らくごのお時間【桂三金◆花筏】 2014.06.22

(福島)皆さんおはようございます。
番組の案内役を務めますMBSアナウンサーの福島暢啓です。
この「らくごのお時間」では月に1回寄席にお邪魔し落語を一席お届けしております。
さて今回私は寄席・八聖亭の前に来ています。
八聖亭はJR福島駅から続く聖天通商店街のビルの2階にあります。
席亭は福島で生まれ育った月亭八方さん。
若手落語家の勉強会や稽古場としても使われているこの八聖亭で先日落語会を開催しお客さんに落語二席をご覧いただきました。
その中から本日は桂三金さんの落語をご覧いただきます。
(桂三金)「職人なんでございますね」。
芸歴20年…。
三金さんはさあ今回の演目は…。
それではどうぞ!
(出囃子「喜撰くずし」)
(出囃子「喜撰くずし」)どうもどうもどうも。
(拍手)よいしょ。
よっとしょっとどっこいしょ。
ああ〜どうもどうも。
はいええ〜どうもありがとうございます。
桂三金でございます。
ようこそお越しくださいましてありがとうございます。
まあしかしありがたいですねこうやって太ってるとですね…まあ太ってるんですよほんとの話はね。
(観客たち)はははっ。
体重が120キロ体脂肪率が51%でございます。
もう大変ですよ。
特に3月となりますと相撲取りに間違えられるというのがありまして「あの人まだまげ短い。
髪の毛短いからまげ結われへんねんで」とか言われたりなんかしますけども。
まあ今と昔とだいぶ相撲が違いましてですね昔はですねやっぱ大関というのが最高位の時代がありまして江戸時代のときは大関が最高位というのがありましてね。
10日間の相撲興行が大概あるという。
まあ江戸の本場所が10日間。
また地方巡業なんかでも10日間というのがまあ一つの区切りやったそうです。
であの〜今違うところはですね今はこないして横綱が負けたりなんかしますと座布団パッとこう投げますわね。
これは昔はこういうふうな羽織がありますわねこの羽織を投げてたそうでございます。
座布団やなくて羽織をこうパッと投げてたそうです。
でどうするかといいますとこの羽織をですね投げてもらって…自分のひいきの力士がええ相撲取ったり勝ったりしたら羽織を投げる。
この羽織を受け取ってですね付き人かなんかが支度部屋に持って帰る。
ほな旦さんが来て「いや関取ええ相撲やったで。
羽織預かってくれてるか?」。
「ああ〜はいはい。
これですね。
はいどうぞ」と渡すというねそういうふうなことになってましてそのときに「あっありがとう。
ほんならこれご祝儀ね」という羽織と祝儀を引き換えにするそういうふうなシステムがあったそうでございます。
つまりこの羽織を投げ込んだらあとで祝儀を渡すというね。
投げてみますか?
(観客たち)ははははっ。
まあまあ投げなくてもいいですけどもね。
ですからそういうふうなことがいろいろあったそうでございますけども今と昔とだいぶ相撲が違う。
そんな古い…昔の相撲のお噺でおつきあい願いたいと思いますが…。
「徳さんいてるかいな?」。
「こらどなたやと思ったら千田川の親方で。
用があんねやったら言うていただきましたら手前の方から寄してもらいましたのに。
まあまあ上がっておくれやす」。
「おうほんなら上がらしてもらうわ。
おい徳さんお前なんじゃいしばらく見ない間にまたひと回り肥えたんと違うかえ?」。
「そうでんねん。
もうぶくぶくぶくぶく太りましてな小回りが利かんようになってまんねん」。
「そらその体やったら小回りも利かんやろ。
いや今日寄してもうたんはほかでもないんやあんたがそないしてな一生懸命ちょうちん貼ってなさる。
それ一体日になんぼになんねや?」。
「もうけでやすか?そらぁつらいなぁ。
まあ日にもよりますが近頃は夏祭りのちょうちんの注文もどっと入ってくる。
一生懸命貼ったとして日にまあ1分でやすか」。
「ほう職人で日に1分稼いだら立派なもんや。
そこな2分出そうやないか。
お前さんの体14〜15日の間このわしに預けてはくれんかえ?」。
「親方2分っちゅうたら倍でおまへんか。
貸すの貸さんの言うていただきましたら。
