますね。
その前に状況が変わった。
変わった?あした宿を出てくれと言われた。
川畑重治は警察に自首する気だ。
自首!?
(恭平)ハカセ。
(恭平)ハカセも一緒のホテルなんでしょ?あしたお父さんが来るんだって。

(パトカーのサイレン)君はここにいるべきではないかもしれないな。
えっ?行こう。
(重治)あの夜私はおいっ子と2人で花火をやりました。
その少し前に塚原さんが厨房に来られて強い酒が欲しいって言われたんです。
(元山)酒?あの。
旅先では寝付きが悪いとか。
で私は睡眠薬を差し上げました。
(元山)ああ。
そんな薬持っとったんか?ああ。
不眠症になったことがありまして。
駅前の内藤医院で処方してもらいました。
(刑事)裏取ります。
(元山)それから?
(恭平)《うわっ。
うわー》
(恭平・重治)《たまや!》
(重治)庭で花火をした後虹の間に電話をしたんです。
あっ。
ああ。
朝食の時間の確認のためにです。
でも塚原さんはお出にはなりませんでした。
それでお部屋の様子を見に行ったんです。
すると海原の間の明かりがついていて。
そこに塚原さんが倒れていたんです。
すすけたにおいがして私は何が起こったのか分かりました。
(元山)一酸化炭素中毒死やと?はい。
あの。
すぐに1階へ降りてみますと。
やっぱりボイラーが止まっていました。
(鑑識)ボイラー室からスモーク追加します。
(鑑識)112了解。
(シャッター音)
(鑑識)お願いします。
(男性)はい。
(重治)う…うちは壁の間をボイラー室と屋上の煙突をつなげる配管が通ってます。
(男性)詰まりはなさそうです。
(鑑識)了解。
(重治)でももう古い建物でしてもう壁のあっちこっちに。
あの。
亀裂が入ってまして中の管もだいぶ傷んでたようで。
特に海原の間は時々すすのにおいがしていました。
ですからあの部屋は使わないようにしていたんです。
その後居酒屋にお客さんを送ってきた女房が帰ってきて。
(重治)《おい。
お客さんが死んでる》《えっ?》
(重治)《海原の間に倒れてるんだ》
(節子)《えっ!?》
(元山)分からんですね。
虹の間に泊まっとった塚原さんが何で海原の間におったんですか?あっ。
あのう。
私たちの花火を見ようとしたのかも。
(元山)花火?あの部屋から。
あのう。
庭が。
あの。
見下ろせるんです。
(元山)塚原さんはどうやって海原の間に?鍵は?普段は鍵はしてません。
あの。
掃除のときに手間なんで。
(元山)うーん。
あんたたちの花火が見とうて海原の間に入りそのうちに睡眠導入剤が効いて眠り込んでしもうた?そうとしか。
(元山)何でそんとき警察に知らせんやったんか?
(重治)女房は110番するって言ったんです。
(節子)《警察に電話せな》
(重治)《駄目だ。
駄目だよ。
どっかへ捨てよう》
(節子)《えっ?ちょっと》
(重治)《部屋に死体が転がってたなんて知れたらうちは。
つ…つぶれちまうだろうが!》
(橋上)ご主人足悪いのによう運べましたね?
(節子)そのときは必死で。
(節子)《ああっ!あ痛っ》
(重治)《何やってんだよ!?早くしろ早くしろ》
(節子)どうにか車に乗せて。
(重治・節子)《せーの。
押さえて》
(重治)《いやあー!》
(節子)《ああっ!》《ああ。
ああー!》
(重治)《眼鏡。
眼鏡取って》
(節子)《ああ。
分かった》
(重治)《駄目だ!素手じゃ駄目だよ。
素手じゃ》
(落下音)
(節子)《あっ》塚原さんにはホントにすまんことをした。
申し訳ないと思ってます。
申し訳ありませんでした。
(草薙)川畑重治と節子が過失致死と死体遺棄を自白した。
(草薙)嘘?ああ。
川畑重治の供述は具体的だ。
・真実を語ることなど彼にはできないはずだ。
(草薙)じゃあ節子が口裏を合わせてるっていうのか?塚原さんを殺害したのは重治の単独犯だろう。
殺害?どうやって殺したっていうんですか?自首してきたんだぞ。
それでもまだ嘘つく理由なんて。
秘密を守りたいんだ。
秘密?あの家族は全員が秘密を抱えている。
川畑節子と成実の間には2人だけの秘密があり。
しかしその2人も重治に欺かれているんだ。
その絡み合った秘密の中に塚原さんは自ら入り込んで殺された。
そして今…。
ある人物の人生がねじ曲げられようとしている。
うわー。
奇麗。

