中央教育審議会(中教審)は20日、大学入試センター試験に代わる「達成度テスト(仮称)」のうち、一般入試の合否判定に活用される「発展レベル」の答申案を示した。大学生に必要な学力を「知識・技能を使える能力」と明記。教科の枠組みにとらわれず、思考力をはかる出題形式を新たに採用する。多面的な人物評価を通じたグローバル人材の育成が狙いだが、具体的な出題内容や評価基準などの制度設計は道半ばだ。
新たな大学入試選抜のあり方を議論してきた中教審の高大接続特別部会長の安西祐一郎・日本学術振興会理事長は、答申案を示し「大学入試は知識の活用力を問う形に変わる」と強調した。
達成度テストには高校段階の基礎学力の定着度をはかる「基礎」と、大学教育を受ける能力を判定する「発展」の2つのレベルがあり、同部会は発展レベルについての検討を続けてきた。
答申案が示された発展レベルは、現在、小学6年生で2021年春に入学予定の受験生から導入される。センター試験との主な違いは、実施回数と実施教科、成績表示の方法の3点だ。センター試験の受験機会が1回限りなのに対し、発展レベルは年2回に増やした。
試験科目も、現行は教科ごとの学習範囲から出題する6教科29科目だが、発展レベルでは、教科の枠組みにとらわれない「総合型」や、複数の教科・科目にまたがって出題する「合教科・科目型」の問題を新たに採用するとした。
同部会は「総合型」と「合教科・科目型」の出題内容を、それぞれ「学習で得た知識・技能を、総合して解決すべき内容」「複数の科目の学習内容を用いて解決すべき内容」と定義した。
例えば「合教科・科目型」では、英語で出題された数学の問題を解いたり、地理と数学の知識を生かして地図上に示された土地の面積を計算したりするといった内容を想定する。
3点目として「1点刻み」の成績表示から、試験の素点を基に数段階のレベル別に表示することとした。これらの変更点は、いずれも「限られた一部の能力を評価するのではなく、多面的・総合的に評価するものへと転換すべきだ」とする入試改革の方向性を明示することで、知識偏重からの脱却を目指している。
答申案は発展レベルの受験後、各大学が独自に行う2次試験のあり方にも踏み込んだ。2次試験の見直しで最優先と位置付けたのは、多面的な人物評価基準の導入だ。
面接や集団討論、高校在学中の活動実績などの多様な経験を総合的に評価するよう大学側に要請した。各大学の入試改革を後押しするため、国に対しても制度変更に前向きな大学を重点的に財政支援することを求める。
昨年11月以降、8回にわたる議論を経て答申案は示された。改革の狙いについて「知識・技能を活用する力を育成することで、新たな価値を創造したり、多様な人々の中で活躍したりできる人材を育成したい」と改めて言及している。
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