わたいね…大阪にぎょうさんちょうちん貼る職人いてます。
けどまあわたいの右に出るやつはそういてまへんのでなぁ。
どんな難しいちょうちんでも見事に貼ってご覧に入れますで」。
「お前何を言うねん。
お前にちょうちん頼むんやったら別に2分払わんでも1分で済む勘定やがな。
いや実はなうちの大関がな…」。
「おう花筏関がどないかしはったんですか?」。
「うんちょっと今ふせっとるんじゃ」。
「どっか悪いんで?」。
「うん医者に診したところなこの病人命には別状ないと。
ところが床一寸たりとも動かすことはでけんという見立てや。
拍子の悪いことに播州・高砂で10日間の相撲興行を請け負うてきた。
向こうに番付も送って手付けももろてあとは乗り込みやというときにこの大関の病気や。
先方に話をしたところがやなこの度の興行今日本一といわれてる大関・花筏関の人気でもってるようなもん。
それを肝心の大関が来ぇへんってなことになったら立ち行きいきまへん。
かというて病気の大関に相撲を取れというのもむちゃな話。
ここはなるような話にしまひょっちゅうのでな聞いてみたら相撲は取らいでもよろしい。
土俵へ上がって土俵入りのまね事さえしてくれたらそれで結構でございますと。
誠に話の分かったこっちゃ。
ところが今言うてるとおりな床一寸たりとも動かすことはできへん。
まあ正直な話手付けの方にももう手ぇ付けてしもてどないもこないもならんようになってしもてんねん。
困ったなぁと思ってたんやがふっと思い出したんが徳さんお前さんや。
立派な体やがな。
それにな面ざしがうちの大関にうり二つ。
お前やったらほんま物の大関見た人間でもごまかしが利くと思う。
わしに付いて14〜15日高砂へは行ってくれんかえ?」。
「親方なぶんのやったら帰っておくんなはれ。
わたいのこの体ねこれ肥えてんのとちゃいまっせ。
腫れてまんねん。
いや病気だ。
それを昨日今日入った相撲取りの代わりならまだしも今日本一といわれている大関・花筏の代わり務まるか務まらんか考えたら分かりそうなもんでっしゃろ」。
「さあさあ徳さん話はあんじょう聞かんかいな。
別に相撲取れ言うてんのやないねん。
土俵入りのまね事さえしてくれたら用事は若い者がする。
食べたいもん食べて飲みたいもん飲んで日当は2分や」。
「ほななんでっかいな?相撲取らいでよろしいんかいな?ほんで食べたいもん食べて飲みたいもん飲んで日当が2分。
これ悪い話やおまへんな。
ほんならまあ行くとしまひょか」。
「おお〜行ってくれるか。
そうと決まったらなこれ手付けで1両ここに置いとくさかいな。
出立はあさってや。
お前にもいろいろと支度があるやろ。
頼んだで」。
ポイッと帰ってしまいます。
まあ今ではこういうマスコミの発達してる時代ですからそういうことはできませんがそういうふうなテレビラジオ新聞等のなかった時代こういうごまかしが利いたんかも分かりません。
そうこうしている間に床山がやってまいりましてこのちょうちん屋の徳さんの頭ああでもないこうでもない…。
立派に大銀杏にと結い上げます。
足に任せて高砂へとやってまいります。
この高砂の土地昔から相撲の熱が大変盛んな土地やったそうで。
そこへ今日本一といわれてる大関・花筏が来るというので町内寄ると触るとこのうわさ。
がらり初日の蓋が開きますと大勢の見物人が詰めかけてまいります。
まあもっとも大きく入り口に看板がしつらえてありまして「大関・花筏病気のため取組の儀御免こうむり土俵入りのみ相務め申し候」こう書いてありますがそんなことはお構いなし。
とにかくひと目ほんま物の大関を見たいというので場内立錐の余地もない大入り満員。
相撲番数取り進みましていよいよ三役力士土俵入り。
露払いと太刀持ちを従えましてこのちょうちん屋の徳さんシュッと土俵へ立ちますと場内から「大関!」。
「花筏!」。
「日本一!」。
上々の首尾で土俵入りを済まして帰ってまいります。
宿へ帰って来ると早速勧進元が挨拶に来る。
宿屋の主が挨拶に来る。
酒はどんどんどんどん運ばれる。
魚はじゃんじゃん持ってくる。
若い女はきゃあきゃあ言う。