(鵜飼)もう30年になるかなぁ。
(鵜飼)私も若かったでしょう?2人はこちらで出会ったんですよね?
(鵜飼)節ちゃんはよく働くし気が利くしうちのアイドル持ってかれちゃったよ。
節子さんホント奇麗だなぁ。
ご主人。
ご主人。
(鵜飼)えっ?これって仙波。
仙波英俊さんですか?
(鵜飼)そう。
仙波さんも玻璃出身でねぇ。
このころは羽振りよかったんだ。
ほら。
(鵜飼)刑事さんやっぱりあの事件のこと調べてたんだ?重治さんと仙波さんはお知り合いだったんですか?
(鵜飼)どうかなぁ?顔見知り程度だったんじゃない?店の客は節ちゃんのことばっかり見てたから。
それを重治さんが?
(鵜飼)優しい人だったからねぇ。
あれ?写真が。
あの。
節ちゃんと成実ちゃん2カ月ってこれは?
(鵜飼)いつの間にかなくなっちゃっててねぇ。
たぶん節ちゃんのファンが勝手に持ってっちゃったんだな。
でもここだけの話節ちゃん本当は仙波さんにほれてたんだ。
あの。
あの。
この2人の間に男と女の関係が?
(鵜飼)さあ。
仙波さんには奥さんいたしね。
あっ。
この隣にいるのが仙波さんの奥さんですか?
(鵜飼)それ伸ちゃんだよ。
伸ちゃん?えっ?三宅伸子さん?かわいそうな死に方したけど。
正直言って私はあんまり好きじゃなかったなぁ。
金にだらしなかったからねぇ。
伸ちゃんは。
29年前節子は仙波への思いを断ち切って川畑重治と結婚しました。
そしてその13年後仙波は三宅伸子を殺害した。
いったい何があったらそういう展開になるんでしょう?仙波を逮捕した塚原さんは悔いが残ると言っていたそうだな。
それがどういう意味か。
もう察してるんだろ?君たちは。
三宅伸子殺害事件は冤罪です。
犯人は仙波じゃありません。
(多々良)フッ。
お前気を付けて物言えよ。
仙波は調べでも公判でも一切反論してない。
なぜだ?仙波は誰かをかばって刑に服した。
だがそのことに気が付いたのは皮肉なことに仙波を逮捕した塚原さんだけだった。
だから塚原さんは刑期を終えた仙波を捜し真実を聞き出そうとしたんだ。
三宅伸子を殺したのは川畑節子?僕も最初はそう考えた。
仙波は川畑節子の身代わりになったんじゃないかと。
しかし事件が起きた時点で2人は10年以上別々の人生を歩んでいたはずだ。
君は10年前に好きだった男性のために全てを投げ捨て殺人の罪を背負うことができるか?たぶん無理だと思います。
僕だってそうだ。
そう考えたときまったく別の発想が生まれた。
仙波が守りたかったもの。
男女間の愛情をはるかにしのぐもの。
それは何か?それは節子じゃない。
節子が産んだ子供だ。
えっ?子供?川畑成実!?彼女は川畑重治の娘じゃない。
仙波の娘だ。
その秘密を封印するため彼女自身が三宅伸子を殺害したんだ。

