お肉の持つ凝縮されたうまみ。
そしてとろける脂の甘み。
今日の食材は食べたらたちまち虜になる…最近目にする機会がぐんと増えたと思いませんか?それもそのはず。
今日本には生ハムが世界中から押し寄せているんです。
すごいこっちはスペインでしょ。
こっちイタリアね。
あそこはベルギー。
こちらは年に一度開催されるアジア最大級の食品見本市。
あっありましたよ生ハムが。
ここいってみましょう。
はじめましてこんにちは。
ボンジョルノ!いただきま〜す。
生ハムです。
イタリアパルマ地方で作られた生ハム。
そのお味はというと?オイシイ!一方こちらは…世界にその名をとどろかせるイベリコ豚を使い4年間熟成させました。
なんと100gで5000円という高級品です。
空前の生ハムブームに沸く日本をターゲットにしているのはイタリアスペインだけじゃないんですよ。
ハンガリーはなんと国宝に認定される貴重な豚をひっ提げての参加。
高級感あふれる生ハムで日本人の心をわしづかみにするのが狙いです。
そしてドイツはスモークの香りをきかせた個性的な生ハムで勝負をかけます。
私たちを魅了してやまない「生ハム」。
今朝はその奥深〜い世界にご案内いたします。
(2人)おはようございます。
すごいイベントですね肉肉肉!生ハム。
肉好きの私としては夢のような。
イタリアとかスペインはあれですけどドイツとかハンガリーまで。
ヨーロッパどんどん日本に…。
今波が押し寄せているんですが。
お酒は飲まないんですが僕はこういったつまみ的なの大好きなんですよ。
でも楽しそうなイベントでしたね。
夢のイベントじゃない。
おはようございます。
もう最高でしたよ。
今回プロ向けの見本市だったんですけどすごい種類の生ハムがたくさんあってビックリしました。
今日は会場に来ていた世界の生ハムをご用意いたしました。
これイタリアか。
生ハムはどれも同じと思っていたけれど見た目ではなく味も違う。
何か見た目が違いますね。
スペインのイベリコの豚は見た事ありますけどこの色に近い。
ボルドーのようなワインのような色。
横になっているのはハンガリー?そうですね。
それでドイツ。
ドイツはくん製してるって言ってた。
でも生ハムって製造工程で1回も熱を加えないんですよね。
だから生ハムって言うんですよね。
だから塩とか使うものとかあと熟成の期間でも味が変わってくるんでしょうね。
今日はそういうところも見て頂きたいなと。
今日はどれが主役なの?ちょっと待って下さい。
今日は実はこちらが主役なんですよ。
これマンドリンでしょ?違いますよ。
プロの世界ではこちらを「原木」と言うんです。
丸のまま1本。
これはどこの国のやつなのよ。
日本産でございます。
メイドインジャパンでございます。
美しい!日本で作っているところあるの!?実は日本には生ハム業界で知らない人はいない伝説の職人さんがいます。
その現場を取材してきました。
秩父の山々の麓に広がる埼玉県坂戸市。
都心から電車で40分のベッドタウンです
あれ?ここじゃないかな?いってみますか。
(ベルの音)おはようございます。
尾島さん?そうです。
会えました。
生ハムの世界で知らない人はいない伝説の職人です
おしゃれですね。
僕がイメージしてた方とちょっと違ったので。
お恥ずかしい。
30っておかしいじゃないですか。
ちょっとおちゃめな尾島さんに早速工房を案内してもらいました。
奥の部屋に向かうと…
うわ〜すごい!すごいな〜これ。
こんなにもの生ハムがいたとは。
ご覧下さい。
ずらりと並んだ生ハム。
その数およそ1,000本です
尾島さんの生ハム作り。
工房にカメラが入るのは今回が初めてです。
原料は筋肉が発達し脂もたっぷりのった豚の後ろ足だけ。
重さは1本10kgから12kgにもなります。
まずは余分な骨と脂を取り除いていきます
低い温度で脂が溶ける肉ほど柔軟性があります。
熟成で縮んでもゆがみや亀裂が出にくくいい生ハムになるんです。
目安は8か月以上飼育されている事。
数が少ないため全国から取り寄せています
下ごしらえしたお肉を運ぶ先は…
寒いですねここは。
ここで行うのは塩に漬け込む作業。
冷蔵庫並みの5℃をキープしています