徳さん喜んで飲みよった食らいよった。
へべのれけれけになりますとそのままゴロッと横になって寝てしまいます。
明くる日起きまして土俵入りを務めまして帰ってまいりますと酒攻めの魚攻めのべんちゃら攻め。
これで日当が2分。
「はあ〜こないボロいんやったら10日と言わず20日ひと月続かんもんかいな」と思っておりますがその間に相撲の方はどんどんと進んでまいります。
一方この土地の花相撲…余興相撲というものでこういうときは必ず素人の飛び入りがあったそうでございますが。
この地元の網元のせがれで千鳥が浜大五郎これが草相撲…素人相撲とはいえ大関まで上った男。
これがこの初日から飛び入りに出たんですがこいつが強い。
もう大阪の玄人衆をパ〜ンと投げ飛ばすやら土俵へたたきつけるやら。
土付かずの全勝でございます。
これがまた人気を呼んだと見えましてどんどんどんどんお客さんが増えてくる。
いよいよ明日が千秋楽。
この前日にですね明日の取組を発表いたします。
「何々川には何の海。
何々川には何の嶽」。
結びの一番呼び出しがひと調子声を張り上げよって「千鳥が浜には花筏〜!」。
さあこれ聞いた見物人がびっくりした。
「ちょっと聞いたか?聞いたか?聞きなはったか?今の。
今日までずっと勝ちっ放しのあの千鳥が浜と今日までずっと休んどる大関・花筏明日相撲取りまっせ」。
「はあ〜ほんまでんなぁ。
こら明日女房質に置いてでも見に来なあきまへんな」。
「あんた何言うてまんがな。
あんたやもめでんがな。
どないして質置きまんねんな」。
「ああ〜とにかくこの相撲逃したら先祖に対して申し訳がない。
わしは絶対来るさかいな」。
うわ〜っという盛り上がり。
びっくりしたのは徳さん。
真っ青な顔になって宿へ帰ってまいりますと「よいしょ。
よし!んっんっんっ!よし!よっ…。
よし!ふっ!とっとっとっ…」。
「おう徳さん」。
「ああ親方」。
「お前何をしてんねん?」。
「いやわて荷造り」。
「荷造りってどういうことや?」。
「ええわたい大阪へ帰ります」。
「大阪へ帰りますって…。
相撲もあと1日残ってあるわ」。
「残ってあるわってあんた何を考えてまんねん?いやわて大阪へ帰ります」。
「それではわしが困る」。
「困るやおまへんがな。
あんたね町触れ聞きなはったか?明日千秋楽結びの一番千鳥が浜には花筏ってあれ一体なんでんねん?わたいね相撲を取らんちゅう約束で来てまんのやで。
しかもそれ相手が千鳥が浜って。
わたいね人に聞いて知ってまんねん見たことおまへんけどな。
そんな強い力士ないそうやおまへんかいな。
大阪の玄人衆が土俵へたたきつけられるわ土俵の外へ投げ飛ばされるわ。
そんなんと明日やってみなはれ。
わたいなんかね立つ間に両方の手ガッとつかまれてそのままピ〜ッてイカみたいに裂かれてしまいますわ。
わたいね命まであんたに預けた覚えはおまへん。
大阪へ帰らしてもらいます」。
「いやそれではわしが困る」。
「困ったらよろしいがな。
約束が違いまんがな。
私相撲取らんちゅう約束で…」。
「ああ〜そうか。
そらわしは確かにいかんとこあるかもしれんけどな徳さんお前にもいかんところがあんのと違うかえ?」。
「なんでんねん?」。
「大関・花筏は相撲が取れん病人やという触れ込みで来てんねやで。
それを宿屋の主がうちに来て言うのにはあの大関病気やそうですが飯3升酒5升飲みます。
あんな達者な病人見たことがない。
こない言うんでなわしは大阪にいてるときは飯は5升酒7升飲んでました。
病なりゃこそそれだけしかあきませんねやなとごまかしといた。
ところがなこの度ごまかしができんことが出来たっちゅうのはおとといの晩やったかお前ここの女中部屋に夜中に這うていったそうやないかい」。
「あれ知れてますか?」。
「知れてますか?やないがな。
なんでそんな行儀の悪いことをすんねや。
宿屋の主が来て言うのにはやな大関・花筏夜這いするぐらいの元気があんねやったら高砂くんだり素人衆に相撲の稽古つけてもうてもまんざら罰は当たりまへんやろとこない言われてみぃな。
ああ〜ひょっとしたら病がようなったんかもしれません。