(チャイム)
(伸子)《こんばんは。
お母さんいる?》
(成実)《今出掛けてます》
(伸子)《お父さんは?》《いないの?》
(成実)《はい》
(伸子)《うん。
そう。
ハァー》
(伸子)《ねえ?あなた娘さんでしょ?》《はい》《やっぱりねぇ》
(成実)《えっ?》《ねえ?ちょっと寒いんだけど》
(成実)《えっ?えっ?ちょっと困ります》《ちょっと待ってください》
(伸子)《節ちゃん帰ってきたらすぐ帰るからさ》
(成実)《どちらさまですか?》
(伸子)《節ちゃんの昔の友達よ》
(伸子)《ふーん。
結構いい暮らししてんじゃん》《あなたお父さんとお母さんどっちに似てるって言われる?》《私ねホントのこと知ってるのよ》
(伸子)《あなたの口元なんてあの人にそっくり》
(重治)《似てないって言われたよ》
(節子)《えっ?何?》
(重治)《全然俺には似てないってさ》
(成実)《あっ》
(伸子)《これ借りてくね》《また来るわ》
(成実)《返してください》
(伸子)《ちょっと!》
(成実)《返して!》《返して!返して。
痛っ》
(伸子)《ああっ!》《何だよ?その目。
ハッ。
何にらんでんだよ?》《節ちゃんに言っといて。
通帳用意して待っててって》
(成実)《写真返して!》
(刺す音)
(節子)《ごめんね。
成実》《母さんのせいで》
(女性)また来週の月曜日来るからね。
何かイメージと違いますね。
ホスピスってもっと無機質な感じかと思ってました。
ここにいる人たちはみんな残された時間は長くない。
先生。
(看護師)お待たせしました。
仙波英俊さんです。
(看護師)仙波さん。
大丈夫ですか?何かあったら呼んでくださいね。
どうぞごゆっくり。
警視庁捜査1課の岸谷です。
こちらは物理学者の湯川先生です。
初めまして。
湯川です。
本日はありがとうございます。
僕はけさまで玻璃ヶ浦にいました。
海底資源の調査に関わっているんです。
玻璃ヶ浦の海は実に美しい。
あなたが知っているころの海と何も変わっていないでしょう。
われわれ科学者だってあの海の美しさを壊したくはありません。
今日はあなたに見ていただきたいものがあります。
ある人物が書いているブログです。
水晶の海へようこそ。
海は玻璃ヶ浦の宝です。
その宝の番人を勝手に名乗っております。
どうか海の色を確かめに来てください。
いつまでも貴方をお待ちしております。
このブログを書いているのはこの女性です。
彼女がこの海を守っているんです。
それが自分の使命だと誰かの恩返しになると信じている。
僕にはそう思えます。
この女性に会うために塚原正次さんが玻璃ヶ浦に行かれました。
あなたのためです。
その理由はお分かりですよね?
(仙波)知りません。
(仙波)私は何も知らない。
そうですか。
ありがとうございました。
(仙波)ありがとう。
(仙波)ありがとうって。
(仙波)玻璃ヶ浦の海を守ってくれてありがとう。
この人に。
伝えます。
あれでいいんですか?先生。
ああー。
(仙波)《小銭ある》
(従業員)《はい》
(伸子)《仙波さん子供なんていたっけ?》
(仙波)《何!?》《ちょっ。
ちょっと待っ…》《ちょっと待って。
待って》
(仙波)《返せよ》
(伸子)《ちょっ。
これ節ちゃんじゃない?》
(仙波)《ちょっと!》
(伸子)《あっ》《ちょっと》
(従業員)《大丈夫ですよ》《どうして?そんな写真なんて》
(仙波)《違うよ》
(伸子)《違うって何が?》《何がって。
違うって》
(アナウンサー)《東京杉並区の…》・
(呼び出し音)
(アナウンサー)《40歳の女性が…》・
(呼び出し音)・
(節子)《はい。
川畑です》
(仙波)《節ちゃん。
僕だ》・
(節子)《えっ?》
(仙波)《僕。
あの。
仙波だよ》《仙波さん?》・
(仙波)《ゆうべ伸ちゃんがそっち行かなかったか?》《えっ?》・
(仙波)《三宅伸子だよ》《金たかりに行かなかったか?》《えっ?何のこと?》
(仙波)《テレビ。
テレビ見らんね。
早う》《あっ。
待って。
えっと》
(アナウンサー)《死亡が確認されたのは江東区木場に住む無職三宅伸子さん》《伸ちゃん?》
(アナウンサー)《昨日午後10時ごろ杉並区荻窪の歩道橋で通行人から女性が腹から血を流して倒れているとの110番…》
(仙波)《節ちゃん!節ちゃん!》《嫌》
(節子)《成実?成実》・
(仙波)《もしもし?》
(節子)《成実!ねえ》・
(節子)《ねえ?何があったの!?》
(節子)《成実!成実!》
(成実)《嫌っ!嫌!嫌!》
(節子)《成実!》
(成実)《嫌ーっ!》
(節子)《しっかりして。
成実!成実!》・
(成実)《キャー!》・
(節子)《成実!》《成実》・
(成実)《嫌!嫌!嫌!》
(仙波)ああ。