漬け込みには海水を原料にした粗塩を使います。
粒が大きいのでゆっくりと浸透するんだそうです。
一粒味わってみました
なめると甘みもフワーッと出てきますね。
最初から。
漬け込む期間は肉の大きさによって調整し中までしっかりしみ込ませます
塩がしっかりきいたのを確認すると次の工程へ
普通のお風呂につけるわけですか。
水につける事で余分な塩を抜いていきます。
しかし抜きすぎも禁物。
雑菌が発生し熟成の妨げになるからです。
長年の経験から塩抜きは15分と尾島さんは決めています
よいしょ。
水から引き上げたら力仕事が待っていました
これを…。
骨に沿って大きな血管が流れています。
そこに拳を当てながらぐいぐいと出していきます
血が残っていると鉄分が酸化してしまいいい香りがしません
よいしょ。
僕もやらせて頂きました
これは力いるわ。
これを何本もやってるわけですよね。
結構腰にくるんです
でもほら出てきた。
すごいなぁ。
この作業防腐剤など添加物を使えば必要ありません。
しかし尾島さんは塩だけで作る事にこだわります
肉の下準備は整いました。
ここからが生ハム作りの正念場低温熟成です。
室温20℃湿度は70%。
まずはここで3か月間寝かせます。
その目的は
実は麹カビや青カビ乳酸菌などの微生物がしっかり繁殖しないと肉は熟成しません
そもそも熟成は肉に含まれる酵素と微生物がもたらす酵素によって進みます。
この2つが肉のたんぱく質や脂質を分解しうまみや香りの成分を生み出します
2年にわたる生ハム作り。
長い道のりが今始まりました
素材がおいしくなるための環境づくりをしているんだと。
カッコイイ!また骨のしぼり出す作業をやってたけどどう?37年間あれやられている。
体丈夫だろうなと思いまして。
思わず30歳って…。
生ハム年齢の方が先にきちゃってるんだね。
ああやっておちゃめな方でもあるんですけど生ハムの事に対してはすごく熱心な方で。
面倒だけど安全なものをっていうその愛情が全部に入ってるね。
本日の専門家ご紹介いたしましょう。
農産物の流通コンサルタントそして畜産業にも詳しい「やまけん」さんこと山本謙治さんです。
やまけんさんは尾島さんの生ハムはご存じでしたか?もちろんですよ。
生ハムに限らず食肉加工品でいいものを作ろうと思っている人たちで尾島さん知らない人はいない。
尾島さんは日本の生ハム界の父なんだ。
日本の生ハム界の父という事は日本の生ハムの歴史そのものって事ですか?そうですね。
もともと日本の生ハムの歴史は…というか海外の本格的な生ハムが日本に入ってくるのはここ20年ぐらいなんですよね。
まだ最近の話なんです。
96年にイタリアが解禁になって99年にスペインが解禁になったぐらいなので。
イタメシブームって我々子供の頃にあったでしょ。
あのころ有名レストランは解禁されてなかったけどどうしてたかと。
生ハムをね。
食べてたような気がしますけど。
そういう有名店がこぞって使ってたのが尾島さんのなんです。
海外のものじゃなくて尾島さんが国内で作ったものが生ハムとして出てて。
誰もが知っている名だたる名店で使っているのが尾島さんの生ハムだったんですよ。
イタリアの名店が尾島さんの生ハムを使ってた。
すげえ!実は私たちも少し大人になってたから食べてるかもしれないですね。
でもその陰には深い苦悩もあったんです。
尾島さんが生ハムと出会ったのは1965年。
大学で経済学を学ぶためスペインに渡った時の事でした。
郷土料理として登場したのがイベリコ豚で作った生ハムでした。
イベリコ豚はドングリの森に放牧されて育ちます。
その深い味わいと香りに尾島さんは衝撃を覚えたと言います
その後帰国した尾島さんは企業の海外進出を支えるコンサルタントとして活躍します。
しかし心の中ではその仕事に価値を見いだせないままでした。
そんな時に思い出したのがスペイン時代に出会ったあの生ハムでした。
尾島さんは衝動的に豚肉を購入。
生ハム作りへ一歩を踏み出したのです
熟成を始めて3か月。
どんな変化が起きているのかというと…
うわ〜!すごい。
これ尾島さん入っていいですか?いやすごいですねうわ〜。
3か月たつと…これが青カビっていうんですか?