ほんなら千秋楽には相撲取らしましょとわしは言うた。
言うた腹には大阪の相撲取りとやな八百長相撲取らそうと思ってたんやがな。
ところがな相手はその言葉尻捉えてそれやったら今日までずっと勝ちっ放しの千鳥が浜と組ましておくんなはれ。
これやったら千秋楽尻晴れすること間違いございませんとこない言われてみぃ。
こっちは大関向こうは素人や。
これ断ることができると思うか?黙って引き受けたわしがいかんか?徳さんお前にもいかんところあんのと違うか?覚悟決めて明日相撲取ったらどないや?」。
「ああ〜…。
そら親方のおっしゃるとおり。
わたいの身から出たサビですわ。
わたいはどうっちゅうことおまへんがなんにも知らんとうちで帰りを待ってる今年24になるせがれと3つの嫁はんが…」。
「それあべこべや」。
「あべこべが待っとります。
どうぞ命だけはお助けを」。
「徳さんわしは何も命まで取ろうというわけやないがな。
お前さえその気になってくれたらな明日お前の体に傷も付かず大関の名前も傷が付かん方法があんねや」。
「ほんまっすか?」。
「ああそれがある。
ええか?明日な土俵へ上がったら千鳥が浜向こうに回して立派に仕切れ。
ほんでな立ち合うたときやもうなんにも考えたらあかん。
両方の手を思いっ切り前へポ〜ンと突き出すんや。
その手が相手の体のどこでもかめへん。
触ったなぁと思ったらそのまま後ろへゴロ〜ンとひっくり返れ。
見とった見物人どない思う?大関たる者があんなもろい負けをするはずがない。
はあ〜やっぱり病やったんや。
病を押して我々のために相撲取ってくれた。
さすが日本一の花筏ということでやな大関の名前に傷が付かずお前もケガする間がない。
どや?これ」。
「はあ〜なるほど。
はあ〜それぐらいやったらなんとかできると思います。
やらしてもらいますんで」。
「おおそうか。
ほんならな明日の相撲が大事や。
ええか?今日はほどほどにして早いこと寝なはれ」。
「分かりました。
おやすみ」。
パッと2階へ上がってしまいます。
しばらくいたしますと2階から…。
「ドス〜ン!」。
「バタ〜ン!」。
「ボテ〜ッ!」。
「なんやねんな?上でドタバタと。
徳さん一体何をしてんねん?」。
「あっ親方あの〜相撲の稽古」。
「相撲の稽古?お前ほんまに取るつもりか?」。
「いえ尻餅の稽古」。
「しょうもないことしてんねやないがな。
早いこと寝なはれ。
おやすみ」。
と寝てしまいます。
一方千鳥が浜の方ですが…。
「お父つぁんただいま帰りましたんで」。
「おおおおおかえり」。
「お父つぁん喜んでおくんなはれ。
今日もまた勝ちましたんで」。
「ああそうらしいな。
今若い者が教えてくれた若旦那またお勝ちになりましたいうてな。
けどわしはなお前が勝とうが負けようがどっちゃでもかめへん。
体さえ無事やってケガせんだったらそれでええねや」。
「お父つぁんそれより喜んでおくんなはれ。
明日千秋楽結びの一番わたいとあの大関・花筏相撲取ることになりましたんで」。
「何?大関と?お前それ断ったんやろな?喜んで引き受けた!?何をすんねやお前は。
ええか?お前今日までの相撲な皆自分の力で勝ってると思ってんのか?相手は日々寒中あかぎれでもな稽古してはる玄人衆や。
わざと負けてくれてるっちゅうのが分からんのんかいな?ああわしはこの度の相撲の興行かなり金も出してる旦那衆や。
お前その若旦那やないかいな。
大阪の玄人衆らはなさぞはらわたが煮えくり返ってたに違いない。
はあ〜なんでこんなやつに負けたらんならんねんと思ってたんや。
で明日千秋楽ここを離れたらもう当分来ることはないわ。
千秋楽結びの一番であの憎い憎い千鳥が浜土俵でたたき殺して帰ろうというのでやないちばん強い大関が出てくんねやないかい。
お前あの大関なほんまに病や思ってるか?わしは宿屋の主に聞いて知ってんねん。
こんな高砂くんだりで相撲できるかいっちゅうて酒飲んでなおとといの晩なんか夜這い…這うてきたっちゅうやないかいな。
お前わざと負けてくれてんのも分からんのんかいな」。
「お父つぁんお言葉ですが私も長年相撲取っとります。