(仙波)《節ちゃん》
(節子)《仙波さん》
(仙波)《それか》
(節子)《ああ。
ちょっと待って》
(仙波)《ああ。
何も心配せんでいい》《いや。
でも…》
(仙波)《もう会社もつぶれて女房も死んだ。
俺は一人だから》
(節子)《いや。
待って。
待っ…。
待って》《こっち。
あの。
あのお店の。
茶色いコート》《ああ》《大きゅうなって》
(踏切警報機の音)《節ちゃん。
ありがとう》
(節子)《仙波さん》仙波は自ら罪をかぶり刑期を無事に終えた。
そして末期の脳腫瘍に侵された今愛する人を守りぬいてその人生を全うしようとしている。
でも塚原さんの死はどうなるんです?15年前の事件を明かさないと川畑重治の…。
立証できない。
三宅伸子殺害事件はもう解決済みだ。
つまり塚原さんを殺す理由は存在しない。
負けだよ。
先生はいいんですか?こんな終わり方で。
誰かの人生がねじ曲げられようとしてるんでしょ?いいわけがない。
だから玻璃ヶ浦に戻るんだ。
(敬一)いつ戻れるか分からないよ。
姉貴たちがやったことなんだから。
俺だって警察から色々聞かれるだろうし。
恭平?うん。
大丈夫そうだよ。
今飯食ってる。

(花火の音)
(敬一)オープン延ばすわけにはいかないだろう。
(恭平)《おおっ》
(重治)《ハハハ》
(恭平)《うわっ》
(恭平・重治)《おっ。
きた。
高い》
(重治)《たまや!》
(恭平)《たまや!》
(従業員)いらっしゃいませ。
(職員)次の調査航海までもう時間ないですし。
あしたの説明会では帝都大の湯川先生に電磁探査の方法と利点を説明してもらいます。
(職員)さっさと食べて休むか。
《紙なのになぜこの底の部分は燃えない?》《不思議だと思わないか?》
(チャイム)
(ノック)
(従業員)僕どうしたん?大丈夫?
(恭平)あっ。
すいません。