(尾島)そうですね。
こんなきれいに満遍なく青カビがつくんですね。
青カビがびっしりとモモ肉を覆いつくしていました。
でも内部の熟成はまだまだ。
このあと1年以上寝かせて発酵させなければなりません
そこで大事になるのが虫対策。
特に血が集まっている部分に寄りつくためそこを削り取ります
更に削り取ったあとへ…
ラード小麦粉そして唐辛子を混ぜたもの。
虫は唐辛子が苦手なためこのパテを塗っておくと寄りつかないそうです
パテを塗り終わると常温の部屋へと運びます。
季節の移ろいとともにモモ肉の熟成は静かに進み生ハムへと育っていきます
何だろう?分からない。
気温が20℃を超えるとほら脂の滴です。
脂が全体にしみわたり風味が増していきます
仕込みから2年たった生ハム。
その最終チェックです
においを頼りに判断していきます。
僕も嗅いでみました
全然嫌なにおいしないです。
完成した生ハムを食べさせて頂く事に
いよいよきました。
いや〜何かすごいぜいたく。
表面は酸化して食べられないので取り除きます
うわっ赤い!これはうまいよ絶対うまいわ。
食べてみると…
だって味がつくっていったら塩だけですもんね。
尾島さんも仕上がりを確かめます
どうでしょう?出来は。
若い頃においしい生ハムに出会いその味を目指して日本でドンと。
後悔したくないと。
人生一度きり。
それでいてまっすぐやって手も抜かず。
詩人ですもんね言葉が何か。
「おいしくなるために汗をかいている」。
カッコイイ尾島さん。
でも私カビびっしりはビックリ。
あんだけついてたらおおよそこれ食べても大丈夫かなとか思いますがあれがいいんだね。
青カビ白カビ麹菌乳酸菌とかいろんな微生物が関与する事であの複雑な香りと味が出てくるわけですから。
人間の知恵というかすごいですね食に対する欲というか。
あれだけ微生物があると輸出入がデリケートになるのでそれで輸入解禁が遅れたわけです。
今日は2年熟成された尾島さんの生ハムを皆様に是非味わって頂こうと思いまして。
私も尾島さんのもとでしっかり腕を磨いてきましたから。
良太郎君できるの?任せて下さい。
しっかりと私が切らせて頂きます。
頼むよ宝だからね。
こちらは酸化して食べられませんので。
これが蓋の代わりになるわけだ。
乾燥防止になるんですね。
手が震えて自然にうまくいくというのもあるけどね。
薄く切るのが生ハムをおいしく食べるポイントだと思うので。
うまいじゃん!ちょうど脂がうまそう!これ誰いくの?もちろん天野さんです。
天野さんにはしっかりと脂身を多めに切って。
やっぱり脂身の所がおいしいのかしら?脂身が最高でしたね。
俺も一時期イベリコって呼ばれてたんですけど。
ほんとですか!?尾島さんいただきます。
うわ〜いい香り!ほんとだ。
肉のよく発酵した感じのね。
一つの原木だけで味が全然違うんです箇所箇所によって。
今天野さんが召し上がったのは脂身の多い部分。
うまみ爆発!脂が動物の脂じゃないみたいな。
しょっぱいけど甘いですね。
それで肉質がしっかりしてるから本当にかめばかむほどのね。
私もっと乾燥している生ハムしか食べた事ない気がする。
それ切ってから時間たってるとかもあるんじゃないですか。
今の…。
切り立てなので。
やっぱりこうやって食べる生ハムなかなか食べられないですよね。
しかもきれいな色で。
塩だけでこんな色が出るんですね。
普通亜硝酸塩というのを使って色を出すんですけど尾島さんは塩だけでやるという事ですから技術も世話もやらなきゃいけないと。
この赤が深いもん。
もう終わっちゃった。
楽しみの時間終了。
自然にグロス。
90年代に尾島さんが夢にみたあの生ハムが外国から入ってくるようになったら尾島さん的にはどうだったんですか?本場から入ってくるから僕の作る役目は終わったと。
今後は輸入する方に回ろうと思ったんですけどそこでスペインで塩だけで作る生ハムをメーカーから探したんですよ。
そうしたら当時1社もなかったんです。
無添加で作るというのが1社もなかった。
だから塩だけにこだわって作るのも意味があるという事で作り続ける事を決意しました。
ありがとうございます作り続けて頂いて。
そのおかげで今僕の口に入ったわけですから。
体中が今いい香りですね。
尾島さんはまだ最高の生ハムを追い求めています。
長崎に尾島さんの姿がありました
旅の目的は気になる養豚農家の飼育を自分の目で確かめるためです
向かったのは長崎県の北部佐世保市江迎町。
農業と畜産が盛んな町です
どうも。
林さん?はいそうです。
こちらがお目当ての…
九州で注目を集めている養豚農家です。
早速豚を見せてもらう事に
