現代の企業においては、IT(情報技術)、そしてウェブをどう使っていくかが企業の成長のカギを握っている――。このことに異論がある方はいないだろう。
少し前までは、既存の業務を一部IT化し「わが社はITを活用している」などと生ぬるいことを言っていられる時代だったが、今ではIT、ウェブをベースにビジネスモデルを組み立てていないと勝ち目の無い世界になりつつある。
グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなどは言うまでもなく、今やITと全く無縁そうな回転寿司屋でさえ、ビッグデータを活用し廃棄量75%削減を達成している時代である(「スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量75%減」:日経新聞電子版1月27日)。
しかし、これだけビジネスの中心にIT、ウェブが入り込んできている現在でさえ、IT、ウェブの中心を担うITエンジニアの仕事について「製造業と同じようなもの」と勘違いしている人が非常に多い。
「物を作る」という点で、ITエンジニアと製造業は似ている点も多いのだが、根本の部分で「ITエンジニアは情報を扱い」、「製造業は物を扱う」という点で全く異なるものだ。
そうした勘違いが、例えば特許庁の55億円の失敗プロジェクトを生む原因であり、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトが日本から出てこない原因でもあると私は考えている。
利益率の低い日本のソフトウエア業界
日本の情報サービス産業の市場規模は平成24年で19兆5270億円である(総務省情報通信国際戦略局「情報通信業基本調査報告書(平成26年3月)」より)。その中心を担うのがNTTデータ、富士通、日立製作所、NECなど、ソフトウエアの受託開発をおこなうSIer(システムインテグレーター)である。
総務省の「ICT産業のグローバル戦略等に関する調査研究」(平成25年)によると、大手SIerの売上高および営業利益率を見てみるとNTTデータ(売上高1.3兆円、営業利益率6.4%)、日立製作所(売上高1.2兆円、営業利益率4.3%)、NEC(2.5兆円、営業利益率3.7%)、富士通(売上高4.7兆円、営業利益率2.3%)と軒並み1ケタ台である。
一方、海外の同業に目を向けるとIBMが売上高8.4兆円、営業利益率19.6%、Accentureが売上高2.4兆円、営業利益率13.0%と高い。ソフトウエア中心の企業だと、オラクルが売上高2.9兆円、営業利益率36.9%、SAPが売上高1.7兆円、営業利益率34.0%とケタが違う。自らがウェブサービスを提供する企業では、グーグルが売上高5.0兆円、営業利益率21.4%(2013年)となっている。
いったいこの違いはどこで生まれるのだろうか。