(看守)川畑重治。
面会や。
(看守)来い。

(ノック)せ…先生!?
(看守)はい。
行って。
(看守)はい。
つえ。
(重治)あっ。
(看守)20分以内でお願いします。
はい。
お座りください。
警察は首をかしげてますよ。
緑岩荘では一酸化炭素中毒の再現実験を繰り返してますがいまだ成功していません。
(男性)この数値だと致死濃度には達しませんね。
でも僕には再現できます。
あれは事故じゃない。
殺人ですよね?塚原さんは殺された。
私は何も。
そう。
あなたは何もやっていない。
手を下したのは恭平君です。
何をおっしゃってるんです?警察が緑岩荘にやって来たときのことです。
屋上から下りてくる捜査員を見たとき恭平君が僕にこう言ったんです。
《上に何かあるのか?》《煙突だよ》僕は驚きました。
屋上に上がらないかぎりそんなものがあるとは分からないからです。
でも彼は知っていた。
恭平君は屋上に上がったんです。
そして足の悪いあなたには上れないはしごを使って煙突の上に。
湯川さん。
恭平君が僕に教えてくれたんです。
(恭平)《ロケット花火が部屋に飛び込んだら危ないって》《他にも飛び込みそうなところは全部ふさいどこうって》彼は煙突の上にもふたをしました。
あなたの指示で。
使ったのは段ボール箱ですか?水にぬらして煙突にかぶせればいい。
もちろんその前に塚原さんには適当な理由を言って海原の間に移ってもらわなければならない。
(塚原)《持ちますよ》
(重治)《いやいや。
あっ》《すいません。
こちらです。
海原の間。
どうぞ》そしてそこで眠ってもらう必要がある。
睡眠導入剤はどうやって飲ませたか?
(重治)《これはサービスさせていただきますので》そう。
酒に混ぜればいい。
(重治)《後でうちのに布団敷きに来させますので》
(塚原)《はい》
(重治)《失礼します》あなたの計画が実現していくのはここからです。
(花火の音)煙突をふさがれて行き場を失った排煙は逆流する。
やがて不完全燃焼を起こしたボイラーから一酸化炭素が発生する。
そして壁の亀裂から海原の間に流れ込んでいった。
かつてエンジン開発に携わっていたあなたなら容易に想像できたでしょう。
室内の一酸化炭素は10分足らずで致死濃度に達することを。
(恭平)《うおー。
すごい。
次僕がやる》
(重治)《おお。
大丈夫か?気を付けろ》
(恭平)《次2連発いきます》その後恭平君に煙突のふたを回収させあなたは塚原さんが死んでいるのを確認した。
全てはあなたの計画どおりになったんです。
ではなぜ?なぜあなたが塚原さんを殺さなければならなかったのか?仙波英俊について警視庁の友人に調べてもらいました。
仙波はかつて三宅伸子という女性を殺害したとされた男です。
もうやめてください。
でも犯人は仙波ではありません。
やめろ!成実さんです。
事件はあなたが名古屋の工場に単身赴任しているときに起こった。
しかしあなたは何が起こったのかすぐに想像できた。
なぜなら成実さんは実は仙波英俊の子供だということをあなたは知っていたからです。
しかしあなたはそれを隠し続けた。
事件が起きるまでの13年間。
そして今までの29年間。
成実さんを自分の娘として受け入れてきた。
(重治)《俺には全然似てないってさ》
(重治)《そりゃそうだよな。
似てないよな》それがどんなにつらく苦しいことか僕には想像できません。
でもそれに耐えられる理由はただ一つです。
あなたが成実さんを心から愛してるからでしょう。
彼女を自分の本当の娘として育ててきたからです。
彼女が必死になって玻璃ヶ浦の海を守る理由を自分の身代わりになってくれた本当の父への思いだということもあなたは知っていたはずです。
(車のクラクション)
(節子)《成実!》だがそれでもあなたは黙って見守り続けた。
あなた方家族は全員が秘密を抱えていたんです。
しかしそれはお互いを愛するが故に必死に守ってきた秘密だ。
ところがそこに塚原さんが現れた。
(節子)《何か勘違いしてらっしゃいます》《失礼します》
(塚原)《待ってください》《話だけでも聞いてもらえませんか?》
(節子)《ハァー》
(重治)《どうした?》
(節子)《ああ。
別に》
(重治)《おお》あなたは塚原さんに恐れを抱いたはずです。
この人物は葬り去りたい過去への扉を開く不吉な使者だと。
彼を生かしておくことは自分たち家族の破滅につながると。
もちろんあなたなら最初っから想定していたんでしょう。
警察は塚原さんの死因が一酸化炭素中毒だと。
死亡場所が緑岩荘だといつか見抜くかもしれないと。
だが最悪そうなったとしても業務上過失致死と死体遺棄。
真実は暴かれない。
秘密は守られる。
成実さんは守られる。
さすが学者さんだ。
恐れ入りました。
でもあなたがおっしゃったことはまったく見当違いですよ。
途方もない作り話だ。
私は妻にも娘にも秘密なんて持ってません。
つらいとか苦しいとかそんなこと思ったこともありません。
(重治)今もそうですが。
ねえ。
湯川さん。
若いときの節子はそれはもうべっぴんで気立てもいい。
周りの男はみんなほれてしまうような女だったんです。
(重治)そんな高嶺の花が私と結婚してくれた。
そのときの幸せは今も変わりません。
節子が産んでくれた娘がカワイイのは当たり前です。
私の娘なんですから。
成実は。
(成実のすすり泣く声)僕の仮説は間違っていますか?はい。
そうですか。
つまらない話をしてすみませんでした。
お元気で。
最後に一つだけ。
恭平君に伝えたいことはありませんか?ごめんなと。
せっかくの夏休みだったのにごめんなと。
分かりました。
成実さん。
成実さん。

