南極:日本が新基地計画 温暖化予測に活用
毎日新聞 2014年06月23日 07時00分(最終更新 06月23日 10時05分)
政府が、南極大陸に日本の新たな基地建設を計画していることが明らかになった。2020年代前半の完成を目指し、新基地では、人類が手にしたことのない約100万年前の最古の大気を閉じ込めた氷を掘り出して、過去の気候変動の解明と将来予測に役立てる。完成すれば、1995年に開設した「ドームふじ基地」以来となる。【田中泰義】
◇100万年前の氷掘削
南極では、降り積もった雪が重みで固まって「氷床(ひょうしょう)」になる。そこには大気も一緒に気泡の状態で閉じ込められ、深い部分を分析すれば、過去の気温や二酸化炭素濃度などを知ることができる「タイムカプセル」になる。
政府の南極地域観測統合推進本部は今月、加速する地球温暖化を踏まえ、16年度からの6年間に、南極で地球規模の環境異変を調べる観測計画を進めることを了承。計画の柱に、約100万年前の大気の採取を掲げた。これまでの最古の大気は欧州チームが南極で採取した約80万年前のものだ。
氷床の氷は自らの重みで圧縮され、100万年前の大気を閉じ込めた氷は、岩盤に近い深さ約3000メートルに存在すると考えられる。岩盤付近は地球内部の熱が伝わり、氷が解けやすい環境だが、南極内陸にあるドームふじ基地から数十キロ地点は、氷床の底面付近も解けていない可能性が高いことが分かった。
また、斜面にある氷床は海へ向かって徐々に流れ出す。古い年代の氷を手に入れるには、氷床の底面までほぼ水平に氷が積み重なる内陸での掘削が望ましい。日本は06年、ドームふじ基地で約72万年前の氷柱(直径約10センチ)の掘削に成功しており、より内陸の新基地で最古の氷の採取に挑む。新基地には10人程度が滞在し、氷の掘削作業にあたる。
氷を構成する酸素や水素の同位体の比率を調べると、過去の気温が分かる。80万年前ごろは気温が低い「氷期」と、暖かい「間氷期」が約10万年周期で繰り返すようになった時期とされる。国立極地研究所の白石和行所長は「最古の氷から地球の営みを知り、温暖化予測に役立てたい」と話す。