相手がわざと負けてくれてるか自分の力で勝ってるかそれぐらいの区別はつくつもりです。
ましてや明日大関…日本一の大関と取れるんやったら腕の一本や脚の一本…」。
「おおおおおお我が親の前で腕の一本脚の一本ようそんなことが言えたな。
かめへん相撲でもなんでも取りくされ。
そのかわり勘当じゃ!」。
「か…勘当でございますか?いやお父つぁん勘当と言われますと返す言葉がございません。
明日の相撲諦めることにいたします」。
「おお〜諦めてくれるか。
いやいやほかに楽しみのないお前のことやさかいな相撲ぐらいはかめへんと思うのやが明日は危ないぞ」。
「お父つぁんけどわたいが取らんかったら誰ぞ別の者が取ると思います。
大関どんな相撲取るか見に行くぐらいは…」。
「見に行くのはなんぼでもかめへん。
けどな土俵に上がったらあかんぞ。
分かったな?ではそうなったら明日も早い。
早いこと寝なはれ。
おやすみ」。
パッと2階へ上がって寝てしまいます。
いよいよ千秋楽でございます。
暗いうちから鳴り響きます櫓の太鼓天下安穏国家太平ドドンがドカドカと打つんやそうですがその櫓太鼓鳴り響きますと近郷近在から大勢の人が集まってまいります。
この千鳥が浜やっぱり見に行くにしても締め込みだけはしとかんと力が入らんというので締め込みいたしましてその上から派手な浴衣を1枚引っ掛けてこうやってまいります。
最初は遠巻きに見ておりますがやはり根が相撲好き。
だんだんと前へ前へもうちょっと前もうちょっと前へ前へ前へと来てるうちにいよいよ結びの一番の手前になりますと土俵のそばまで来ております。
いよいよ呼び出しがええ声で呼び上げます。
「ひが〜し花筏!花筏〜!に〜し千鳥が浜!千鳥が浜〜!」。
「うわぁ〜!」っという大歓声。
「千鳥が浜〜!」。
「花筏頑張れ〜…」。
(観客たち)はははっ。
「千鳥が浜俺がついてるぞ〜!」。
「花筏も頑張れ〜…」。
(観客たち)はははっ。
「千鳥が浜!」。
「花筏〜…」。
いろんな人がいますが。
さあこの歓声が耳に入るとこの千鳥が浜親の意見もなんにもポ〜ンと飛んでしまいまして土俵へふらふらふらっと上がっていく。
徳さんの方も上がりますが生まれて初めて土俵に上がるもんですから下の方で親方が「徳さんそうそうそこでな塩をまくねん。
うっ…わしにまいてどないすんねん。
違うがな。
その水を…いや飲むんやないがな。
吐き出す…わしに吐き出してどないすんねんな。
とにかくもう土俵へ上がれ土俵へ」。
さあ気をもんでおります。
さあ二人の力士がピシッピシッと仕切りにかかる。
さあ力が入ります。
徳さんの方は見んでもええのにやはり怖いもの見たさというやつでね皆が怖い怖いと言うてる千鳥が浜一体どんな顔してんねやろ?仕切りながらひょいっと顔を上げますと一生懸命仕切っております千鳥が浜の両の眼がそれをさしてぐりぐり!「ああ〜…えらい顔しとんなぁ。
ああ怖ぁ〜!あぁ〜…。
あれ?あれ?あれ?か…体が動けへん。
あ…あかん蛇ににらまれた蛙とはこのこっちゃ。
ああ〜これやったらなんにもでけへん。
殺されてしまうがな。
ああ〜どうしよ?僅か2分という日当に目がくらんで高砂くんだりまで来てここで命を落とすのか…。
これがこの世の見納めか」。
思わず熱い涙がボロボロ。
「南無阿弥陀仏!」と念仏唱えおった。
この「南無阿弥陀仏」という声が千鳥が浜の耳にすっと入る。
「南無阿弥陀仏?なんじゃいこいつ土俵の上で念仏とはどういうこっちゃ?あっしもた!やっぱりこいつお父つぁんの言うとおりわしを土俵でたたき殺すつもりやわ。
あまりにもかわいそうやいうので涙流して念仏唱えてくれてんねや。
ああ〜しもた。
わしなんで土俵に上がってんねん。
えっ?ああ〜ふらふらっと上がってしもたんや。
ああ〜親の意見を聞かなんだばっかりにここで命を落とすのか。
これがこの世の見納めか」。
熱い涙がボロボロ。
「南無阿弥陀仏!」。
さあ行司がびっくりした。
両方の力士が涙流して念仏唱えてる。
もう呼吸も何もあったもんやない。
ええ顔向きで「よいしょ〜!」と軍配を上げます。
もう徳さんの方は一生懸命両方の手を前へパ〜ンと突き出します。