(成実)お父さん。
お父さん。
ごめんなさい。

(成実)お父さんね全部知ってた。
そう。
(重治)《部屋に死体が転がってたなんて知れたらうちは。
つ…つぶれちまうだろうが!》《ホントに。
ホントに事故なの?》
(重治)《事故だよ。
んっ!》《手伝え!早く!早く》・
(ドアの開閉音)
(節子)《大丈夫?》《ご機嫌ね。
楽しかった?同窓会》
(重治)《似てないって言われたよ》
(節子)《えっ?何?》
(重治)《俺には全然似てないってさ》
(節子のせき)お母さん。
あのね。
私やっぱり。
(節子)成実。
ちゃんとご飯食べなさいよ。
付き合ってくれてありがとう。
いい思い出になったよ。
(成実)私こそ。
おかげでお別れが言えました。
湯川さん。
私は罰を受けようと思います。
「玻璃ヶ浦の海を守ってくれてありがとう」仙波さんから君への伝言だ。
君はみんなから愛され守られている。
私にはそんな資格はありません。
だが大事な使命がある。
使命?恭平君を守ることだ。
(敬一)早く帰れてよかったな。
もっと何日も色々聞かれるかと思ってたもんな。
(恭平)お父さん。
(敬一)うん?
(恭平)あれが事故じゃなくて誰かがわざとやったんだったらどうなるの?
(敬一)何の話だ?
(恭平)緑岩荘でお客さんが死んじゃったこと。
(敬一)わざとやったら殺人事件じゃないか。
何言ってんだ?・
(フロント係)おはようございます。
(敬一)おはようございます。
すいません。
チェックアウトお願いします。
(フロント係)かしこまりました。
(恭平)《じゃあさこれは燃えないの?》
(恭平)《これでいいの?》
(重治)《それで煙突もふさいできてくれないかな?》《煙突?》
(恭平)《どうしたの?》
(フロント係)お調べいたしましょうか?
(敬一)お願いします。
恭平君はいつか気が付くだろう。
自分が何をしてしまったのか?そのときから彼は自分自身を責め秘密を抱えながら生きていくことになる。
だが同時にきっと知りたいと思うはずだ。
あのときなぜ伯父さんは自分にあんなことをさせたのだろうと。
彼がそれを君に聞いてきたときそのときは真実を包み隠さず話してほしい。
真実を包み隠さずに。
全てを知った上で自分の進むべき道を決めるために。

(恭平)《次2連発いきます》
(運転手)ありがとうございます。
(敬一)お世話さま。
(敬一)まだ時間あるからジュースでも買ってくるか。
(恭平)うん。
(恭平)ハカセ。
君が今日帰ると聞いてね。
ペットボトルロケットを飛ばしたときのデータだ。
これがないと自由研究の宿題ができないだろ?
(恭平)ハカセ。
僕花火やっちゃいけなかったの?楽しかったな。
えっ?この夏休み君は色々なことを学んだ。
問題には必ず答えがある。
だけどそれをすぐに導きだせるとは限らない。
これから先君はそういうことを幾つも経験していくだろう。
それは僕も同じだ。
でも焦ることはない。
僕たち自身が成長していけばきっとその答えにたどりつけるはずだ。
君がその答えを見つけるまで僕も一緒に考える。
一緒に悩み続ける。
忘れるな。
君は一人じゃない。
はい。
(敬一)うん。
これから電車乗るとこ。
はい。
これでよかったんですね。
ああ。
もう夏も終わりか。

(敬一)飛距離変化。
うーん。

(敬一)えー。
L=g分のv2乗sign…。
さっぱり分からん。
距離は?回収。
本番。
プシュー。

(いびき)
(警笛)
日本映画界屈指の名カメラマン木村大作監督最新作映画『春を背負って』
その舞台は標高3,000mの山々が連なる…
4カ月にも及ぶ過酷な撮影を経てついに完成
(木村)今日…。
感動の初日を迎えました
ぜひ劇場で
(真実)「ルシウス!」
(ケイオニウス)「この女は魔女だ」
(真実)「私のことより自分の命を心配してよ」
(ルシウス)「私もそなたと別れたくはない」
(真実)「ルシウスが死ぬ?」
(おなら)2014/06/21(土) 21:00〜23:35
関西テレビ1
土曜プレミアム・真夏の方程式[字]

ガリレオシリーズ最新作、ついに地上波初放送!!シリーズ史上、最も切ない「謎」の方程式!福山雅治演じる天才物理学者ガリレオが導く答え、そしてその行く末は!?

詳細情報
番組内容
 美しき海の街で、真夏の夜に起きた不可解な事件—それは、事故か、殺人か。複雑に絡み合う因縁。重ねられた嘘と罪。そして深まりゆく「謎」…。ガリレオ・湯川は、その哀しき方程式を解き明かすことができるのか。

 手つかずの美しい海が残る玻瑠ヶ浦。その海底鉱物資源の開発計画説明会に招かれた湯川学(福山雅治)は、旅館「緑岩荘」に滞在する。そこで湯川は一人の少年・柄崎恭平(山