大船渡のライブハウス、区画整理で解体 仮設商店街で再出発
東日本大震災後に岩手県大船渡市でオープンしたライブハウス「フリークス」が、区画整理事業のため取り壊されることになり、6月末にいったん閉店する。近くの仮設商店街に移転し、9月の再開を目指す。陸前高田市の自宅を津波で失った代表の菅野安宣さん(39)は「引き続き、多くの市民が集まれる場所にしたい」と再出発を見据える。
フリークスは2012年8月、大船渡港そばのビル2階で開業した。ビルは屋上まで津波にのまれたが、建物だけは残った。内装業を営む菅野さんを中心に、がれきを撤去して内部を改修。費用約800万円は、ライブ音響をサポートする東京の会社などが支援した。
月に約10回開催されるライブには、地元中高生やプロバンドのほか、さだまさしさんやゴスペラーズなど大物アーティストが出演した。
観客も孫の演奏を見に来る祖父母から、アーティストを追って初めて被災地を訪れる人などさまざまだったという。
菅野さんは「音楽を通じ、人同士がつながる場所にしたいと思った。願いがかない定着してきた」と手応えを感じる。
区画整理事業の伴う移転は、開業時から覚悟していた。「海に近い場所での営業には不安があった」と言い、開演前には津波避難の注意事項を観客に伝えている。
移転先の仮設商店街はプレハブで、大音量の演奏はできなくなる。それでも、幅広い世代が気軽に来店してくれるのを期待している。
3年後には、本格的なライブハウスの開設を目指す。菅野さんは「なじんだ場所からの移転や本格再開に時間がかかるのは、被災地では当たり前。そういう現実も発信したい」と話す。
現在のフリークスでは29日、ラストライブがあり、菅野さんのバンドなどが出演する。
2014年06月23日月曜日