千鳥が浜の方は怖い怖いの一点張り。
相撲取る気もなんにもないところへ徳さんの手が顔にパ〜ンと当たったから後ろへゴロ〜ンとひっくり返る。
「ああ〜!あれ?いやいやいやここわしがひっくり返るんやがな。
お前がひっくり返ってどないすんねん。
ああ〜ああ〜勝ってもた!」。
「勝負あった花筏!」。
さあこれ聞いた見物人が喜んだ。
「見なはったか?見なはった?いやさすがやっぱ大関ですな。
千鳥が浜なんぼ強い強いいうても素人。
ねえ顔をパ〜ンと張られたら後ろへひっくり返りましたね」。
「いや〜さすがでんなぁ。
あの大関の手知ってまっか?」。
「なんでんねん?」。
「あれはね張り手っちゅう技ですねや」。
「張り手!さすが大関張るのがうまいな」。
はるのはうまいはず。
ちょうちん屋の職人でございます。
(拍手)
(受け囃子)桂三金さんの落語をお楽しみいただきました。
ご出演ありがとうございました。
いやありがとうございました。
落語を始めたきっかけっていうのは?小学校4年生の学芸会でやったんがいちばん最初人前でやったのは。
早いですよね。
そうなんです。
うちの親が結構落語好きでね「あんたこれ学芸会でやったら?」って言うて台本をもらって。
そんときは「時うどん」でしたかね。
ああ〜。
それを小学校4年生のときに人前でやってまあ割とウケたわけですよ。
その気持ちよさが忘れられずということなんでしょうかね?関西大学入ってそのまま4年間落語やってそのあと信用金庫に入ってその中に落研があったんですよ。
信用金庫の中に落研っていうのも珍しいですよね。
そういうふうな地域貢献の形として年金もらってる…年金口座ね作ってもらってるお年寄りの方々に落語聴かせるというそういうクラブがあったんです。
まっとうな理由で…。
そうそうそうそう。
それをやってらっしゃって入門に踏み切ったのはどのタイミングだったんですか?大学時代に一生落語やり続けようとは思ってたんですよ。
おんなじお客さんばっかりでねまあいうたら年金もらってる人って義理で笑ってくれたりするわけですよ。
なんかどうせ一生やんねやったらプロになった方がええかなと思ってプロになったわけですね。
より高みを目指そうと文枝師匠のところに入られた…。
大学の先輩やからというのじゃないですがやはりいちばん身近にいてはる偉大な尊敬できる落語家さんでしたんでね。
へえ〜。
今年20周年を迎えられると…。
はい早いもんですね。
20周年を記念してこちらのこの八聖亭さんで毎月…三金なんで第三金曜日にここで落語会を…。
なるほど。
まあ二十歳になった感じでねなんかひと皮むけるというか殻破るようなそんな感じの落語会をやっていきたいなと思ってますんでね…。
おめでとうございます。
本日はいろいろとお話伺いました。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
第三金曜日にここ八聖亭で行われる桂三金さんの落語会「三金の日」。
次回のゲストは桂染弥さんです。
詳しくは番組ホームページまで。
来月は27日放送。
お楽しみに!2014/06/22(日) 05:00〜05:30
MBS毎日放送
らくごのお時間[字]【桂三金◆花筏】

<第9回>桂三金◆「花筏」〜大阪市福島区の八聖亭で行われた寄席の様子をお届けします。▽月1回、第4日曜の朝に本格的な落語を一席。

詳細情報
お知らせ
月に1回、寄席小屋を訪れて、脂の乗った落語家の落語を1席お届けします。
番組内容
桂三金さんが「花筏」を披露します。

桂三金さんは、桂三枝(現・6代桂文枝)の9番弟子で今年で入門20周年を迎えました。
出演者
【落語】
桂三金
【案内人】
福島暢啓(MBSアナウンサー)

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – お笑い・コメディ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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