消費者物価:3.2%増…23年ぶりの上昇幅 4月
毎日新聞 2014年05月30日 09時47分(最終更新 05月30日 13時13分)
4月の全国消費者物価指数は、消費増税の影響を反映して大幅に上昇した。前年同月比の物価上昇幅は、消費増税で押し上げられた影響を除いても拡大基調が続いており、安倍政権が目指す「脱デフレ」に向けて順調に進んでいるといえる。ただ、この日発表された4月の家計調査では消費支出が前年同月比で4.6%減と大きく落ち込んだ。雇用の改善は続いているが、賃金上昇が物価上昇に追いついていないのが現実だ。消費の冷え込みや生産の反動減が長引けば景気失速につながりかねず、日本経済の先行きは予断を許さない状況が続きそうだ。
日銀は、消費増税の影響で4月の消費者物価が1.7%押し上げられると試算。今回の上昇幅3.2%から差し引くと、実質的な物価上昇率は1.5%になる。3月の1.3%より上昇幅は拡大。チーズや洗濯用洗剤などが3%以上上昇しており、原材料価格の上昇などで増税分以上の転嫁があったとみられる。
ただ、先行指標となる東京都区部の5月の消費者物価指数は、消費増税の影響を除くと4月に比べた上昇幅が前年同月比で0.1ポイント縮小した。テレビなどの耐久財や宿泊料などで上昇率が縮まったようだ。
景気の先行きは個人消費の動向に大きく左右される。同日発表された2人以上の世帯の4月の消費支出は、東日本大震災があった2011年3月以来の落ち込み幅。今年3月に増税前の駆け込み需要が膨らんだことによる反動減が大きかったとみられるが、消費税導入時の1989年の0.8%減、3%から5%に増税した97年の1.0%減よりも大幅な減少で、決して楽観できない。
消費支出増加のカギを握る勤労者世帯の実収入は、4月は前年同月比で実質7.1%減った。消費が冷え込めば小売業者らも値上げをしにくくなり、デフレ脱却と景気回復の流れに水を差しかねない。家計にも目配りした政策運営が大切になる。【竹地広憲】