裁判員裁判:必要なのは「言葉の力」高校国語教科書に登場
毎日新聞 2014年05月29日 12時20分(最終更新 05月29日 12時29分)
裁判員裁判の時代に必要とされるのは「言葉の力」だとして、来年度から高校の授業で使われる国語の教科書で裁判員制度が初めて取り上げられる。被告の有罪・無罪や量刑を話し合う評議の際、市民が説得力ある意見を述べるためのスキルなどについて記述されており、編集に携わった大学教授は「市民が確かな国語力を身に着けることが、裁判員制度の定着につながる」と話す。
取り上げるのは、大修館書店(東京都文京区)が編集した「国語表現」。同書店によると、裁判員制度については公民の教科書で取り上げられたことはあったが、国語では初めてという。
国語表現の第2部「表現を楽しむ」の中に「開廷!模擬裁判」と題した4ページのコーナーが設けられ「裁判員に必要とされるのは、根拠を確かめながら話をよく聞き、議論を重ねて結論へとたどり着く言葉の力」と解説。刑事裁判の流れや「無罪推定の原則」などのキーワードを紹介し、模擬裁判の一例として強盗致傷事件の台本を載せている。
また、裁判員裁判は「民主主義社会を支える重要な役割を果たす機会」になると説明。裁判員に求められる力として、長時間の審理で話を「聞く力」▽評議で印象ではなく、根拠を踏まえて自分の考えを述べる「話す力」▽日ごろなじみのない難しい言葉を理解する「読む力」▽法廷などで素早く正確にメモを取る「書く力」の四つを挙げている。
2010年6月に文部科学省がまとめた「高校学習指導要領解説」では、生徒が身に着けたい表現力として「自分の考えを主張する際に確実な論拠に基づいた妥当な推論によって内容を導き、明晰(めいせき)に示す」などを求めている。
編集に携わったつくば国際大の入部(いりべ)明子教授(比較言語教育学)は「陪審員制度が定着している米国では、幼少期から一貫して教育の場で討論などのトレーニングをしている。裁判員制度は市民が確かな国語力で支えていく必要がある」と話している。【伊藤一郎】