林さんは山の斜面にある5ヘクタールの土地を生かし90頭を放牧しています。
豚舎で2か月育てたあと8か月間牧場で過ごさせます。
ストレスを減らすため同じ母豚から生まれた兄弟だけで育てます
あ〜ラブラブ。
尾島さんが次に注目したのは餌。
何を食べさせたかで肉の味が決まるからです。
林さんは自分で育てた野菜を餌に使っています。
足りない分は栄養管理の行き届いた近くの病院やホテルから集めています。
こうした材料を家族と共に選別します。
食べられないカニの殻や豚が嫌いな果物の皮などを丁寧に取り除いていきます
3時間煮たあと乳酸菌を加え発酵させたら完成です
どんなふうに食べているのかも尾島さんはチェックしました
(尾島)うわ〜すごいですね。
豚本来の姿で育てたい。
そんな林さんの姿勢に尾島さんも共鳴しました
協力して作っていきましょう。
よろしくお願いします。
じかにご自身で足を運ばれてみて。
しかも自然と後ろ足見ちゃうというエピソード面白かったですね。
あと生食というか普通の豚肉用のというのとは違って運動しているからキュッと締まってる感じありましたね。
先日尾島さんの工房に林さんの牧場からモモ肉が到着したんです。
それは筋肉が締まってトップアスリートみたいな。
少し違うんだよ丸々ブクブク太らせただけじゃないって事ですね。
2年後をお楽しみにと。
2年後!この番組続けなきゃ。
会えない時間が生ハムを育てる。
それで郷ひろみさんにも歌って頂こう。
こうやって時間が育てるんですね生ハムは。
我々の食卓に上がってくるようなしょうが焼き用の豚というのは170日ぐらいで100kgぐらいに仕上げて出荷するという感じです。
若いんだ?短いんです。
それはそれで柔らかいうまみもあるし。
でも生ハム作るためには尾島さんみたいに200日以上できれば300日近いのがいいんですよ。
その締まった肉を熟成させて柔らかく食べると。
細胞がギュッとしてると。
長く育てないとそのギュッが出ない。
しかもああいう自由なノンストレスの所がいいと。
そこでこちらをご覧下さい。
尾島さんが使う豚は全部で14種類。
山形は…。
これダイエット茶ですもんね。
いろんな豚がいるんですね。
そして新たに今回加わったのがこちら長崎という事で。
愛知にはいないわね?まだこれからかな。
この辺に天野さんの写真を貼っておこうかと。
ちょうど空いてるんで。
俺尾島さんだったら俺の後ろ足見ると思う。
尾島さんは日本のすばらしい豚にスポットライトを当てたいと言ってました。
いろんな豚が日本にもあるんですね。
今銘柄豚と言われているのが400種類以上ある。
そういう地豚がいろいろあるわけですよね。
その地豚を自分たちが生ハムにできたら日本中が生ハムの国になりますよ。
そうなっていくといいですよね。
その土地土地の生ハムが出来ると。
「日本の生ハムは最高」って世界から言われる時代がくるかも。
スペインとかヨーロッパに行った時に日本の生ハムを探している外国人がいたらすごいですね。
本当に食べた事ないぐらいおいしかったです。
まだ残ってるもん。
香りとかその感じが。
これからの日本の生ハムにも期待でございますね。
尾島さんありがとうございました。
次回の「うまいッ!」もどうぞお楽しみに。
2014/06/22(日) 06:15〜06:50
NHK総合1・神戸
うまいッ!選「塩と豚が生む極上品“生ハム”〜埼玉・坂戸市〜」[字]
「うまいッ!」と声をあげたくなるほどおいしい食材を取り上げ、魅力を再発見する番組。今回は完全無添加!純国産の「生ハム」。珠玉の豚から作られる極上の逸品を紹介。
詳細情報
番組内容
埼玉県で「無添加の純国産生ハム」にこだわる名人がいる。日本の生ハム作りのパイオニア・尾島博さん(78)。全国から集めた一級品の豚モモ肉を、発色剤、防腐剤などの添加物を一切使わず「塩」だけで仕上げる。2年間、自然発酵により熟成された生ハムは、凝縮した肉のうま味ととろける脂の甘みが絶品。「自慢の豚で生ハムを!」と全国の養豚農家からの依頼も相次ぐ。老職人こだわりの究極の生ハムづくりの現場を伝える。
出演者
【司会】天野ひろゆき,武内陶子,【解説】農産物流通コンサルタント会社社長…山本謙治,【リポーター】清水良太郎
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
バラエティ – 料理バラエティ
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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